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Pウォーター Research Memo(3):「顧客純増」の強みが水源分散化、物流効率化、製造原価低減に好影響


■会社概要

4. 強み
プレミアムウォーターホールディングス<2588>の強みの根源は、圧倒的な顧客獲得力による「顧客純増」である。この強みがあることにより、水源分散化や物流効率化、無駄のない工場設備投資などが可能となり、好循環が生まれている。

(1) 圧倒的な顧客獲得力による「顧客純増」
同社は宅配水市場でのシェアを近年大きく伸ばしており、顧客獲得力がずば抜けている。その特長は、エフエルシーがデモンストレーション販売では国内トップクラスの実力だったことに遡る。顧客獲得方法は様々であるが、同社は大型商業施設や大手量販店、ホームセンターなどでのデモンストレーション販売で約6割の顧客を獲得している。同社専用のブースを期間限定で出展し、同社の従業員が対応する。営業ノウハウやその教育もさることながら、従業員の育成とモチベーションを考慮して作り込まれた従業員評価制度があり、能力を引き出す仕組みが充実している。そのほかにテレマーケティング、Webによる新規顧客獲得も増えており、特にコロナ禍により在宅時間が増えた消費者に対して有効性が増している。なかでもテレマーケティングは3割以上の顧客を獲得する。具体的には不動産会社や家電量販店などとの委託契約により、入居後や大型家電購入後にサンキューコールを実施する。その際、了承を得た顧客に対して宅配水を推奨する。多様な販売チャネルから顧客を獲得できるのが同社の強みと言えるだろう。

シェアNo.1のナチュラルミネラルウォーターブランドであることの認知が高まったことにより、取次店販売チャネルが伸びている。取次店としては、家具、各種通販、家電量販店、不動産、鉄道、電力など多様な事業会社と取引を拡大中である。また宅配水事業を行う他社への製品提供(OEM)も増えている。

(2) 水源の分散化(全国5水源体制)
同社は水の安定供給及び地産地消を狙いとして水源を分散する方針を取っている。富士吉田(山梨県)、南阿蘇(熊本県)、金城(島根県)、朝来(兵庫県)、北アルプス(長野県)の全国5ヶ所が稼働している。5つの自社専用の水源を持つことも業界では特異な存在である。水源を増やす難しさは、一定以上の顧客が確保できなければ工場の稼働率は上がらず製造コストが高くなってしまう点にある。その点で同社は保有顧客を増加させることができているため、工場稼働率を落とすことなく水源の開拓ができる。現在の5水源で最大175万ユーザーまで供給可能な体制が整っている。また、2016年の熊本地震の際に南阿蘇の供給がストップする事態があったが、九州地方に配送する宅配水をほかの水源からバックアップで供給することができたことからも、分散化が災害時にも強いことを証明した。

同社は成分や安全性には独自の厳しい基準を設定している。ミネラルバランス、硝酸・亜硝酸値、水量(供給量)、水質などの厳しい基準をクリアできる水源は多くはないのが実情である。特に、硝酸及び亜硝酸は毒性が指摘されているため、同社独自の高い基準を設けて管理する。富士吉田工場が食品安全に関するマネジメントシステムの国際規格であるFSSC22000の認証を取得している。

(3) 地産地消による物流の効率化
宅配水業界にとって、近年の物流費の上昇は大きな経営課題である。同社は1 WAY方式の配送を行うため、大手の配送業者に配送を委託しており、売上収益に占める配送費の比率は20%を超える(2020年3月期で25.4%)。配送業者からは絶えず値上げプレッシャーがあり、今後も更なる物流費上昇のリスクがある。同社が打ち出す1つの方向性が、「水源の分散化による配送距離の短縮化」である。製造地と消費地が近ければ配送費も抑制できる。5水源体制となっており、南阿蘇工場から九州地方、金城工場から中四国地方、朝来工場から近畿地方と北陸地方の一部、富士吉田工場から東海地方から東(北海道除く)、北アルプス工場から北海道地方へそれぞれ配送する体制が整った。エリア内で、定期的にまとまった物量が確保できるため、トラックの積載効率も高くなり、物流費高騰を回避できる要因となっている。

