紀文食品 Research Memo(6):国内事業が海外食品事業をカバー
2. セグメント別の業績動向
セグメント別業績は、海外食品事業が前年同期比で2ケタの減収減益だったが、国内食品事業が増収・大幅な損失幅縮小、食品関連事業が増収・2ケタ増益となった。国内事業が海外事業をカバーしたこと全体でも増収増益となった。
(1) 国内食品事業
売上高が32,686百万円(前年同期比4.7%増)、セグメント損失が670百万円(前年同期は1,704百万円の損失)となった。売上面では、2022年2月からの1年間で3回実施した価格改定が浸透したことに加え、販売も伸長した。なかでも主力の水産練り製品は、同7.3%増と好調だった。高たんぱくなヘルシーが着目されているカニカマは、主力商品「したらば」を中心に同34.9%増と大きく売上を伸ばした。また、食シーンの提案やSNSを活用したプロモーションなどが奏功し、竹輪が同8.7%増、はんぺんが同14.7%増、さつま揚が同3.9%増と、他の水産練り製品も軒並み前年同期を超える売上げとなった。さらに、同社独自の製法を用いたキャラクター蒲鉾「すみっコぐらしかまぼこ」や「シナモロール ポムポムプリンかまぼこ」が、若い世代の顧客から支持を得て販売を伸ばした。
一方で、夏の高温による需要減に加え、競争環境の厳しい惣菜の売上げが厳しく、餃子など中華惣菜が前年同期比4.1%減、「糖質0g麺」など麺状商品が同12.8%減となった。「糖質0g麺」は他の健康志向商品が伸長したことの影響もあるようだ。また、レトルトおでんセットや玉子加工商品が、鳥インフルエンザによる鶏卵の供給不足に伴い影響を受けたが、足元の鶏卵の調達状況は改善しつつあるようだ。商事部門は、引き続き農畜産品などの取り扱い商材が伸長するなど好調に推移した。利益面では、利益率の低い商事部門の売上構成増による事業ミックスの変化や原材料・エネルギー価格の高止まりはあったが、価格改定の浸透と主原料のすり身価格が落ち着きを取り戻したことで大幅な増益となった。
(2) 海外食品事業
海外食品事業の業績は、売上高が5,991百万円(前年同期比13.1%減)、セグメント利益が366百万円(同53.6%減)となった。売上面では、タイ国内向けは、営業活動を強化したことにより、同4.8%増と回復基調となった。特にがんもや厚揚げなどの惣菜類が好調だった。しかし、他のアジア圏、中国、米国では、インフレ懸念や先行き景況感の悪化見通しなどにより消費者の生活必需品を優先する節約志向が強まり、主力商品の販売が減少した。中国は、原料調達に関しては大きな影響はないが、処理水の絡みで現地外食店向けなどでの商品展開が厳しかった。製品別では、主力のカニカマがミドルプライスだったこともあり同20.8%減、「Healthy Noodle(糖質0g麺)」が前年同期に大きく伸びた反動もあって同30.5%減と厳しかった。利益面では、惣菜や農水産物などの仕入商材は堅調に推移したものの、カニカマなど高付加価値な自社製品の売上げ減少の影響が大きく、減益となった。
(3) 食品関連事業
食品関連事業の業績は、売上高が9,015百万円(前年同期比4.1%増)、セグメント利益が255百万円(同22.4%増)となった。主力の物流事業において、経済活動の回復に伴って人流が回復し、外食店舗や百貨店、駅ビル、観光地など様々なルートに向けた物量が大きく復調したことに加え、新規顧客の獲得や料金改定の浸透も寄与し、売上高が伸長した。利益面では、人件費や燃料費の上昇に伴う運送コストの増加や電力費の上昇などマイナス要因はあったものの、売上げ増加に加え、料金・料率の改定、物流増や配送コース見直しによる配送効率及び業務効率の改善により採算が向上し、増益となった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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