AndDo Research Memo(4):成長強化事業への積極的な投資を継続することでさらなる収益拡大を目指す(2)
b) リバースモーゲージ保証事業
リバースモーゲージは、自宅を担保として融資を受けることができる金融商品の1つである。住宅ローンが元本・利息を毎月返済するのに対し、リバースモーゲージは利息のみを毎月支払い、元本については生存中は返す義務がなく、死亡後担保である自宅を売却するなどして一括返済する。自宅は所有しているが、現金収入が少ないという高齢者向けの資金調達手段として日本では1981年に導入された。欧米では主流の金融サービスであるものの、日本では資金の出し手となる金融機関が限定されており、本格的な普及には至っていない。これは金融機関が不動産売買を本業としていないため、物件の査定と物件処分がネックとなるためである。リバースモーゲージは不動産価格の下落、金利上昇、長命化などのリスクがあるものの、And Doホールディングス<3457>子会社のフィナンシャルドゥが保証サービスを提供することで活性化を図っている。フィナンシャルドゥは契約時に不動産調査料を受け取り、利用者が金融機関に支払う利息の一部を保証料として得るため、イニシャルコストとランニングコストの両方で収益機会があるストック型収益ビジネスとなる。なお、将来的に不動産の処分が発生した場合についても、グループ内の不動産サービスを提供することで収益を得られる。
リバースモーゲージ保証事業では、同社グループがこれまで培った不動産売買のノウハウを生かすことで、市場取引価格に基づいた査定が可能となる。また通常、金融機関で債権処理が発生した場合、不動産の処分までに20~25%の中間マージンが発生するが、同社は直接販売のため不要となる。このため、安全性を考慮して金融機関自身が行うよりも大きな融資枠を提供でき、利用客にとってはフィナンシャルドゥがリバースモーゲージ保証として提供する商品と契約を結ぶ動機付けとなる。
2023年6月期末のリバースモーゲージ累計保証残高は13,169百万円(前期末比49.6%増)、累計保証件数は1,185件(同42.9%増)と拡大が続いている。累計保証件数が2023年1月末に1,000件を突破し、累計保証残高は2023年5月に12,000百万円を突破している。2024年6月期末には23,880百万円(同81.3%増)を計画しており、同社全体の成長にも寄与すると期待できる。
同社グループでは、金融機関と提携することで、リバースモーゲージ保証のサービスエリアを拡げている。2017年10月に大阪信用金庫(大阪市天王寺区)との提携により「リバースモーゲージ保証事業」を開始して以降、46行(2023年8月14日時点)の金融機関と提携している。リバースモーゲージ保証に対する金融機関の関心は高く、提携金融機関が順調に増加していることから、同社グループはさらなる開拓に注力している。直近では、2023年5月15日にりそなグループ(りそなホールディングス<8308>)3行((株)りそな銀行、(株)埼玉りそな銀行、(株)関西みらい銀行)との提携を発表した。りそな銀行と提携した影響力は大きく、リバースモーゲージ保証に関する金融機関側からの問い合わせが拡大しているという。リバースモーゲージ事業自体は市場の黎明期にあるものの、高齢化が進行する中でますます需要が高まっていくことが期待できる。今後も提携する金融機関の拡大を図りながら、市場を黎明期から成長期へと押し上げていく。
c) 不動産担保融資
不動産担保融資のスキームは、融資の金利及び事務手数料などで同業他社と大差がない。ただし、同社のメインビジネスが不動産売買の仲介業であることから、不動産価格の査定については質量ともに他社を凌駕するうえ、査定のスピードも速い。不動産担保融資残高は2017年6月期末に2,865百万円、2018年6月期末に5,587百万円、2019年6月期末に8,163百万円、2020年6月期末に11,045百万円と急速に拡大した。しかしながら、2021年6月期以降はより収益の拡大を図れる売買事業に資金を振り分ける方針を掲げていることから、不動産担保融資残高は縮小傾向となっている。
(3) 不動産売買事業
不動産売買事業は、中古住宅買取再生販売、新築戸建住宅建売、住宅用地の開発、一棟収益不動産の再生販売等、同社が自ら不動産を取得し、付加価値を付け、一般顧客・投資家へ販売している。グループ直営店及びFC加盟店、並びに不動産業者から入手した良質な不動産情報と、売り手と買い手双方のニーズを把握した仕入れが強みとなっている。
2023年6月期末の保有不動産は、積極的な仕入れにより前期末比112.1%増の32,531百万円と右肩上がりで増加し、中期経営計画を上回るペースで在庫を確保している。保有不動産が膨らむことにより貸借対照表の肥大化、資産効率の低下を危惧する投資家もいるかと思われる。在庫水準がここまで拡大したのは、コロナ禍で割安な不動産を積極的に仕入れたことが要因だ。保有不動産は2023年6月期が最大となる想定で、今後は棚卸資産と仕入れに起因する有利子負債の増加スピードも緩やかになっていく見込みだ。そうした中で、資産効率も向上していくものと弊社は見ている。また同社は、大型案件以外の営業強化に取り組む方針を掲げている。安定して収益を計上することができる体制を構築することが目的だ。不動産売買事業の売上高の内訳を見てみると、大型案件でない住宅系の売上高は前期比18.6%増の15,405百万円と2ケタの伸長を見せており、戦略が順調に進捗していることがうかがえる。
3. フロー型収益事業
フロー型収益事業としては、不動産流通事業、リフォーム事業が該当する。なお、不動産流通事業は成長強化事業への人材育成の場として経営リソースを提供しており、大きな成長は見込んでいない。また、リフォーム事業は不動産流通事業などと連携して事業を運営している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)
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