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冨士ダイス Research Memo(3):前期比18.2%減収とコロナ禍の影響で大幅収益低迷も赤字は回避


■業績動向

1. 2021年3月期業績概要
2021年3月期業績は売上高14,247百万円(前期比18.2%減)、営業利益96百万円(同89.0%減)、経常利益300百万円(同70.2%減)、親会社株主に帰属する当期純利益468百万円(同25.0%減)と、コロナ禍の影響による自動車産業の低迷、世界的な製造業の稼働率悪化などで収益が低迷した。ただし、期初はコロナ禍が不透明と言うことで2021年3月期業績予想の開示を見送り、11月13日の上期決算発表時に2021年3月期の通期予想を開示、その時点では売上高13,820百万円(前期比20.7%減)、営業損失180百万円、経常利益30百万円(同97.0%減)、親会社株主に帰属する当期純利益270百万円(同56.8%減)を見込み、営業損失を想定していた。結果として下期に入り自動車生産の立ち直りもあり、通期で営業黒字を確保、創業来黒字継続を辛うじて維持する事ができた。

2. 2021年3月期はコロナ禍の影響が大きく全製品で減収
製品別売上高動向では全製品で2ケタの減収を余儀なくされた。超硬製工具類は溝付ロールや粉砕工具が堅調も半導体封止材向け混錬工具、超高圧発生用工具、熱間圧延ロールの販売が低迷し21.7%減となった。超硬製金型類はカメラの販売不振で光学素子成形用金型が低迷、自動車部品生産用金型も自動車生産が振るわず低迷、全体で24.6%減と製品別では最大の落ち込みとなった。その他超硬製品では海外での半導体、半導体製造装置関連向け超硬金型素材や電池金型用素材の販売が好調も、自動車部品生産用金型の超硬素材販売が低調で10.0%減となった。超硬以外の製品ではKF2製の混錬工具の販売は増加したものの、引抜鋼管及び排ガス除去担体向け金型販売が一巡し14.8%減となった。全体を通じ、自動車生産・販売がコロナ禍の影響を受け、冨士ダイス<6167>全体に影響を及ぼす結果となった。

利益面では経常利益で708百万円(前期比70.2%減)の減益となっている。この要因は、減収影響で3,170百万円の利益減少が大きい。一方、売上減で変動費の減少が1,560百万円、内訳は材料費559百万円、外注加工費659百万円など。また労務費や人件費などの減少470百万円、その他の削減効果440百万円(雇用調整助成金178百万円、減価償却費減85百万円、一般管理費減167百万円など)などの削減効果で補えず、大幅減益となった。なお親会社株主に帰属する当期純利益が468百万円(同25.0%減)と減益率が小さいのは、郡山第二工場の浸水被害に対する災害保険金収入375百万円が特別利益計上されている事による。

3. 顧客産業分類別状況
2021年3月期の単体ベースでの産業分類別売上動向でもすべて減少となっている。なかでも最大仕向け先である輸送用機械向けは自動車生産の不振、市況悪化から前期比25.9%減と大きく落ち込み、構成比も同1.9ポイント低下し19.6%となった。鉄鋼も市況悪化で熱間圧延ロール販売が低調で同22.2%減、生産・業務用機械向けは超高圧発生用工具販売が低調だったことに加え光学素子成形用金型が2020年3月期の反動で大幅減となり同32.6%減となった。一方、非鉄金属・金属製品向けは溝付ロールが堅調で同6.9%減、電機・電子部品向けもEV用磁石向け金型が好調で、新規案件の低迷があったが同9.2%減に止まった。全体を通じて顧客産業分類別で様々に分散しているが、同社製品の最終製品としての需要先は自動車関連向けが60%程度を占める模様で、全体として自動車生産の減少、関連製品の市況悪化が響いたとみられる。

4. 財務状況と経営指標は健全性高い
同社は創業以来、黒字経営を継続、高い自己資本比率を維持している。手元資金も潤沢であり、収益環境が厳しいなかでもネットキャッシュ残高は高位で推移している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 岡本 弘)


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