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PBシステムズ Research Memo(8):主力事業では技術力が一段と向上、従来課題だった事業も黒字化へ


*16:18JST PBシステムズ Research Memo(8):主力事業では技術力が一段と向上、従来課題だった事業も黒字化へ ■ピー・ビーシステムズ<4447>の業績動向

3. 2023年9月期のセグメント別業績動向
2023年9月期のセグメント別業績は、セキュアクラウドシステム事業の売上高が前期比14.7%増の2,811百万円、セグメント利益が299百万円(前期は284百万円)、エモーショナルシステム事業の売上高が89百万円、セグメント損益が1百万円の利益(前期は14百万円の損失)となった。セキュアクラウドシステム事業は増収増益で、売上高・セグメント利益とも過去最高を記録、エモーショナルシステム事業については悲願であった黒字転換を期初計画どおり達成している。

セキュアクラウドシステム事業については、懸案であった特定案件を、ようやく完了に漕ぎ着けた。本案件は、3DCADソフトを仮想デスクトップの下で稼働させるという、技術的にも非常に難易度の高いものであり、やはり仮想化については高い技術力を有する同社でも課題の解決に相当苦労したようだ。個別の顧客のプロジェクトであるゆえ詳細は不明であるが、3DCADで求められる高度な操作性と動作の安定性をいかに仮想デスクトップ基盤の下で実現させるかがポイントだったようで、最適解のシステム構成を導き出すために同社の主力エンジニアの重点投入や顧客・メーカーとの協働により、最終的には妥協することなく完成させた。本プロジェクトの総括として、技術力がさらに一段階上がったことはもちろん、商談の段階からエンジニアと営業の連携を密にしたことで、より強固な案件管理の体制を構築する契機となったと同社は考えている。また、今回のプロジェクトを通じて製造業向けのハイレベルな仮想デスクトップの構築ノウハウを獲得できたことは、今後の同様な案件の受注のための大きな武器を手に入れることができたとも見ているようだ。さらに、特定案件への対応を優先したことで十分手が回らなかった部分があるものの、積極的な営業活動も展開した。まずは既存顧客との取引強化である。既存顧客であるSaaS事業者から特定業界向けの業務用ソフトウェアをインターネット経由で利用する大型のプライベートクラウド基盤構築案件を受注したことをはじめ、首都圏のSaaS事業者やAI事業者の需要増や、いわゆる「2025年の崖問題」(企業のDXへの取り組みの遅れを原因とする経済損失発生の問題)を追い風として、レジリエンス対応を含む基盤構築需要を取り込んだ。さらに、積極的な新規顧客の開拓も行い、首都圏、九州圏とも複数の中規模クラウド基盤構築案件の受注に成功、第4四半期に売上計上した。

首都圏の旺盛な需要を取り込むための戦略として、パートナー拡充も推進してきた。2022年9月期はクラウド基盤を作るためのサーバーやストレージに強い協力会社を開拓したが、2023年9月期はネットワーク関連に強みを持つ協力会社と新たに関係を構築した。クラウド基盤に係るプロジェクトにおいては、単に基盤構築を行うだけでなく、既に利用中のパブリッククラウドやそのほかの周辺システムとの連携などの対応も生じてくるものだが、そのような対応をするにあたってこのパートナーシップは大きな効果を生むことが期待できる。実際にその効果が出始めるのは2024年9月期に向けて稼働する案件が中心のようだが、今後に期待したい。またこの戦略のもう1つの効果として、パートナーとの協業により獲得した先進的仮想デスクトップソリューションのノウハウが挙げられる。これは金融系企業に対する操作レスポンスとセキュリティの高さを兼ね備えた仮想デスクトップを提供するものであるが、内容的には汎用性の高いものであるため他企業へのソリューションとしても提供可能で、特定案件で得たノウハウとも相まって2024年9月期からの案件受注の後押しになるものと期待される。

エモーショナルシステム事業については、インバウンド需要の回復、国内のレジャー産業や博物館・科学館などの施設需要の回復を受けて、積極的に営業活動を行った。アミューズメント領域における需要増に対応するため、遊園地向けの人気アトラクションとタイアップした新規コンテンツを制作してそれを複数地域に展開し、販路拡大を図ったことが2023年9月期の売上増加の大きな要因となっている。また従来から行っている通信事業者向けイベント案件も複数の受注を得ており、収益の柱の一つとしての地位を確保している。さらに企業向けメタバースの初号機案件の販売に成功、導入先企業での一般顧客向けの活用が始まっており、今後の受注活動に大きな弾みがついた形だ。

なお、受注残については、セキュアクラウドシステム事業において前期末比9.1%増の989百万円と堅調な積み上がりになっている。2023年4月28日付で発表した大型受注とは別業界のSaaS企業(既存顧客)から中規模のプライベートクラウド基盤構築案件などを継続受注したほか、九州中堅企業のプライベートクラウド基盤構築やランサムウェア対策ソフトの販売案件などを受注した。さらに企業のDX、データ活用需要への対応としてETL※を活用したデータ連携案件の継続受注の仕組みを構築した。ランサムウェア対策ソフトの販売案件については、新たにサイバーセキュリティの世界的メーカーであるcybereason社のパートナーに参画し、同社製品を手掛けるようになったことが寄与している。エモーショナルシステム事業については、前期末比523.6%増の9百万円となっており、今後に期待の持てる状況である。MetaWalkers関連の受注として、遊園地向けや大手通信事業者との協業によるイベント案件が順調に進捗したことがその背景となっている。結果として、両事業の合計で期末受注残高は前期末比10%増の999百万円で着地した。

※ETL(Extract・Transform・Load):データベースやシステムからデータを抽出し、扱いやすいフォーマットに変換してデータウェアハウス等に書き出す一連の仕組み


4. 2023年9月期の営業地区別売上高
2023年9月期の営業地区別売上高については、首都圏が約67%、九州近郊が約33%の構成になっている。2022年9月期末段階で関東圏が約6割、九州近郊が約4割となっていたことを踏まえれば、首都圏の構成比が九州近郊を上回って推移しているという構図には変化がない。同社については今後首都圏への注力を一段と進める方針である一方、成長・変革に向けたIT投資(DX含め)の必要性に関する認識は、地方の中堅・中小企業にも浸透してきている。九州近郊のそうした企業のニーズを同社が取り込むことができれば、構成比にもまた違った変化が今後見えてくる可能性がある。

(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)

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