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日本電技 Research Memo(4):前中計は定量目標を達成、重点戦略で成果


■日本電技<1723>の中期経営計画

1. 前中期経営計画の振り返り
前中期経営計画(2019年3月期~2021年3月期)の目標値は、受注高310億円、売上高300億円、営業利益35億円で、すべての目標値において達成した。その結果、ピーク利益の更新を続け、2016年3月期から6期連続増配をすることができた。事業別でも、空調計装関連事業の受注高260億円、売上高260億円、産業システム関連事業の受注高50億円、売上高40億円という目標値に対して、産業システム関連事業の受注高はわずかに届かなかったものの、他の項目はすべて大きく上振れて着地した。

前中期経営計画の重点戦略に関しては、「効率重視の事業展開」で、収益性や効率性追求による利益率の向上やIT技術を活用した業務効率化の推進を、「顧客との関係強化」では、単なる計装からニーズに応えるソリューションの提供や、既存顧客のリピート受注による受注高増加を達成した。また、「戦略的受注の徹底」で、ブロック制・ユニット制による事業展開による優良案件の受注増加や、IS50達成に課題を残したが産業システム関連事業の受注高増加を達成、「ニーズに応える技術力強化と領域拡大」では、計装業界のパイオニアとして新技術や新システムへの対応力の強化や省エネビジネスのほか、ファシリティマネジメントなど新規ビジネスへの挑戦、グループ化による事業領域拡大を推進した。ほかに、働き方改革への対応で、人事制度の見直しや新基幹システムによる働き方改革の推進や業務効率化の加速といった成果があった。


空調計装の安定収益化、産業システムの成長加速
2. 長期的な環境予測
空調計装関連事業は、東京オリンピック・パラリンピック向けの需要が一巡した後は、足元首都圏での大型再開発事業が目白押しとなっている。短中期的にこうした需要を確保していくのは当然だが、長期的には、少子高齢化などから新規のビル建設が鈍化することが予測される一方、既設工事の積み上がりが期待できる。一方、産業システム関連事業がターゲットとする食品工場の自動化・スマート化は、すそ野が広いため中長期的な成長余地が大きいと想定されている。であれば、空調計装関連事業から産業システム関連事業に経営資源をシフトすることで、空調計装の安定収益と産業システムの利益成長を同時に享受することができると考えることができる。さらに言えば、産業計装は未開拓市場といってよく、システム開発など計装周辺の事業も開拓可能ということになる。これは、ジュピターアドバンスシステムズのグループ化によってシナジーが生じつつあることから、すでに現実的な前提になっている。加えて、例えば機械メーカーを傘下に入れるなど垂直統合がさらに進めば、計装・システム・機械とワンストップで工場の自動化・スマート化を請け負うことが可能になる。案件獲得の強化策となるだけでなく、内製化により収益性も向上するだろう。チャンスが広がる市場といえる。


2030年営業利益60億円を目指す
3. 長期経営指針
こうした社会構造の変化や技術革新の加速など経営環境の変化に対して、同社は長期経営指針「ND For The Next 2030」を策定した。同社が長期ビジョンを公表するのはこれが初めてだが、既存事業の強化と成長領域への事業拡大を進める強い意志が現れている。そして、これまで培ってきた技術と資産、つまり「計装」の総合力によって成長性を発揮するとともに、ESGの諸課題を解決することでさらなる持続的成長も目指す。そのため2030年までの10年を、成長基盤を構築するステージ1、成長を実現し事業品質の向上を進めるステージ2、さらなる飛躍と挑戦をするステージ3——の3つのステージに分け、それぞれ中期経営計画を策定することで着実な成長を目指すことになった。そして、総合計装エンジニアリングとしてのあるべき姿を追求し、脱炭素社会への貢献、計装エンジニアリングの可能性への挑戦、従業員とのエンゲージメント、ダイバーシティの推進、中長期的な企業価値向上、地域・社会への貢献といった諸々の課題を解決することで、社会、顧客、社員の期待に応える企業へと発展、2030年には売上高450億円、営業利益60億円を目指す。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)


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