(4) 無駄のない工場設備投資による原価低減
同社は、製造原価の低減にも取り組んできた。2016年からプリフォーム射出成型機を導入し、容器の内製化を行い、原価低減に成功している。この設備投資は約4億円の投資であった。容器1本当たり20円削減を想定した投資だったが、大きな設備投資も商品の本数が少なければ、無駄な投資となってしまう。同社では初年度に1000万本出荷し、約1.6億円の利益向上を達成した。投資から3年目には投資回収し、利益を生み出し続けている。このように、顧客純増による出荷規模拡大は様々な面で好循環を生んでいる。


「投資回収型ストックビジネスモデル」が特徴。損益分岐点を超え、利益率向上が加速
5. ビジネスモデル
同社のビジネスモデルの特徴は、「投資回収型ストックビジネスモデル」である。ウォーターサーバーの原価やデモ販売の人件費、催事場代、販売店への販売手数料などの費用は先行して発生し、これを会社側が最初に負担する。1顧客を獲得するためのコストは33千円前後と試算できる※。この先行投資を、その後数年かけて天然水の売上で回収していく。もちろん一定の解約が発生するため永遠には続かないが、解約率1.5%と仮定すると、60ヶ月目で40.4%(フィスコ試算)が継続する。定期配送契約を結ぶため、ストック利益(毎月の水代などから得られる収入から顧客維持コストや提供サービスの原価などを除いた利益分のこと)は安定して獲得できる。つまり単純化すれば、33千円の先行投資をして、毎月少しずつ投資分を回収し投資回収が終われば利益のみとなる。新規顧客を一気に増やす時期は損失を計上することになるが、その後回収が進んでくると大きく利益を計上できるという事業特性である。2016年7月の経営統合以来、同社は新規顧客獲得のギアを上げて先行投資してきたが、2019年3月期はその成果として保有顧客数が拡大し損益分岐を超えたために、利益がV字回復し、その後も利益率を向上させている。

※2020年3月期の有価証券報告書より、契約コスト償却費(2,705,394千円)、従業員及び役員に対する給付費用(4,961,930千円)、販売手数料(3,719,328千円)、合計11,386,652千円。月次概況(速報)より、2020年3月期の新規獲得顧客数349,487件から計算。


新規顧客獲得力に加え、解約率も抑制できており、保有契約件数が順調に積み上がる。2020年9月末で保有1,130千件
6. 保有契約件数の推移
同社はKPI(重要業績評価指標)として保有契約件数を設定し進捗を管理している。2016年7月の経営統合前に231千件だった保有契約件数は、統合直後に394千件となり、その後も安定して右肩上がりに伸び、2020年9月末には1,130千件に達している。直近の2年間の平均では、月平均で16.2千件ずつが純増したことになる。純増の要因は、新規契約件数と解約数に分解できる。これらのデータは現在開示されていないが、過去の実績では新規顧客件数では月25~35千件のペース、解約件数では月15千件前後(保有1,000千件、月解約率1.5%の場合)が目安となる。新規契約ペースが解約ペースを絶えず上回るため、安定して純増することができる。宅配水の販売には季節性があり、7月から8月の夏の時期に新規獲得がピークとなる。また大きなブースでの販促を行った月は大きく新規獲得が増える。解約率はフィスコ試算で2%前後だったが、2019年3月期以降は1.5%前後に低下している。解約率1.5%という水準は、宅配水業界内においても、低く抑えることに成功していると言える。これは、クレジットカード決済顧客を中心に顧客開拓を行うほか、プレミアムモールやプレミアム電力など様々な付加サービスにより顧客満足度を高まったことなどの要因が考えられる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)

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