サムティ Research Memo(1):2020年11月期も増収増益、過去最高業績を更新。レジデンス中心に好調持続
1. 会社概要
サムティ<3244>は、関西圏及び首都圏を中心として全国に展開している総合不動産会社である。不動産事業(不動産ファンド向け大型賃貸マンションやホテルの開発及び販売等)と不動産賃貸事業(賃貸マンションの保有等)を両輪とし、ホテル事業なども手掛けている。不動産賃貸事業による安定収入と不動産事業による成長加速のバランスにより事業環境の変化に柔軟に対応できるところに特長があり、大きな金融危機を乗り越えながら持続的な成長を実現してきた。また、両事業の組み合わせによる一気通貫型のビジネスモデルにも優位性があり、ここ数年高い成長を続けている。営業エリアの拡大とともに、2015年6月にはJ-REIT事業※にも進出し、更なる事業拡大に向けてビジネスモデルの基礎固めが完了した。
※2015年3月に設立したサムティ・レジデンシャル投資法人<3459>(以下、SRR)を東証J-REITに上場。
新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)の影響により、2020年中に予定していたホテルREITの設立(及び上場)は2021年11月期以降に延期したものの、景気変動の影響を受けにくい賃貸マンションは堅調に推移している上、今後に向けた投資計画(用地仕入れや収益不動産の取得)も順調に進捗している。一方で、アフターコロナ等を見据え、中期経営計画の見直しを実施した。戦略的投資を継続するとともに、「開発して保有する」ビジネスへの転換(安定収益の拡大)や海外事業の強化、長期目線でのホテル事業の取り組みにより、持続的な成長を目指す方向性を描いている。
2. 2020年11月期の業績
2020年11月期の業績は、売上高が前期比18.2%増の101,120百万円、営業利益が同12.6%増の17,355百万円と順調に拡大し、6期連続の増収及び8期連続の増益を達成した。コロナ禍の下、当初計画していたホテルREIT設立及びホテル物件の売却時期を2021年11月期以降に見直したものの、賃貸マンション及びオフィスビルを中心に売却物件を入れ替えたことが「不動産事業」の拡大に大きく寄与した。また、「不動産賃貸事業」についても、積極的な収益不動産の取得や高稼働の維持により賃料収入が大きく伸びている。一方、「その他の事業」については、コロナ禍の影響によるホテル稼働率の落ち込み(一部休業を含む)から減収となったが、同社業績全体に与える影響は限定的である。利益面でも増収による収益の押し上げにより増益を実現し、営業利益率も高い水準を維持している。
3. 中期経営計画の見直し
同社は、2019年11月期から2021年11月期までの3ヶ年中期経営計画「サムティ強靭化計画」を推進し2年が経過したが、アフターコロナを見据え、2025年11月期までの5ヶ年の中期経営計画へと見直しを行った。基本方針として、(1)「開発して保有する」ビジネスへの転換(安定収益の拡大)、(2)ホテルREIT設立に向けた取り組みの継続、(3)地方大都市圏における戦略的投資の継続、(4)海外事業での収益基盤の構築、を掲げており、5年間の投資計画は約7,500億円、最終年度の業績目標として売上高2,200億円水準、営業利益350億円以上、ROE 15.0%水準、ROA 7.0%水準、自己資本比率30.0%以上を目指している。特に、営業利益の50%をインカムゲイン(賃貸収入)、15%を海外事業で構成する収益構造への転換を図る方針である。
4. 2021年11月期の業績予想
2021年11月期の業績予想(レンジ形式)について同社は、売上高を76,600百万円(前期比24.2%減)~92,200百万円(同8.8%減)、営業利益を8,100百万円(同53.3%減)~11,800百万円(同32.0%減)と見込んでいる。レンジ予想となっているのは、外部環境の不透明感を踏まえ、確実性の高い販売計画を下限としたうえで、追加的な物件売却の可能性を上限として加味したものである。売上高が上・下限ともに減収予想となっているのは、中期経営計画の見直しに従い、「開発して保有する」ビジネスへと転換していくプロセスにおいて、物件売却数が一時的に減少することが理由である。一方、利益面では、減収に伴って営業利益段階では上・下限ともに大幅な減益となっているが、事業スキームによる会計上の理由により営業外損益として計上される利益が発生することも影響している。したがって、経常利益段階では上限で増益となるとともに、経常利益率も前期以上の水準を確保する見通しとなっていることに注意が必要である。
■Key Points
・2020年11月期も大幅な増収増益で着地し、過去最高業績を更新
・コロナ禍の影響によりホテルREITの設立が延期されたものの、主力のレジデンスを中心に好調持続
・アフターコロナ等を見据え、5ヶ年の中期経営計画への見直しを実施。戦略的投資を継続するとともに、「開発して保有する」ビジネスへの転換や海外事業の強化等により持続的な成長を目指す
・2021年11月期は、「開発して保有する」ビジネスへの転換プロセスにおいて、売上高は上・下限ともに減収となるものの、経常利益率は高い水準を確保する見通し
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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