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アジア投資 Research Memo(6):プロジェクト投資における各事業が順調に進展


■日本アジア投資<8518>の活動実績

1. PE投資
(1) ファンド運用残高(ファンド新設の進捗)
同社グループが管理運営等を行っているファンドの運用残高は11件※で16,556百万円(前期末は11件で17,390百万円)と減少した。一方、地域金融機関向けに募集を開始した中堅中小企業の海外進出を支援するファンドについては、その成果の1つとして「北海道地域中小企業グローバル化支援ファンド」(151百万円)の新設を実現するに至った。

※ただし、11ファンドのうち、1ファンド(総額1,359百万円)については、2020年3月に設立した稼働済みメガソーラープロジェクトを投資対象とするファンドである。


(2) 投資実績(戦略投資の実行、及び既存資産の流動化の進捗)
同社グループの自己勘定及び同社グループが管理運営等を行っているファンドからの投資実行額については2社に対して合計158百万円(前年同期は6社に対して合計824百万円)を行った。そのうち、プロジェクト投資のパートナー企業への戦略投資が1件含まれており、戦略投資残高は1,155百万円(前期末は1,005百万円)と中期経営計画の目標(10億円)を上回った上で着実な伸びを継続している。一方、中期経営計画に従って進めてきた既存資産の売却及び流動化については、株式売却の期ずれ等の影響により、緩やかな減少にとどまった。その結果、PE投資全体では、2021年3月期第2四半期末の投資残高は95件で8,375百万円(前期末は98件で8,405百万円)となった。

(3) アジアネットワークの強化
2020年9月には、ベトナム全土に280支店を展開するマリタイムバンク(商業銀行)と業務協力協定を締結した。本件により、クロスボーダービジネスの展開やベトナム企業とのM&Aニーズを持つ日系のアジア企業などに対して、銀行サービスやその他の資本提携機会を提供していく方針である。特に、既述した地域金融機関との連携強化(中堅中小企業のグローバル化を支援するファンド)と融合させ、新しいビジネス機会の創造に結び付けていく戦略を描いている。

2. プロジェクト投資
(1) 投資実績
既存プロジェクトへの追加投資5件に対して合計374百万円(前年同期は6件に対して合計920百万円)の投資を実行した。他方、採算性の低下した建設中のメガソーラープロジェクト1件の投資元本を回収したことにより、2020年21年3月期第2四半期末の投資残高は31件で6,000百万円(前期末は32件で6,696百万円)と減少している。そのうち、22件がメガソーラープロジェクト、4件がメガソーラー以外の再生可能エネルギープロジェクト、5件がその他のプロジェクト(スマートアグリ、ヘルスケア、商業ビル、物流施設)となっている。この他、投資実績には含まれていないが、3件のヘルスケアプロジェクトに融資を実行している。

(2) 各事業の進捗
a) メガソーラー
採算性の低下した建設中のプロジェクト1件の投資元本を回収したことにより、2020年21年3月期第2四半期末のプロジェクト数は22件(24発電所)で合計85.8MWとなった。そのうち、上期は2件(4発電所)が売電を開始し、売電中のプロジェクトは16件(18発電所)で合計53.2MWに増え、収益の底上げに貢献した。下期は、期初計画からの方針転換により7件(合計18.3MW)のプロジェクト売却を予定している。

b) メガソーラー以外の再生可能エネルギー
木質バイオマス発電1件(2.0MW/売電中)、バイオガス発電2件(1.6MW/売電準備中、0.03MW/売電中)、風力発電1件(最大25.2MW/建設・企画中)の合計4件を推進している。そのうち、バイオガス発電1件(羽村バイオガス発電所)については、食品廃棄物からバイオガスを生成して、発電に再利用する食品リサイクル事業を営む(株)西東京リサイクルセンターがオペレーションを手掛けている。近年では、フードロスの削減が進められているが、食品廃棄物を完全にゼロにすることは現時点で困難であることから、廃棄物をそのまま処分するのではなく、再生可能エネルギーとしてリサイクルするこの事業は、持続可能な社会の発展に大きく寄与するものとして注目されている。西東京リサイクルセンターでは、食品メーカーなどの事業者から廃棄物を調達する活動を推進し、バイオガス供給量を安定させたのち、羽村バイオガス発電所を本格稼働させる計画である。

c) スマートアグリ
植物工場(篠山工場)については大手コンビニエンスストア向けの販路開拓に成功した。無農薬で栽培したサラダ用のレタス販売に加え、コロナ禍により拡大した中食需要も獲得し、順調に拡大しているようだ。同社では2021年3月期中に篠山工場の黒字化に道筋をつけ、レタスの2号工場にも取り組む計画である。また、戦略投資先のMD-Farm(エムディーファーム)(株)が手掛ける工場栽培のイチゴについても、販売候補先を開拓中である。MD-Farmは、閉鎖型の植物工場で、国産のイチゴ品種を通年にわたり安定的に栽培している。工場でのイチゴ栽培は、長年の間技術的に困難とされてきたが、独自に開発した技術により実現にこぎ着けた。高品質で鮮度が高く、しかも完全無農薬で栽培された安全なイチゴを通年で提供することで、大きな潜在需要の獲得を見込んでいる。

d) ヘルスケア
2020年8月には、2件の障がい者グループホーム(静岡県浜松市、広島県広島市)がそれぞれ営業を開始した。グループホームの運営は、戦略投資先であるソーシャルインクルー(株)が担っている。日本アジア投資(株)は、この事業を金融機関から融資を受けることのできる事業として取り組んでおり、今後も地域金融機関との連携により、規模を拡大するためのスキームを検討しながら、建設数を増加させていく方針としている。下期には、さらに2件の障がい者グループホームの開発と1件の高齢者施設の投資を実行する計画である。

e) ディストリビューションセンター
前期に開始した2件のプロジェクト(埼玉県越谷市、神奈川県厚木市)については、立地の良さや交通の便などが評価されたことから、開発資金の大半を拠出するメインの投資家が確定し、開発も順調に進んでいる。なお、プロジェクトの開発は、戦略投資先のKICホールディングス(株)が行っている。厚木市の施設は、完成後の借り手も確定しているようだ。同社では、プロジェクトの初期段階に投資する開発型プロジェクトとして、両施設ともに完成後の売却を予定している。コロナ禍のもと、新しい生活様式や巣ごもり消費によるeコマースの拡大に伴って、物流施設の需要はひっ迫しており、引き続き物流施設への投資に注力する方針であり、下期には新規施設の開発を進め、合計12億円の新規投資を行う計画である。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)


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