マザーズ市場の投資戦略2020 vol.5 ~マザーズ先物の活用方法と注目銘柄~
橋本:最後に、個人投資家の方々も注目の8月決算発表の注目マザーズ銘柄のポイントについて解説していただきましょう。仲村さん、よろしくお願いいたします。
仲村:はい。先物へのインパクトもある時価総額上位銘柄の中で、注目の企業を4つ取り上げたいと思います。まずは、メルカリ<4385>です。時価総額トップの銘柄であり、海外投資家からも注目されている企業です。メルカリは6月決算を受けた本決算発表なので欠かせませんね。こちらは国内メルカリ事業、メルペイ事業、米国メルカリ事業が主要3事業になっています。
国内メルカリ事業はコロナによる巣ごもりの影響などで、GMV(流通取引総額)伸び率が10-12月の+20%に対し、1-3月は23.4%に加速し、4-6月は25~30%が期待されています。ポイントとしては実際に25~30%になっているのか否かがポイントになってきます。また、この先もこの成長率が維持できるかどうかについて会社側がどのような姿勢を示すのかも注目です。
次に、米国メルカリ事業ですが、12月からマーケティングを強化した結果、1-3月のGMVは前年同期比+55%の伸びに加速しました。4-6月も高い成長が見込まれますが今後もこれが継続できるかがポイントです。全体の業績としては赤字幅縮小トレンドが続いているかがポイントです。1-3月の売上高成長率は(前年同期比)+49.8%、営業損失は64億円で、10-12月の69億円より縮小しています。4-6月の数字がこのトレンドを持続できているかが焦点になるでしょう。
次に挙げるフリー<4478>は、個人事業主や小規模事業者を主な対象としたクラウド型会計ソフトを提供している企業です。売上高の90%以上が継続課金であるため、コロナの影響は相対的に小さいといえます。ただ、例年新規加入が最も増加する確定申告前の2月から3月半ばについて、今年はコロナの影響でこの確定申告の期限が延長されていますので、駆け込み需要がやや減少しています。また、中規模事業者向けには一部訪問営業を行っていますが、コロナの影響でこの訪問営業が自粛となっていたため、新規成約率も低下しています。
これを受けて5月には、会社側から20年6月期売上高予想を69.4億円から67億円に引き下げる動きがみられています。この引き下げ後の売上高67億円という数値は前期比+48.3%という伸び率になりますが、決算発表でのポイントはこの数値を踏まえた上での来期の売上高成長率になると考えられます。市場予想では21年6月期売上高を+43.3%増の97億円となっていますので、もし会社予想の売上高成長率が30%台前半などとなれば失望売りを招く可能性があるので、注意が必要です。
メドレー<4480>は、足元でホットなオンライン診療のテーマ銘柄で、医療ヘルスケア領域での人材紹介を展開する人材プラットフォーム事業が柱です。このプラットフォーム事業で展開している人材採用システム「ジョブメドレー」の特徴は成果報酬が低単価に設定されていることです。
競合の人材紹介サービスでは、求職者が紹介企業のコンサルタントと面談を行ったうえで仕事を探すのが典型的なプロセスとなっています。ジョブメドレーでは求職者側が自ら絞り込んだ条件のもと求人情報を閲覧し、興味のある求人事業所に直接応募した後に面接に向けたコミュニケーションを取るという設計になっています。紹介会社のコンサルタントが介在しないため、その分人的コストをカットすることができており、これが競争力の源泉になっています。
コロナにより、医療機関はきわめて多忙な状況になっていますが、多くのクリニックなどでは、患者が感染を恐れて通院することを控えている動きもあり、これが医療機関の人材採用ニーズにどのような影響をおよぼしているか注目されています。
昨年12月の上場以降、時流にのった株価は1200~1300円水準から4000円を超えるまで上昇し、ファンダメンタルズに照らし合わせると(7月7日時点 時価総額998億円、20年度予想売上高66~69億円・営業利益3.3~6.3億円・純利益3~5.5億円)やや割高感が出てきており、仮に決算発表で成長鈍化の兆しが示唆されると、一旦は利益確定売りが先行しやすいと考えられます。
4つ目にご紹介するJTOWER<4485>はョッピングモールや大型オフィスビルなどの建物内の携帯ネットワークを携帯キャリアに代わって構築し、これを各携帯キャリアに貸し出すサービスを提供しています。データ通信量が増える環境下、5G関連銘柄としても人気の銘柄です。
したがって基本的にコロナの影響は限定的なビジネスモデルといえます。影響があるとすれば、緊急事態宣言発令でゼネコンの工事が中断され、これによって同社の携帯ネットワーク構築の工事にも遅れが生じている可能性があるという点でしょう。8月の決算ではこの工事中断の影響がどれくらい生じているかがポイントになってくるでしょう。
最後に、マザーズ先物を活用した先物戦略を簡単におさらいしましょう。今回ご紹介した注目マザーズ銘柄はどれも時価総額上位銘柄であり、先物への影響力が大きいものばかりです。
こうした銘柄を長期的な有望性の観点から現物取引で買う一方で、同時に、マザーズ先物をショートするということが一つ有効戦略として挙げられます。これにより、成長のための先行投資が嵩むことによる目先の決算発表でのリスクや、そのほか、世界の政治経済動向といった、保有している銘柄の個別要因には基づかないマクロ環境等による下落リスクなどをヘッジすることが可能となります。
つまり、短期的なリスクをしっかりとヘッジしながら、安心感をもって、有望銘柄の成長性に基因した長期的な株価上昇の恩恵を享受することが可能となります。したがいまして、手元資金の10倍以上の大きなレバレッジをきかせた攻めの戦略にもマザーズ先物は使えますが、それだけでなく、今しがたご紹介した短期的な下落リスクをヘッジするための守りの戦略としてもマザーズ先物は有効であり、多様な形で活用することが可能です。
橋本:なるほど、ポイントがよく分かりました。今回の動画を通して、マザーズ市場の特徴や、マザーズ先物を活用した先物戦略のメリット、そして、注目銘柄の決算ポイントなどを学ぶことができました。仲村さん、ここまでありがとうございました。
仲村:はい、ご清聴いただきありがとうございました。
<HH>
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