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サスメド Research Memo(4):不眠障害治療用アプリの製造販売承認を申請中


■事業概要

3. 治療用アプリの開発パイプラインと国内市場規模
サスメド<4263>の治療用アプリの開発パイプラインの状況は、治療と診断に分けられ、独自の治療用アプリ開発プラットフォーム「QDTx」を活用し、2022年6月期末時点で8件の開発を進めている。治療は「不眠障害」(製造販売の承認審査が進行中)、乳がん患者運動療法「SMD401」(検証的試験の開始に向け準備中)、アドバンス・ケア・プランニング(以下、ACP)※「SMD402」(探索的試験が進行中)、慢性腎臓病リハビリ「SMD201」(探索的試験の準備中)、遷延性悲嘆障害「SMD102」(アプリ開発段階)、オピオイド誘発性便秘症「SMD202」(アプリ開発段階)がある。診断は、妊産婦うつ「SMD103」(アプリ開発段階/アルゴリズム及び装置に関する特許が成立)、ADHD:視線解析「SMD104」(アプリ開発段階)がある。

※進行がんの患者に対して、治療方針の意思決定支援を行う取り組みのこと。


このうち不眠障害治療用アプリに関しては2016年9月に治験を開始し、2021年5月~11月に検証的試験(新薬開発における第3相試験に相当)を実施して主要エンドポイントを達成したため、同年12月に塩野義製薬と販売提携契約を締結のうえ2022年2月に製造販売承認を申請した。同年6月には日本睡眠学会において治験結果の詳細を発表した。審査が順調に進めば2023年春ごろに承認を取得する見込みであり、不眠障害治療用アプリとしては日本初の承認取得となる見込みである。塩野義製薬との販売提携契約では、塩野義製薬に日本における独占的販売権を供与し、塩野義製薬から契約締結に伴う一時金及び開発進展などに応じたマイルストン収入として総額最大47億円を受領するとともに、製品上市後の販売額に応じたロイヤリティーを受領する予定である。

なお、治療用アプリの研究・開発→探索的試験→検証的試験→承認申請→承認→保険収載に至る過程は、医薬品の新薬の開発過程(基礎研究→非臨床試験→臨床試験→承認申請→保険収載)とほぼ同じである。ただし治療用アプリの一般的な開発期間はおおむね5~6年で、10年以上を要することも珍しくない医薬品の新薬開発に比べて半分程度の期間となり、開発コストも低くなるメリットがある。

同社が進めている開発パイプラインの国内市場規模(保険償還点数×対象人数)は、同社資料によると不眠障害治療用アプリについてはターゲット市場を1,000億円、潜在患者まで含めると3,500億円としている。そして、ターゲティング需要であるSAM(Serviceable Available Market)については、合計400億円超(既存の睡眠薬治療からの切り替えニーズ192億円+不眠症の自覚があるが睡眠薬治療に抵抗がある未治療患者の掘り起こし216億円)と試算している。そのほかの開発中パイプラインの国内市場規模としては、乳がん患者運動療法「SMD401」で70億円、ACP「SMD402」で277億円、慢性腎臓病リハビリ「SMD201」で660億円としている。


DTxプラットフォーム事業はブロックチェーン技術などを活用して
臨床試験効率化を支援
4. DTxプラットフォーム事業
DTxプラットフォーム事業では、不眠障害治療用アプリの開発過程で獲得したノウハウをベースに、独自の治療用アプリ開発プラットフォーム「QDTx」を活用したDTx開発支援サービス、医療ビッグデータを分析する機械学習自動分析サービス「Awesome intelligence」、汎用臨床試験システム「SUSMEDシステム」などを提供している。「SUSMEDシステム」はブロックチェーン技術を実装したモニタリングシステムにより、臨床試験で求められる高い水準でのセキュリティとデータ改ざん耐性を同時に実現するとともに、臨床試験のモニタリングに関する工数と費用の大幅削減に貢献する。機械学習自動分析システム「Awesome intelligence」はクラウドサービスとして提供し、リアルワールドデータをはじめとした医療ビッグデータの解析などに活用される。

なお同社は、治験で求められるモニタリングのデータ照合作業をシステムで代替するため、2017年からブロックチェーン技術の活用に関する研究開発を行なってきている。その結果多数の特許を取得するとともに、内閣府規制のサンドボックス制度※1の採択とグレーゾーン解消制度※2を利用して、2020年12月に厚生労働省より正式にGCP省令の求めるモニタリングの要件を満たすシステムとして認可された。その後も医療機関・学術研究機関・製薬企業などとの共同研究やアライアンスによってブロックチェーン技術を応用し、さらなる信頼性向上や領域拡大を推進している。

※1 IoT、ブロックチェーン、ロボット等の新たな技術や、プラットフォーマー型ビジネス、シェアリングエコノミーなどの新しいビジネスモデルの社会実装に向け、規制官庁の認定を受けた実証を行い、その結果を用いて規制の見直しにつなげる制度。
※2 事業者が現行の規制の適用範囲が不明確な場合においても、安心して新事業活動を行えるよう、具体的な事業計画に即して、あらかじめ規制の適用の有無を確認できる制度。



当面は研究開発費用が先行
5. リスク要因
一般的なリスク要因としては、新薬開発と同様に、治療アプリに関する研究開発の不確実性や副作用・製造物責任、法的規制、知的財産権に係る訴訟などがある。また、当面は多額の研究開発費用が先行して期間損益のマイナスが継続する可能性がある。

こうしたリスク要因に対して同社は、治療用アプリのシーズ獲得とパイプライン開発を推し進めることで将来の利益拡大を目指すとともに、保有する開発パイプラインの他社への導出やマイルストン収入の獲得など、より早期に収益計上を可能とする方策についても検討する方針である。また、研究開発型企業として多額かつ長期にわたる研究開発費用の負担が続くため、安定的な収益源を確保するまでは、必要に応じて適切な時期に資金調達等を実施して財務基盤の強化を図る方針としている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)

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