ファンペップ Research Memo(1):花粉症治療薬候補品の前臨床試験を開始、早期導出を目指す
ファンペップ<4881>は大阪大学大学院医学系研究科の機能性ペプチドの研究成果を実用化する目的で、2013年に設立されたバイオベンチャーである。独自開発した機能性ペプチドをベースとした抗体誘導ペプチド技術により、高額な抗体医薬品の代替となる医薬品の開発に取り組んでいる。また、2022年10月にアンチエイジングペプタイド(株)(以下、AAP)を子会社化し、化粧品向けなど医薬以外の事業分野の育成にも乗り出している。
1. 主要開発パイプラインの動向
尋常性乾癬を適応症とした抗体誘導ペプチド「FPP003」は、第1/2a相臨床試験の速報結果として、高用量群の被験者9人中7人で抗体価の上昇を確認し、観察期間終了時点の120日までその効果が持続したこと、また安全性及び忍容性の問題もなかったことを2023年2月に発表した。北米での開発・商業化権に関するオプション契約を締結している住友ファーマ<4506>にて治験結果の詳細な内容を分析して、今後の開発方針を決定することになる。一方、皮膚潰瘍(褥瘡、糖尿病性潰瘍)を適応症とした「SR-0379」の第3相臨床試験については、2022年11月に速報結果で主要評価項目である「簡単な外科的措置に至るまでの日数」を達成できなかったと発表したが、特定の被験者においては効果を確認できるデータが得られており、現在は対象を絞って第3相臨床試験を再度実施するかどうか導出先の塩野義製薬<4507>※と協議中となっている。収益が得られると判断した場合には、2024年内にも第3相臨床試験を行うことになりそうだ。そのほか、新たに花粉症を適応症とした新規開発化合物を特定し、「FPP004X」として開発を進めていくことを決定し、前臨床試験を開始している。順調に進めば2025年に第1相臨床試験を開始、10年後の上市を目指すことになる。乾癬を適応症とした「FPP005」については、2023年内の臨床試験入りを予定していたが、製剤技術の改良が必要との判断から開発の優先順位を引き下げることにした。
※塩野義製薬と全世界を対象としたライセンス契約を2015年に締結(契約総額は100億円)した。
2. 業績動向
2023年12月期第2四半期累計(2023年1月~6月)の連結業績は、事業収益で0.5百万円(前年同期の単体実績は0.6百万円)、営業損失で622百万円(同515百万円の損失)となった。事業収益は非医薬品事業における機能性ペプチドの販売収入となる。費用面では、「SR-0379」の臨床試験費用が減少した一方で抗体誘導ペプチドの開発費が増加したことにより、研究開発費が前年同期比51百万円増加したほか、AAPの子会社化に伴う償却費の増加などにより販管費が同56百万円増加した。2023年12月期の業績見通しについては、同社グループの事業収益が研究開発の進捗状況や新規提携候補先等との交渉状況により大きく変動する可能性があるため、現時点では未定としている。なお、研究開発費は期初段階で900百万円(前期実績912百万円)、販管費は300百万円(同257百万円)をそれぞれ見込んでいたが、「FPP005」の開発費減少により研究開発費を700百万円に引き下げている。2023年12月期第2四半期末の現金及び預金は2,255百万円となっており、当面の事業活動資金は確保できているが、開発候補品が上市する時期は早くても2027年以降となるため、大型ライセンス契約の締結がなければ、株式市場からの資金調達が続くものと予想される。
3. 今後の成長戦略
同社では、今後も独自技術である抗体誘導ペプチドの優位性を生かして、抗体医薬品が既に発売されている「炎症領域」を中心に、2年に1本のペースでパイプラインを拡充する方針となっている。ここ最近では開発ノウハウの蓄積が進んだことから、開発効率も向上しているようだ。抗体誘導ペプチドの開発対象領域における抗体医薬品の市場規模は大きく、乾癬など炎症性疾患領域だけでも年間400億米ドルの規模に達していると見られる。このため、今後低コストで量産化が可能な抗体誘導ペプチドで医薬品の開発に成功すれば、患者や医療財政の負担軽減にもつながることから、同社の企業価値も飛躍的に向上することが予想される。当面は「FPP003」の動向が注目され、開発が進展することに期待したい。
■Key Points
・乾癬治療薬「FPP003」は住友ファーマで第1/2a相臨床試験結果を評価中
・皮膚潰瘍向け治療薬は適応対象を絞り込んで第3相臨床試験に再挑戦するか協議中
・ヒトにマッチした開発化合物の特定に成功、花粉症治療薬の開発をスタート
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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