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アイ・ピー・エス:フィリピン国内で通信事業を展開、経済成長や地政学リスクも追い風


*11:41JST アイ・ピー・エス:フィリピン国内で通信事業を展開、経済成長や地政学リスクも追い風 アイ・ピー・エス<4390>は、設立間もない時期から長い間、フィリピン人マーケットに積極的に関わってきた。主力の国際通信事業(2025年3月期第1四半期売上高に対して72.3%)では、フィリピンを主たる事業地域として、同国の通信会社、ケーブルテレビ事業者、法人などに自社で敷設した海底ケーブル等の回線や他社調達の回線を提供している。フィリピンの通信業界は、大手通信事業者2社(PLDT社、Globe社)の寡占状態で、事業者は競争力のない非常に高額な回線の提供しか受けられなかった。この環境下で、同社は参入を構想し、通信事業のライセンスとマニラ市内までの通信回線を持っていたフィリピン国内企業の回線を借り受け、国際区間と国内区間をつなぎ合わせて必要な全区間を用意してマニラ首都圏地域の事業者向けの提供に成功した背景がある。売上高は顧客数の増加に伴い積み上がっていくストック型ビジネスの要素があり、コストは主に通信回線の減価償却費で固定費のため、限界利益率の高い収益構造となっている。

国内通信事業(同19.0%)では、インドのベンダーからコールセンター運営のためのソフトウェア「AmeyoJ」の日本国内での販売代理権を取得し、コールセンターに提供している。また、1秒単位で課金される着信課金サービス(着信者が料金を負担する通話サービス、トールフリーサービス)も提供しており、競合他社では携帯電話発信で1分毎の課金・固定電話3分毎の課金となるが、同社は1秒単位の料金体系で提供し、コールセンター市場では競争力のある存在となっている。

メディカル&ヘルスケア事業(同8.6%)では、近視矯正手術(レーシック)と美容皮膚科のクリニックも運営している。日本の技術に対する海外顧客の信頼が成長の原動力となっているほか、フィリピンでのレーシック需要の高まりを受け、レーシックに特化したクリニックをオープンして現在は3院体制になっている。予防医療分野では、人間ドック・健診センター「Shinagawa Diagnostic & Preventive Care Center (SDPCC)」の運営を開始し、日本基準の予防医療と高度な画像診断を適切な水準の価格で提供するフィリピン初の専門医療施設を展開している。

2025年3月期第1四半期の売上高は3,657百万円(前年同期比47.5%増)、営業利益は760百万円(同83.7%増)と大幅増収増益で着地した。フィリピン国内海底ケーブルネットワーク「PDSCN」の完成によりPDSCN関連の通信機器などの提供が計画より前倒しされたことが寄与した。国際通信事業が国内通信事業とメディカル&ヘルスケア事業の減収を吸収した形となったが、国内通信事業の「AmeyoJ」や秒課金サービスを組み合わせたコールセンター事業者向けサービスは堅調に推移しており、通信事業者間の通信接続料について過年度分の遡及精算(260百万円)の計上がネガティブ要因となった。通期の売上高は16,500百万円(前期比16.9%増)、営業利益は4,290百万円(同10.2%増)を見込んでいる。

同社は、フィリピンに特化した通信インフラや医療関連ビジネスという国内での競合が見当たらない事業を展開している。今後は、主力の国際通信事業の成長に期待しておきたい。フィリピンとシンガポール、香港をそれぞれ結ぶ国際通信回線C2Cに加え、昨年12月にPDSCNが完成してフィリピン国内基幹網が整備されたことから、マニラ首都圏や近郊以外の島や地方地域の通信事業者やCATV事業者へのサービス提供が可能となった。これに伴い、地方へのC2C回線やPDSCN自体のネットワークとしての提供、PDSCN関連サービスの提供拡大などが見込まれる。法人向けインターネット接続サービスも、マニラ首都圏での回線の整備や調達が進み、地方へのアクセスも可能となったことから、支店を多く抱える大企業向けの提供も期待できるため、顧客数の拡大が同社業績をけん引しそうだ。

そのほか、長期的には、アジア国際海底ケーブルの建設構想を実現させ、フィリピン・日本の通信インフラを改善し、事業の拡大と両国の経済発展に寄与していく考えを持っている。日本~フィリピン~シンガポールを結ぶ、新たな国際海底ケーブルシステムの共同建設を協議中で、より安全な通信回線の提供を図る。

フィリピンは、公用語が英語であるため世界のBPO拠点となっており、生産年齢人口割合が今後更に増加する人口ボーナス期の到来により、更なる経済成長が期待されている。ASEAN主要国の中でも、フィリピンの予想GDP成長率はトップクラスで、フィリピン国内の経済政策では政府がデジタルインフラの整備を重点施策として進めており、デジタルインフラ関連のビジネスチャンスが本格化している。通信、鉄道、高速道路、空港、運送については、外国資本による100%投資が可能となっているようだ。一方で、フィリピンのインターネット速度は、アジア主要国の中では下位となっており、依然として改善の余地がある。地域別インターネット普及率も地域間格差が大きく、フィリピン政府機関(DICT)の重点施策として通信インフラの普及が進められている。さらに、フィリピンは米中対立といった地政学リスクを背景に、地理的なメリットからデータセンターの投資が活発化するなど国際通信のハブとしての注目も高まっている。フィリピン国内でのデジタルインフラに対するニーズが今後益々増加するなか、業績の2桁成長は想定できそうで、今後の同社の中長期的な成長に期待しておきたい。

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