プロパスト Research Memo(2):都心のDINKSなどをターゲットに不動産事業を展開
1. 会社概要
プロパスト<3236>はJASDAQスタンダード市場に上場する総合不動産ディベロッパーで、社名はproperty(資産)とtrust(信託)の組み合わせに由来する。首都圏のマンション市場で、分譲開発事業、賃貸開発事業、バリューアップ事業の3事業を展開する。その時々の経済環境に応じて最適な事業を伸ばすことで成長を続け、社会貢献を果たす考えである。
同社は以下の12の競合優位性を発揮することで成長を続けてきた。すなわち、1)「仕入力」(情報整理とスピーディな判断)、2)「近隣住民・行政交渉力」(専門業者に委託せず直接交渉)、3)「再開発調整力」(地域のポテンシャルを最大限に引き出す)、4)「創造デザイン力」(同じ物は創らない、コンセプトから派生する無限の空間デザイン)、5)「プレゼンデザイン力」(潜在意識まで問いかけるイメージ戦略)、6)「販売マネジメント力」(自分たちで作り上げた作品だからこそ可能な細かい対応)、7)「財務力」(ファイナンス方法の多様性と機動性により、短期決済に対応できる体制)、8)「アフター対応」(迅速な初期対応でクレームを未然に防ぐ)、9)「解析力」(マーケティングの分析と経済指標の分析)、10)「高品質実現力」(本質を見極め、唯一無二の空間を提供)、11)「構想力」(明確なコンセプト)、12)「建築監理力」(クレームの少なさに反映される完成度の高さ)である。
同社は都心のアクセスの良い立地に特化し、DINKS(double income, no kids=子供をつくらない共働きの夫婦のこと)などの小規模家族をターゲットにした物件を取り扱い、物件ごとに異なるコンセプトと高いデザイン性が特長である。コンセプト重視のため、分譲物件はシリーズ化せず、物件名は個々に異なる。また、同社では物件を「作品」と呼んでいる。
最近の「作品」には、プルームヌーベル武蔵野(東京都武蔵野市、2019年11月竣工、31戸+店舗1)、ドゥアージュ コラッド松濤(東京都渋谷区松濤、2019年12月竣工、22戸)、アスデュール日本橋人形町(東京都中央区日本橋堀留町、2019年11月竣工、27戸)、ザ・グランプルーヴ上馬(東京都世田谷区上馬、2019年7月竣工、38戸)、グランデバンセ御殿山 ザ・レジデンス(東京都品川区北品川、2018年4月竣工、31戸)、バンデルーチェ北斎通り(東京都墨田区亀沢、2017年6月竣工、28戸+店舗)、ヴァントヌーベル代々木(東京都渋谷区千駄ヶ谷、2017年2月竣工、47戸+店舗)などがある。
また、これまでの代表的な作品には、ガレリアサーラ(千葉県市川市本八幡、2009年5月竣工、250戸)、ガレリアグランデ(東京都江東区有明、2006年2月竣工、413戸)、オリゾンマーレ(東京都江東区有明、2004年12月竣工、396戸)、ラ・プラースウエスト(東京都品川区西五反田、2004年10月竣工、120戸)、ラ・マーレ白金(東京都港区白金、2004年1月竣工、67戸)、コンパートメント東京中央(東京都中央区八丁堀、2002年3月竣工、208戸)、ラ・セーナ南青山(東京都港区南青山、2001年11月竣工、33戸)、レゾンデパン大磯(神奈川県中郡大磯町、2001年2月竣工、48戸)などがある。
2021年5月期のセグメント別売上高構成比は、分譲開発事業が4.9%、賃貸開発事業が72.8%、バリューアップ事業が22.3%であった。また、営業利益(全社費用控除前)構成比では、分譲開発事業が1.5%、賃貸開発事業が81.5%、バリューアップ事業が17.0%で、2019年5月期以降は好調な賃貸開発事業が会社全体の業績をけん引している。一方、分譲開発事業については、2021年5月期は1物件の販売実施にとどまったことから、以前に比べて売上高・営業利益は大きく落ち込んでいる。
2. 沿革
1987年12月に個人向け不動産の管理を目的として、株式会社フォレスト・アイとして設立。1991年1月に現社名である株式会社プロパストに商号を変更した。1991年4月に不動産の仲介・コンサルティング・不動産鑑定等を開始。1994年3月には、東京都日野市に初の新築戸建住宅を開発・分譲し、不動産開発事業に参入した。1995年6月には、東京都中野区に初の新築マンションを開発、1996年2月にはオフィスビル賃貸を開始した。さらに、2005年6月には、現在のバリューアップ事業の礎となる土地再開発・収益不動産再生を目的として、資産活性化事業に参入した。2006年12月には、東京証券取引所JASDAQ市場に上場したが、リーマンショック後の不動産市況の悪化に伴い業績が悪化、2010年5月には上場を維持しながらも、民事再生法適用を申請した。
2011年2月に再生手続きの終結が決定した後は、2009年2月に代表取締役社長に就任した津江真行(つえまさゆき)氏のリーダーシップのもと、経営資源を不動産販売事業に集中投下するほか、賃貸開発マンションの「コンポジット」と「グランジット」シリーズの販売を開始し、収益力強化に取り組んだことで、堅調な決算を続けている。その結果、自己資本比率は改善を続けて安全性が向上し、売上高営業利益率やROEも上昇して収益性も改善し、株主還元でも配当継続など着実に成果を挙げている。
2015年9月に、アパートやマンション等の不動産販売事業やゼネコン事業を展開するシノケングループ<8909>が筆頭株主となり、2020年11月には今後の不測の事態に備えて第三者割当増資を実施した結果、シノケングループの株式保有比率は35.75%に上昇している。事業面でも、同社とシノケングループとは用地仕入れ情報の相互紹介などで情報連携している。2020年7月には、シノケングループが運用する100億円規模の私募REIT(リート、不動産投資信託)へ、同社が賃貸不動産を供給した。同REITは、今後300億円規模に拡大して上場を目指す計画であり、同社にとっても有力な販売先になると期待される。また、シノケングループ傘下の(株)小川建設では、同社が開発するマンションも施工する。このように、同社はグループ会社間でのシナジーを生かして収益力を高め、今後もさらなる発展を目指している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
<EY>
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