エコモット Research Memo(4):「つなぐ力」「構築力」「組織力」と「圧倒的な現場力」が強み(2)
3. 事業戦略
(1) インテグレーションソリューション「FASTIO」
「FASTIO」(= FAST +IoT)はデータ収集基盤として、業務アプリケーションや分析ツールといった、よりビジネスと密接に関連するサービスに対して適切にデータをデリバリーする役割を担う。DXは、視覚や触覚など五感に相当するIoTから得た情報をAIが理解し、適切な判断をすることで価値が創出されるが、これには環境データやオペレーショナルテクノロジーなどのデータを的確に分析するオートメーションシステムの構築が必要となる。「FASTIO」は、DX推進により適切な判断ができるように、状況に合った機能をセレクトし、ワンストップで提供する。一例を挙げると、「3密対策」対応のIoTサービスでは、混雑状況確認や換気促進などのソリューションをワンストップで提供し、新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)でも社員や来店客の安全を確保できる。
「FASTIO」の特長は、クラウド環境で提供するため、短期間で安価にIoTサービスを利用できることである。また、8つ(ウィズコロナ、インフラ・防災、設備、オフィス、店舗・小売、農業、観光、IoT監視センター)のソリューションに分類し、パッケージ化しており、汎用性が高い点も挙げられる。
なお、KDDIとの協業としては、「KDDI顧客向けのカスタマイズ」「IoTパッケージ製品の共同開発」「大規模IoTインテグレーション事業の共同受注」に大別される。また、5Gなどの新技術に対する情報連携や実証実験などを行い、今後市場投入するサービスも構築している。
(2) コンストラクションソリューション事業
同社は、建設業界の人手不足、労働環境と安全性の向上、生産性の引き上げ、デジタル化を推進する国土強靱化対策、有用な新技術の積極的な活用を促進する施策などを背景として、コンストラクションソリューションのさらなる成長を目指している。
a) 建設業界の人手不足
建設業界にとって、生産性の向上は喫緊の課題だ。厚生労働省「労働経済動向調査」によると、コロナ禍の影響を受け、2020年8月の正社員等労働者の過不足状況判断指数(D.I.=不足-過剰)(調査産業計)は21(同年2月は38)まで低下したものの、直近の2022年8月は41まで回復している。これに対し建設業は2020年8月で39、直近の2022年8月で57と、調査産業計と比べ労働者不足感が高い。
日本建設連合会の長期ビジョンによると、今後10年以内に、著しい高齢化に伴う建設技能者の大量離職時代が到来する。2014年の技能労働者数は約343万人であったが、60歳以上が全体の23.2%、50代が21.2%を占めており、2025年度までに全体の3分の1に当たる約109万人が退職すると予測されている。同社は、コンストラクションソリューションの各種サービスを拡大することで、これらの建設業界での人手不足解消の実現を目指している。
b) 「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」
政府は2020年12月に、2021年度から2025年度までの5年間で大規模地震対策などを実施する新たな国土強靱化対策を閣議決定した。防災・減災のための国土強靱化計画は、2018年度から2020年度までの3か年の事業規模が7兆円だった。これに対し、新たな5か年対策では15兆円が見込まれている。豪雨対策や交通網維持に対し約12.3兆円、インフラ老朽化対策を加速するために2.7兆円、防災のための災害情報の充実などデジタル化の推進に2,000億円を充て、大規模地震対策など123事業を実施する。重点プログラムは、激甚化する風水害や切迫する大規模地震等への対策、予防保全型インフラメンテナンスへの転換に向けた老朽化対策の加速、国土強靱化に関する施策を効率的に進めるためのデジタル化等の推進が挙げられている。
同社は、創業以来、一貫してIoTインテグレーション専業プロバイダーとして、工事現場の「安全管理」「生産性向上」「作業精度向上」等の総合情報化ソリューションを提供してきた。また、増水、豪雨、突風、倒壊、土石流、土砂崩れなどの自然災害の予兆・監視等の防災ソリューションも手がけている。このことから、国がデジタル化及び情報化を推進することは、同社にとって追い風となると弊社では見ている。
c) 「NETIS」(公共工事における新技術情報提供システム)
国土交通省は2006年度に、公共工事等に関する優れた技術を持続的に創出していくため、民間事業者等により開発された有用な新技術を積極的に活用する目的で、データベース「NETIS(ネティス)※」を整備した。新技術情報の収集・共有、積極的な現場導入、導入現場での活用効果の調査、調査結果に基づく事後評価という一連の流れを制度化し、有用な新技術の活用と技術開発のスパイラルアップを図る総合的な仕組みとなっている。評価結果が優れている新技術については、総合評価落札方式や工事成績評定において加点対象となるなどのインセンティブが付与される。
※New Technology Information Systemの略で、新技術情報提供システムのこと。
同社の風向風速計、傾斜計、振動騒音計、水位計や広角高画質動画カメラ、車両検知システム、モバイル式コンクリート養生温度管理システムなどがNETIS登録製品となっている。それら製品の活用シーンは、土木、共通工、コンクリート工、仮設工、河川海岸、砂防工、道路維持補修工、建築、建築設備(電気)と多岐にわたる。代表的なサービスには、遠隔クラウド計測システム「クラウドロガー」、コンクリート養生温度管理システム「おんどロイド」、ワイヤレス警報検知システム「Tbox」がある。これらは工事現場に設置され、工事現場の安全性向上、業務効率化、品質向上に大きく貢献している。
d) 建設情報化施工支援ソリューション「現場ロイド」
建設情報化施工支援ソリューションの「現場ロイド」は、多くの経験と実績に裏打ちされた高い技術力で、現場の安全対策・進捗管理・防犯対策等をしっかりとサポートする。「現場ロイド」は、業務効率化の実現や安心安全の確立をサポートする約300種類のサービスラインナップをそろえている。2009年3月の提供開始以来、累計14,000件以上(2022年8月現在)の工事現場で利用されている。屋外に設置した環境センサーやネットワークカメラからのデータにより建設現場を見える化し、センサーによる常時警戒や迅速な警報発報など、人手不足を補い遠隔臨場※を可能とするシステムを提供している。一方、土木建築や災害現場においては、管理者や作業員がより高度で本質的な働きに集中できるよう、ワイヤレスコネクティビティ技術で現場を支えている。このほかにも、現在の風速を始めとする気象データをAIで解析し、設置エリアの風速を高精度で予測する「サインロイド2」(NETIS登録製品)や、エッジAIカメラ、配筋検査ARアプリ、3D地中変位クラウド計測システム、遠隔臨場システム「Gリポート」などがある。
※2020年3月に国土交通省より試行要領が発表されたもので、動画撮影用のカメラ(ウェアラブルカメラ等)により撮影した映像と音声をWeb会議システム等を利用して「段階確認」材料確認」「立会」を行うもの。
収入形態は、工事期間の機器レンタル料とサービス利用料になる。1件当たり平均3~4ヶ月程度利用され、利用料は約80~100万円となる。同サービスはパッケージ化されていることから、保安安全用品・建機レンタル業者等の販売店経由で提供する。保安安全用品の販売及びレンタル事業を行う(株)仙台銘板が最大の販売店であり、2022年8月期の仙台銘板への売上高依存度は20.2%であった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
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