日本調剤 Research Memo(3):処方箋応需枚数、処方箋単価とも堅調で2ケタ増収。新規出店もほぼ計画どおり
2. 調剤薬局事業の動向
調剤薬局事業の2020年3月期第2四半期は、売上高111,763百万円(前年同期比10.6%増)、売上総利益16,153百万円(同13.8%増)、営業利益4,408百万円(同37.8%増)と、増収増益となった。期初計画との比較でも、売上高、利益ともに計画を上回った。
2018年4月の調剤報酬改定が、門前薬局や大手薬局チェーンにとって非常に厳しいものであったことはこれまでのレポートでも報告してきたとおりだ。過去の例にならえば改定によるマイナス影響を改定の当年度中に完全に取り戻して、2年目はむしろ改定前を上回る水準の調剤報酬でスタートすることが多かった。しかし2018年4月改定については、2019年4月時点でも改定前の水準に完全に戻っておらず、水準回復の努力が続いている状況だ。そうした厳しい状況ではあったが、後述するように処方箋単価、処方箋応需枚数ともに堅調に伸び、売上高は前年同期比2ケタ増収を達成した。
一方、利益については、過去最高規模となる約400人の新卒薬剤師を採用する等の費用増要因があったものの、これを増収効果で吸収し、営業利益は前年同期比37.8%増の大幅増益となった。営業利益率は前年同期の3.2%から2020年3月期第2四半期は3.9%に、0.7ポイント改善した。
同社は調剤薬局事業のKPI(重要経営評価指標)の1つとして1店舗当たり売上高を特に重視している。2020年3月期第2四半期は184百万円(年率換算すると368百万円)に達し、前年同期の171百万円(年率換算すると352百万円)から8.0%(13百万円)上昇した。
店舗については、従来どおり自力出店とM&Aの両面から店舗網拡大に努め、2020年3月期第2四半期はほぼ計画どおり20店舗を新規出店した。
(1) 処方箋応需枚数と処方箋単価の状況
調剤薬局事業の売上高は処方箋応需枚数と処方箋単価の積で決まるが、2020年3月期第2四半期は処方箋応需枚数が前年同期比104.1%、処方箋単価が同106.2%となり、その結果調剤事業売上高が同110.6%という結果となった。
さらに出店期別に詳しく見ると、既存店が処方箋単価(107.5%)、処方箋応需枚数(101.7%)ともに前年同期を上回り、既存店売上高が109.3%となったことが注目される。2019年3月期通期の実績は処方箋単価、処方箋応需枚数ともわずかに前年を割り込み、売上高も前期比99.1%にとどまった。同社の店舗は1店舗当たり売上高が業界でもトップクラスに高いため伸び余地が限定的な状況にあることを懸念したが、杞憂だったようだ。
処方箋応需枚数は前述のように前年同期比104.1%となり、実枚数は7,219千枚となった。店舗の出店期別で見ると、より実態を表す既存店は前年同期比101.7%となり、堅調な伸びを示した。そこに前年出店店舗の増加が加わって前年同期比104.1%となったが、この伸び率は2019年3月期第2四半期の102.6%や、2019年3月期通期ベースの103.3%を上回るものだった。
一方、処方箋単価は、2020年3月期第2四半期は前年同期比106.2%となった。内訳は既存店の単価が同107.5%、前年出店店舗が同82.0%となっている。処方箋単価の変動要因として、薬剤価格、処方した薬剤の構成変化、及び調剤報酬の大まかに3つの要因があるが、2020年3月期第2四半期は調剤報酬が約3%改善し、残りが薬剤の構成差によるものとみられる。2018年4月の調剤報酬改定の内容の厳しさに照らすと、2020年3月期第2四半期の処方箋単価の動きは満足が行く水準だったものと弊社では推測している。
(2) 店舗の異動状況
2020年3月期は通期で45店舗の新規出店計画で臨んだが、2020年3月期第2四半期の6ヶ月間では20店舗を新規に出店した。内訳は自力出店が16店舗、M&Aによるものが4店舗となっている。一方で、7店舗を閉店したため純増数は13店舗となり、総店舗数は2019年3月末の598店舗から2019年9月末では611店舗へと増加した。また、2020年3月期第2四半期の移動の中で、物販店舗2店舗のうちの1店舗を閉鎖し、調剤薬局店舗として出店した。そのため、611店舗の内訳は調剤薬局610店舗、物販店舗1店舗となる。
店舗のタイプ別について同社は、門前型(病院の敷地内に出店する敷地内薬局も含む)とハイブリッド型(従来、面対応型と医療モール型に分けていたものを、対象医療機関をより幅広くし来店客数を増やすべく両者を統合したコンセプトの店舗)の2つのタイプに分けて管理している。2020年3月期第2四半期は前述のように20店舗を出店したが内訳は門前型8店舗(うち、敷地内型4店舗)、ハイブリッド型12店舗となっており、
4:6と、バランスの良い出店となった。敷地内型については、薬剤師のスキルアップや医療機関との連携強化などの面でのプラス効果の方が調剤報酬でのマイナス影響を上回るとの判断から、チャンスがあれば積極的に取り組むとの姿勢で臨んでいる。
地域的には、2020年3月期第2四半期は半数近い9店舗を関東に、4店舗を関西・北陸に、それぞれ出店した。611店舗全体の内訳としては、関東が301店舗と半数近くを占め、それ以外は各地域にバランスよく展開する状況となっている。人口構成比との比較では関西地域に拡大余地がある印象だ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
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