DDグループ Research Memo(6):2023年2月期は段階的な回復により各段階利益で黒字化を実現(2)
2. 2023年2月期の業績概要
DDグループ<3073>の2023年2月期の連結業績は、売上高が前期比66.6%増の32,235百万円、営業利益が467百万円(前期は7,332百万円の損失)、経常利益が838百万円(同97百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純利益が875百万円(同354百万円の損失)と、コロナ禍からの段階的な回復により大幅な増収となり、各段階利益で黒字化を実現した。
売上高は、2022年3月21日にコロナ禍に伴うまん延防止など重点措置が解除され、経済活動の正常化が進むにつれ、コロナ第7波(7月~8月)による中だるみはあったものの、「飲食・アミューズメント事業」が総じて回復基調をたどり、前期を大きく上回る水準を確保することができた。既存店売上高(通期平均)もコロナ禍前の2020年2月期比72.3%(前期は同39.2%)にまで回復してきた。また、「ホテル・不動産事業」についても、新型コロナウイルス感染症の軽症者の受け入れ施設として「PARK IN HOTEL ATSUGI」を引き続き提供(一棟有償借上げ)や、貸コンテナ事業が安定推移するとともに、既存ホテルのリブランドや国による旅行支援の開始なども追い風となり大幅な増収となっている。
出退店については、新規出店1店舗、退店15店舗により、2023年2月末の直営店舗数は336店舗となった。また、不採算店舗6店舗の業態変更を実施した。
損益面では、増収による収益の押し上げやコスト構造改革の継続により大幅な増益となり各段階利益で黒字化を実現した。物価上昇に伴う影響に対しても、仕入れ食材の適時組み替えやメニュー内容の一部見直しなどにより原価率を21.8%(前期は22.6%)に改善することができた。なお、コロナ禍に伴う助成金収入(営業外収益)は459百万円(前期は7,170百万円)に減少した一方、立退補償金590百万円が特別利益に計上されている。
財務面では、総資産が前期末比1.4%減の35,248百万円とほぼ横ばいで推移した一方、自己資本は内部留保の積み増しにより同23.0%増の5,563百万円に増加したことから、自己資本比率は15.8%(前期末は12.7%)に改善した。
各事業の業績や主な取り組みは以下のとおりである。
(1) 飲食・アミューズメント事業
a)飲食
売上高は前期比64.1%増の23,099百万円、セグメント利益は20百万円(前期は4,990百万円の損失)となった。経済活動の正常化とともに主要な出店エリアである都心に人の流れが戻るにつれて、既存店売上高(通期平均)はコロナ禍前の2020年2月期比72.3%(前期は同38.9%)にまで回復し、期末月(2月)には86%を超える水準に到達している。損益面でも、増収による収益の押し上げに加え、コスト構造改革の継続や原価高騰対策も奏功し、大幅な損益改善を図ることができた。ただ、途中にコロナ第7波による中だるみがあったことや収益性の高い2次会利用の戻りが鈍かったことなどから、売上高、利益ともに回復ペースが想定を若干下回り、かろうじて第4四半期で黒字化を確保した格好となった。出退店については、新規出店はなく、退店12店舗により2023年2月末の店舗数(直営店)は284店舗となっている。また、ニューノーマルに対応すべく、不採算店舗6店舗の業態変更を実施している。
b)アミューズメント
売上高は前期比85.0%増の6,363百万円、セグメント利益は840百万円(前期は1,400百万円の損失)となった。「飲食事業」同様、都心エリアに人の流れが戻ってきたことや行動制限の緩和などにより、休業・時短営業、酒類提供制限などの影響を受けた前期と比べて大幅な増収を実現することができた。コロナ第7波の影響はあったものの、既存店売上高(通期平均)はコロナ禍前の2020年2月期比72.1%(前期は同38.6%)にまで回復し、期末月(2月)には80%を超える水準に到達している。損益面についても、そもそも収益性の高い業態であることから、売上高の回復とともに大幅な黒字転換を実現することができ、セグメント利益率も13.2%と2ケタの水準に戻ってきた。出退店については、新規出店1店舗※、退店3店舗により2023年2月末の店舗数(直営店)は52店舗となっている。
※東海エリアへの初出店として、「BAGUS名古屋栄店」を2022年11月29日にオープン。
(2) ホテル・不動産事業
売上高は前期比50.8%増の2,772百万円、セグメント利益は同74.8%増の846百万円となった。前期に引き続き、新型コロナウイルス感染症の軽症者受け入れ施設としてホテル1棟(PARK IN ATSUGI)を提供(一棟有償借上げ)を行ったことや、貸コンテナ事業が安定推移しているうえ、シェアハウス運営も軌道に乗ってきた。需要が増加しているバイクコンテナを増設したことや、サウナ付きシェアハウスの賃貸を開始するなど顧客ニーズに対応する施策を打ち出したことが奏功しているようだ。ホテル事業についても、既存ホテルのリブランドや国による旅行支援の開始などが追い風となったうえ、テーマ性のあるスパ施設の併設や独自のコラボルーム企画など、認知度や顧客満足度の向上策も寄与した。
3. 2023年2月期の総括
以上から、2023 年2 月期を総括すると、コロナ第7波などによる影響を受けたとは言え、おおむね想定どおりに回復基調をたどり、各段階利益で黒字化を実現した点においては、同社の優位性が失われていないことを実証できた意味でも大いに評価できる。この数年間の落ち込みは、コロナ対策(人流抑制や営業制限など)に伴う不可抗力によるものであり、特に都心のドミナント展開にこそ強みを有する同社にとって大きなハンディとなったが、経済活動の正常化や行動制限の緩和などにより都心への人の流れが戻り、本格的な回復への道筋が見えてきたことは明るい材料と言えよう。一方、宴会やパーティー、接待などの大人数予約や法人需要は戻り切っておらず、収益性の高い2 次会利用も従来の水準にはないが、このあたりは逆に今後に向けてさらなる回復や上積みの余地として捉えることもできるだろう。アフターコロナやニューノーマルを見据え、立地の魅力が戻ってきた都心エリアに主要店舗を維持してきたことや、空間活用ノウハウ、付加価値の創出などの優位性は失われていないこと、さらにはその強みを生かしつつ、環境変化へ対応するための準備(新規マーケットやサービスなど)を進めてきたことも、この3年間を乗り超えてきた成果であるとともに、ここからスタートを切るうえで大きなアドバンテージと言えるだろう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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