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窪田製薬HD Research Memo(5):スターガルト病第3相試験データロックは2022年12月期第3四半期以降


■窪田製薬ホールディングス<4596>の主要開発パイプラインの概要と進捗状況

3. エミクススタト塩酸塩
エミクススタト塩酸塩のうち、スターガルト病を適応症とした第3相臨床試験(2018年11月開始、目標被験者登録数162名、世界11ヶ国の医療施設で実施)は、2020年5月1日付で被験者登録が完了したことを発表している。順調に進めば2022年12月期第3四半期以降に試験結果のデータベースロックが完了する見込みで、結果が良好であれば欧米の規制当局に製造販売承認申請を行うことになる。現在、大手製薬企業など10社以上と販売パートナー契約の交渉を進めているが、多くの企業は第3相臨床試験の結果を見て具体的な交渉を進める意向となっており、治験結果が注目される。

スターガルト病とは、遺伝性の若年性黄斑変性で8千人から1万人に1人の割合で発症し、患者数は日米欧で15万人弱、米国だけで見ると3.2~4万人と推計されている※。小児期から青年期における視力低下や色覚障害などが主な症状として挙げられ、大半の患者が視力0.1以下に低下すると言われており、有効な治療法がいまだ確立していないアンメット・メディカル・ニーズの高い疾患の1つである。

※Market Scope,「Retinal Pharma & Biologics Market」「UN World Population Prospects 2015」をもとに、同社が推計。


発症原因は、網膜内にあるABCA4遺伝子の突然変異によるものと考えられている。ABCA4遺伝子は光を感じる働きを司る「視覚サイクル」によって生じる有害なリポフスチン(以下、A2E)を処理する役割を果たすが、同遺伝子が突然変異により本来の役割を果たさなくなることで網膜内にA2Eが過剰に蓄積し、視細胞が損傷を受けることで視機能障害が徐々に進行していくメカニズムとなる。

エミクススタト塩酸塩は動物モデルを用いた前臨床試験において、このA2Eの蓄積を抑制する効果が確認されている。エミクススタト塩酸塩が「視覚サイクル」において重要な役割を果たすRPE65と呼ばれる酵素を選択的に阻害し、視覚サイクルによって生じる老廃物の蓄積を軽減する薬理作用があるためと考えられる。このため、エミクススタト塩酸塩の投与によりスターガルト病の症状の進行を抑制する効果が期待される。

同社資料によれば、スターガルト病治療薬の市場規模は2027年に世界で約1,600億円になるという予測※1もある。米国に続いて欧州でもオーファンドラッグ指定※2を2019年6月に受けており、開発に成功すれば大きく収益に貢献することが期待される。また、2020年8月には第3相臨床試験がFDAの助成金プログラムに採択されたことを発表している。

※1 出典:WISEGUY RESEARCH CONSULTANTS PVT LTD.(インド)
※2 欧州では、生命を脅かすような疾患や重篤で慢性的な衰弱状態の疾患で、1万人当たり5人未満の発症率である疾患の診断や治療のための医薬品が指定対象となる。上市後10年間の市場独占販売権、医薬品の製造販売承認申請費用の減額、優先承認審査等のインセンティブ、税制優遇などを受けられることになる。米国では2017年1月にオーファンドラッグ指定(上市後7年間の独占販売権)を受けている。


スターガルト病を対象とした新薬候補品は、探索段階も含めて約30件あるが、そのうち臨床試験に入っているのは8品目となっている。第3相臨床試験まで進んでいるものは同社の「エミクススタト塩酸塩」のみであり、残りは第2相臨床試験に入っているもので6品目、その他1品目となっている。同社では競合品が第3相臨床試験に進む前に、「エミクススタト塩酸塩」の第3相臨床試験が終了する可能性が高いと見ており、アドバンテージを生かしたい考えだ。


VAP-1阻害剤候補化合物は導出に向けて前臨床試験を継続中
4. VAP-1阻害剤
2020年4月に子会社のクボタビジョンと皮膚科領域におけるグローバル製薬企業であるLEO Pharmaが、VAP-1阻害剤の治療薬候補の探索に向けた共同研究契約を締結したことを発表した。同社はエミクススタト塩酸塩の基礎研究を進める過程において多くの低分子化合物のライブラリを作成してきたが、そのなかでアトピー性皮膚炎や乾癬、変形性関節症などの炎症性疾患に関わっているとされるVAP-1※の働きを阻害する化合物を数十種類発見しており、これら化合物のなかから有望な化合物をさらに絞り込むため、LEO Pharmaで1年をかけてスクリーニング評価を実施してきた。

※VAP-1(Vascular adhesion protein-1):血管内皮表面に存在する白血球接着分子のこと。アトピー性皮膚炎や乾癬、変形性関節症、糖尿病性腎疾患、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)などの炎症性疾患では、VAP-1の異常な活性化が認められている。このため、VAP-1の働きを阻害することで、これら炎症性疾患の症状を和らげる効果があると考えられている。


スクリーニング評価の結果、少量でターゲットへの効果が高く、かつ選択制が高い(副作用が低い)候補化合物を特定した。同社はこのデータを世界の製薬企業100社超に送り、このうち10社程度と共同開発等に向けた協議を進めていることを明らかにしている。VAP-1阻害剤については、適応範囲が広く潜在的な市場価値が大きいため大手製薬企業でも活発に開発を進めているが、上市実績はまだない。どの候補化合物も選択制が低く、VAP-1以外の物質も阻害してしまうことで、副作用リスクを抑えることができなかったためとされている。これに対して同社の候補化合物は選択制が高い(安全性が高い)ことから、開発を進めていく価値はあると見られる。重度の乾癬については高額なバイオ医薬品が使われており、市場規模も大きい。同社の低分子化合物が開発に成功すれば、こうした市場を置き換える可能性も出てくる。

また、同化合物をNASH(非アルコール性脂肪性肝炎)や腎炎等の開発候補品として関心を寄せる企業があるほか、がん細胞の転移を抑制する効果を持つ化合物として注目している日本の医師もいる。腫瘍の転移を抑制する効果が確認できれば抗がん剤のコンビネーション剤として開発が進む可能性もある。同社では現在、前臨床で様々な病態モデルの実験を行っており、これらのデータをもって導出交渉を進めていく予定にしている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)


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