タナベ Research Memo(2):業種・地域特性を熟知した専門チームが一気通貫で支援するチームコンサルティング
1. 会社概要
タナベコンサルティンググループ<9644>は1957年に創業した日本の経営コンサルティングのパイオニアであり、業界大手の一角を占める。顧客企業の専門化・多様化する経営ニーズに応えるため経営コンサルティング領域の多角化戦略を推進し、全国のすべての顧客へ高品質な経営コンサルティング価値を提供することにより、顧客の持続的成長を支援している。
(1) 3つのメソッド
業種・地域特性・戦略課題を熟知した専門チームが、顧客企業の経営層(トップマネジメント)が抱える固有の戦略課題の解決を一気通貫で支援するチームコンサルティング。
(a) メソッドI:トップマネジメントアプローチ
主要な顧客ターゲットは大企業から中堅企業の経営層(トップマネジメント)や行政・公共の長などであり、これら顧客が抱える様々な戦略課題を支援している。
(b) メソッドII:チームコンサルティング
経営コンサルティング領域としては、中長期ビジョンや経営戦略・業種別事業戦略の策定などを支援する「ストラテジー&ドメイン」、DXビジョンの策定からDXの具体的な実装・実行、システム導入までの支援を行う「デジタル・DX」、HRビジョンを策定し人事制度、人材採用・教育、働き方改革など人的資本に関わる領域を支援する「HR」、企業価値向上の実現のために事業承継やコーポレートファイナンス、成長戦略からデューデリジェンス、PMIまで一気通貫のM&A支援を行う「ファイナンス・M&A」、国内外でのブランド戦略の立案から実行支援、クリエイティブ、PR・広報までを一気通貫で提供する「ブランド&PR」の5領域がある。個社の戦略課題に合わせて、各経営コンサルティング領域の戦略課題を熟知した専門コンサルタントに加え、顧客企業の業種に精通した専門コンサルタントと地域特性を熟知した専門コンサルタントがチームとなり、全方位で支援している。
(c) メソッドIII:一気通貫の支援モデル
経営層(トップマネジメント)をチームで支え、経営の上流であるパーパスや戦略の策定からDXに係る経営オペレーションの実装・実行(中流〜下流)までを一気通貫で支援し、高い契約継続率を実現している。
事業所については、北海道から沖縄までの全国主要10都市に長年展開している。同業のなかで、経営コンサルタントが拠点に常駐し地域に根付いたファーム形式で全国展開しているのは同社だけであり、地域密着型の経営コンサルティングサービスを提供できることも同社の特色であり、強みである。また、各種経営コンサルティングサービスの企画・ディレクションや、コンサルティング現場などから収集した経営情報を分析・情報発信する機能をもつ戦略総合研究所に加え、IR・SR・PR、人材採用、M&A・アライアンス(提携)、サステナビリティなどのコーポレート機能を大阪・東京の両本社に設置することで、全国へのサポート機能の充実を図っている。
(2) グループ戦略
2019年以降は、M&Aを成長戦略の1つとして掲げ、シナジーが見込まれる企業を4社グループ化している。2019年10月に子会社化したリーディング・ソリューション(出資比率60.0%)は、BtoB領域のデジタルマーケティングに関するKPO(Knowledge Process Outsourcing)業務※及びWebサイト構築業務を展開しており、2004年の創業以来、上場企業や中堅企業を中心に300社以上を支援してきた実績を持つ。BtoBビジネス領域においてデジタルマーケティングの重要性が増すなかで、リーディング・ソリューションのBtoBデジタルマーケティング支援に関する知見・ノウハウと、同社の経営コンサルティングサービスを組み合わせることで付加価値の高い新たなサービスを開発・提供している。また、既存顧客に対する共同コンサルティングや人材交流を通じて、双方の顧客へ提供するサービスの価値向上にも取り組んでいる。
※デジタルマーケティングにおける戦略策定から施策の企画・実施、PDCAまでを一括代行するサービス。
2021年1月に子会社化したグローウィン・パートナーズ(出資比率50.1%)は、会計士やファイナンシャルアドバイザーを数多く有しており、クロスボーダーを含むM&A全般の支援や大企業・上場企業グループを対象としたバックオフィス(経理・財務部門など)に対するBPR/DX支援(ERP、RPAの導入支援など)を主要事業としている。M&A及び経営のDXへの需要が増大するなか、同社が有する経営コンサルティングの知見と、グローウィン・パートナーズが有するM&A及びDXに関する知見・ノウハウを融合させることで既存サービス機能の強化や新規サービスの開発に取り組み、既存顧客に対する共同コンサルティングや人材交流を通じて、双方の顧客企業へ提供するサービスの付加価値向上を図っている。
2021年12月に子会社化したジェイスリー(出資比率96.2%)は、ディレクターやクリエイター、デザイナーなどのプロフェッショナル人材を有しており、大企業から中堅企業のブランディングやCXデザイン、マーケティングDXなど新たな価値の創造を強みとしている。同社が長年培ってきた経営コンサルティングの知見・ノウハウと、ジェイスリーが創業開始以来500社以上に提供してきたブランディング、CXデザイン、マーケティングDXに関する知見・ノウハウを融合させることにより、既存サービス機能の強化や新規サービスの開発に取り組んでいる。双方の事業基盤強化を図ることで、全国のブランド&デザインコンサルティング及びマーケティングDXの市場開拓を進める方針で、特に地方企業においてはブランディングの強化を経営課題にしている企業も多く、開拓余地は大きいと見られる。
2023年2月に子会社化したカーツメディアワークス(出資比率55.0%)は、「PRコンサルタント」としてメディア出身者やグローバル人材が多数在籍しており、外資系を含む大企業に対する戦略PR、海外PR及びデジタルマーケティングの戦略立案・運用支援を強みとしている。トップマネジメントの戦略課題として、「広報・PR」「ブランディング」領域の戦略構築及び実装ニーズがますます高まるなか、同社が有する経営コンサルティングの知見・ノウハウとカーツメディアワークスが有する国内外でのPRコンサルティング及びデジタルマーケティングに関する知見・ノウハウを融合させ、既存サービス機能の強化や新規サービスの立ち上げに取り組む方針だ。特に、カーツメディアワークスが提供している海外向けプレスリリース配信サービス「Global PR Wire」はグローバル企業も多く利用しており、海外展開を目指すまたは強化したい企業に対して、「グローバル戦略」をテーマとしたコンサルティングサービスのドアノックツールの役割を果たすものとして期待される。
これら4社のグループ化により、同社の一気通貫の経営コンサルティング支援モデルが一段と強化され、同業他社にない強みとなっている。今後も加速が予想される全国の事業承継や業態転換・事業再構築、DX・生産性向上、CXデザイン、国内外PRなどの大企業から中堅企業が抱える様々なコンサルティングニーズにグループとして取り込むことが可能となっている。今後は全国に事業拠点を展開している強みも生かして行政・公共分野にも注力する方針を明らかにしており、成長ポテンシャルが一気に高まったと弊社では見ている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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