ファンペップ Research Memo(4):皮膚潰瘍治療薬の追加試験・花粉症ワクチン第1相臨床試験の開始を新たに決定
同社の開発パイプラインは、皮膚潰瘍を適応症とする「SR-0379」のほか、抗体誘導ペプチド技術で開発した乾癬及び強直性脊椎炎を適応症とする「FPP003」、花粉症を適応症とする「FPP004X」、乾癬を適応症とする「FPP005」の4品目があり、そのほかにも複数の開発候補品を抱えている。2024年に入っての新たな進捗として、3月に塩野義製薬と「FPP004X」に関する全世界を対象とした独占的開発及び商業化権に関するオプション契約を締結し、2025年第1四半期から第1相臨床試験を開始するほか、「SR-0379」に関して第3相臨床試験の追加試験を2025年第1四半期から開始することを決定し、準備に入っている。
皮膚潰瘍向け治療薬は対象を絞り追加試験を行う。2028年に上市する可能性
1. SR-0379(皮膚潰瘍)
現在、皮膚潰瘍(褥瘡※及び糖尿病性潰瘍)の治療法としては、皮膚組織の欠損部分に感染の疑いがある場合にはまず感染リスクを見極めるための一定の観察期間が必要であり、その後、次の段階で組織再生のための治療(細胞増殖因子の投与や湿潤療法の実施)などを行うため、長い治療期間を要することが課題となっていた。「SR-0379」は、抗菌作用に加えて創傷治癒促進効果(血管新生作用)もあることから観察期間が必要なく、速やかに治療を開始できる。現行よりも治療期間を短縮できる効果が期待でき、患者のQOL向上につながる治療薬として開発を進めてきたものである。
※ 褥瘡とは、寝たきりや車いす生活などによって、体重で圧迫されている皮膚の血流が滞ることで、皮膚の一部が赤い色味を帯びて、ただれや傷ができる症状のことで、一般的に「床ずれ」と言われている。
2022年11月に発表された第3相臨床試験※の速報結果では、主要評価項目である「簡単な外科的措置に至るまでの日数」において、プラセボ群と比較して日数を短縮する傾向が見られたものの、統計学的な有意差は得られなかった。ただ、事後部分集団解析を実施したところ潰瘍サイズ(長径×短径)36cm2未満の被験者(N=101)のデータを比較したところ、プラセボ群が外科的措置までの日数で27日要したのに対して、「SR-0379」は22日間と5日間の短縮、有意差(p=0.027)も確認できたことから、ライセンス契約先である塩野義製薬と協議を行い、潰瘍サイズを36cm2未満に限定して追加の第3相臨床試験(02試験)を実施する方針を決定した。予定症例数は142例でプラセボ対照二重盲検比較試験(1日1回、28日間投与)とし、01試験と同様に外科的処置に至るまでの日数をプラセボ群と比較する。2025年12月期第1四半期より開始し、順調に進めば2027年に承認申請を行い2028年にも上市する可能性がある。なお、海外市場での開発方針については国内の試験結果を見て塩野義製薬が判断することになる。
※ 外科的措置(縫合、植皮、有茎皮弁)が必要な重度な患者(入院患者)120例を対象に、プラセボ対照二重盲検比較試験を2021年6月より実施した。
皮膚潰瘍は患者や介護者、医療現場からも治療期間の短縮に対するニーズが強く、高齢化社会の進展に伴い「寝たきり患者」や糖尿病性皮膚潰瘍患者も増加傾向にあることから社会ニーズにマッチした製品と言える。「SR-0379」は誰にでも使えるスプレー式でベッドサイドに置けるため、安定性や利便性の面でもメリットがある。同社は各種統計データから、皮膚潰瘍患者数を国内で約100万人(褥瘡約20万人、糖尿病性潰瘍約80万人)、米国で約230万人(褥瘡約50万人、糖尿病性潰瘍約180万人)と試算している。これら患者のうち、潰瘍サイズ36cm2未満の患者の割合がどの程度かは不明だが、01試験の結果(101/120例)から8割程度が対象となる可能性がある。
現在、皮膚潰瘍治療薬としては軟膏タイプのものから湿布、スプレータイプのものまで様々なものがあるが、スプレータイプの治療薬となる「フィブラストスプレー(科研製薬<4521>)」は薬価が約7千円/瓶で、国内売上が約26億円(2024年3月期実績)である。すべての皮膚潰瘍患者で利用されることになれば、国内だけで潜在市場は約100億円程度と見られるが、対象範囲をやや絞り込むため市場規模も数十億円規模になると予想される。なお、塩野義製薬と締結した全世界を対象としたライセンス契約では、契約総額(契約一時金、開発及び販売マイルストーンの合計)が100億円となっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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