早稲アカ Research Memo(4):塾生数の増加と業務効率向上により、2023年3月期は2期連続で過去最高益
1. 2023年3月期の業績概要
早稲田アカデミー<4718>の2023年3月期の連結業績は、売上高で前期比7.6%増の30,728百万円、営業利益で同31.8%増の2,400百万円、経常利益で同32.0%増の2,431百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同40.2%増の1,553百万円と増収増益となり2期連続で過去最高益を更新した。会社計画比では新型コロナウイルス感染症の感染者数が夏場や冬場に拡大し、夏期講習や冬期講習の参加者数が伸び悩んだ影響で、塾生数が計画比で2.2%下回ったことから売上高は若干未達となったが、各利益は売上原価や販管費が想定を下回ったことから、それぞれ上振れて着地した。
(1) 部門別売上高と塾生数の動向
部門別売上高について見ると、小学部が前期比10.9%増の17,942百万円、中学部が同3.9%増の11,121百万円、高校部が同2.6%減の1,530百万円となり、主力の小学部が好調を持続し全体の売上高をけん引した。また、期中平均塾生数は業界全体が伸び悩むなかで※1、前期比7.6%増の46,949人と順調に増加し、集団塾を主力に展開する上場企業のなかでもトップの成長率だったと見られる。内訳を見ると、小学部が同10.7%増の27,610人、中学部が同3.9%増の16,907人といずれも過去最高を更新し、高校部も同0.4%増の2,432人と5期ぶりに増加に転じた。高校部については難関大学向け学習塾としてのブランドを確立すべく、数年前から校舎をターミナル駅に集約化する戦略を推進してきた影響で減少傾向が続いていたが※2、校舎減によるマイナス影響が一巡した格好だ。
※1 経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」によると、2022年度の生徒数は前期比1.3%減であった。
※2 高校部の校舎数は、2016年3月期末の12校から2021年3月期末の6校まで段階的に減らしてきた。
各部門の塾生当たり平均売上単価について見ると、小学部及び中学部はほぼ前期比横ばい水準だったのに対して、高校部は3%下落した。これは塾生数のなかでも売上単価の低い1年生が10%超の増加となり、構成比率が上昇したことに加えて、野田学園で単価の高い既卒生が減少したことが要因となっている。小学部の塾生の伸び率を見ると、小学3~4年生が2ケタ増だったのに対して、5~6年生は1ケタ台後半の増加となった。中学部でも同様に非受験学年の伸びが高くなった。非受験学年の塾生数が増加すれば、そのうちの一定数は次年度に繰り上がっていくものと予想されるため、2024年3月期以降の塾生数についても増加基調が続く可能性が高いと見られる。
少子化の進展と生徒獲得競争が激化するなかでも塾生数を伸ばすことができている要因としては、同社が校舎展開しているエリアでは対象学年の人口が減少しておらず、エリアによっては逆に増加していること、また難関私立中学・高校受験のための学習塾としてのブランドを確立していることがベースにある。これに加えて、コロナ禍でオンラインを活用した「双方向Web授業」をいち早く開始し、「対面授業」再開後もいずれかの方式を選択受講できるデュアル形式の授業「早稲アカDUAL」を継続するなど、多様な顧客ニーズに応えてきたことや、塾生の学習効率及び利便性向上を図るため、ICTを活用した各種サービスの開発・提供を継続的に行い、顧客満足度の向上に取り組んできたことなどが挙げられる。
ICTサービスに関する新たな取り組みとして、従来「早稲田アカデミーMY PAGE」で提供していた授業スケジュール表示機能を生徒・保護者向けポータルサイト「早稲田アカデミーOnline」に統合・一元化し、授業の欠席・遅刻連絡を同サイト上で行えるようになったほか(従来は電話連絡)、カレンダー上から「双方向Web授業」の参加が可能になる機能を追加した。また、2022年12月より塾生が受講したテストの成績を一覧表示する機能を追加したほか、既存機能をアップデートし利便性の向上を図り、塾生だけでなく保護者からも高い評価を受けている。
(2) 新規校舎の開設状況
新規校舎としては、2022年7月に「個別進学館流山おおたかの森校」(千葉県流山市)を開校した。同年3月に開校した集団指導校舎が3ヶ月で満席となり、1.5倍に増床したうちの一部を活用しており、入塾生も順調に増加している。また、塾生数が1千人を超えるマンモス校となっている「早稲田アカデミー武蔵小杉校」(神奈川県川崎市)では2号館が定員に達したことから、2022年夏に3号館を増設した。同様に湾岸エリアで2021年7月に開校した「豊洲校」(東京都江東区)も増加する入塾希望者に対応すべく、2022年5月に2号館、同年12月に3号館と矢継ぎ早に増設し、開校2年弱で塾生数が1,000名を超えるなど標準校舎122校のなかで最大規模となった。
また、2023年2月に「早稲田アカデミー田町校」(東京都港区)、「早稲田アカデミー個別進学館東久留米校」(東京都東久留米市)、「帰国生専門 LOGOS AKADEMEIA(ロゴス・アカデメイア)」(東京都千代田区)、3月に「早稲田アカデミー個別進学館千歳船橋校」(東京都世田谷区)を開校し、子会社の水戸アカデミーにおいて「早稲田アカデミー個別進学館水戸校」(茨城県水戸市)を開校した。「田町校」の立ち上がりは好調で、個別進学館については近隣に早稲田アカデミー校舎があるため、これら既塾生の個別指導ニーズを取り込んでいく。「帰国生専門 LOGOS AKADEMEIA」は、小学4~6年生を対象とした帰国生専門の学習塾として新たに立ち上げた。期末時点の直営校舎数は前期末比5校増の185校となる。
(3) 費用の増減要因
2023年3月期の営業利益率は前期比1.4ポイント上昇の7.8%となった。これは売上原価率が同1.1ポイント、販管費率が同0.3ポイントそれぞれ低下したことによる。売上原価の内訳を見ると、原材料費が塾生数・受講者数の増加による教材・模試仕入費用の増加に加えて、オンライン英語関連の外注費が増加したことで0.4ポイント上昇したが、1校舎当たりの塾生数増加により労務費率が0.5ポイント、地代家賃が0.2ポイント、その他費用(主に減価償却費)が0.8ポイントそれぞれ低下した。
一方、販管費の内訳を見ると労務費率が業務の効率化を推進し本社人員の適正配置を行ったことで0.2ポイント低下したほか、広告宣伝費率も紙媒体を減らしてWeb広告を中心としたプロモーションを展開し、順調に塾生等の獲得が進んだこともあり、当初計画から抑制することができ前期比で0.4ポイント低下した。その他販管費率が同0.3ポイント上昇したが、主に支払手数料の増加(104百万円増加)やのれん償却費の増加(45百万円増加)によるものとなっている。
(4) 子会社の業績動向
野田学園についてはコロナ禍の影響もあって既卒生の減少傾向が続いており、厳しい収益状況が続いたものの、最終利益は会社計画を達成した。集学舎は生徒募集にやや苦戦しており、夏期合宿等の費用が増加したこともあって、会社計画からは未達となった。一方、水戸アカデミーについては2021年に校舎を増床したこともあって生徒数が順調に増加しており、会社計画どおりの増収増益となった。海外校については、ロンドン校が順調に推移した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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