サイバーコム Research Memo(9):新技術・新分野で高付加価値ビジネスを展開、2019年まで増収増益を継続
1. 中長期経営方針
サイバーコム<3852>は、長期計画で「サイバーコムテクノロジーで社会に貢献する」という方針と、2017年から2019年までの中期経営方針『サイバーコムビジョン2020』を掲げている。それによると、2019年までの3年間を増収増益で継続する、としている。
基本方針には後述の4項目を掲げており、2017年12月期の決算説明会にて具体的戦略等が発表された。事業拡大が安定的かつ継続的なものとなってきており、成長ステージの新たな段階にいる同社として、その企業文化を体現した堅実な方針・戦略と言えるだろう。また、発展成長していくために、同社は「人財の育成と確保」、及び「自社プロダクトの成長・販売拡大」に注力して積極的投資を行っていくとしている。IT業界では人手不足が逼迫(ひっぱく)してきており、労働環境の改善・働き方改革や研修制度の拡充などの「ヒト」への投資は重要である。また同社は、受託開発中心の事業から、自社プロダクトを確立・成長させていくことが「モノ」への投資として、長期的に重要と判断している。ただし、同社は顧客企業やパートナーとの信頼関係を重要視しており、自社プロダクト開発においても、世の中のニーズをくみ取り、カスタマイズを含めて対応していくところが同社の強みとしている。したがって、自社プロダクト事業も全体の事業構成のバランスを見ながら、長期的な対応で臨むこととなるだろう。なお、2019年12月期第2四半期を終え、進捗状況は計画どおりで極めて順調であり、特に変更はない。
(1) お客様満足度、社員満足度の向上
同社の行動指針として「サイバーコム7ヶ条」というものがある。これは「相手目線になって」ということをうたっており、顧客目線・従業員目線でともに満足を得ることを旨としている。
(2) 4エンジン(ソフトウェアエンジン、サービスエンジン、営業エンジン、管理エンジン)のパワーアップ
同社のすべての従業員が、ソフトウェア開発部門、サービス提供部門、営業部門、管理部門のいずれかに所属しており、4部門の各々が任された役割をバージョンアップし、会社の総力を向上させていこうというものである。
a) ソフトウェアエンジン:「武器による収益力強化」
b) サービスエンジン: SI「上流工程技術者の増強と技術対応力の強化」「セキュリティソリューションの創出」、プロダクト「サイバーコムモデルの創出」
c) 営業エンジン:「お客様第一主義考動」
d) 管理エンジン:「専門特化組織による現場支援強化」
(3) 安定した利益体質の確立
ソフトウェア開発事業を主力としつつ、今後はサービス事業においても、自社プロダクトを中心として利益源泉に育て、安定した利益体質を確立していこうというものである。
(4) 高付加価値ビジネスの創出
新技術や新分野への進出において、顧客から求められるニーズのみでなく、さらにプラスアルファした提案を行うことにより、高付加価値の事業を創出していこうというものである。
2. 具体的戦略
前述の基本方針に対して、2019年12月期は『「事業基盤の強化!!」~Cyber Com Technologyの創出~』というテーマで、すべての事業基盤をレベルアップ・強化し、サイバーコムテクノロジーを定着・確立させる、ということを掲げている。基本的には、前期で謳っていた「高度化」をさらに前進させるものと考えられ、同社が「これからも市場や社会から必要とされる会社であり続けるために、既存技術の高度化に取り組み、先進技術に挑戦していく」ことで、長期方針である「サイバーコムテクノロジーで社会に貢献する」ことの実現を図るということである。技術は時間とともに陳腐化していくため、絶えず先進技術へ挑戦し続け、更なる成長・発展を目指している。
2019年12月期の重点施策として、同社は以下の4項目を掲げている。
(1) 増収増益の継続
内容的には、「人材確保」、「働き方改革」といった人事・組織関係の施策が中心となっており、従業員を大事にする同社が現在最も注力する施策と言えるだろう。
a) 人材確保
新卒・中途採用の強化施策として、1dayインターンシップ開催や社員紹介制度実施などを実施している。2020年4月新卒者を約100名、中途採用では年間60名程度を目標としているとのことである。また、パートナー各社とのリレーション強化・新規開拓の施策として、パートナー各社の新入社員の受入・教育や感謝会、商談会、定例会などを実施している。
b) 働き方改革
ワークライフバランスの最適化の施策として、残業時間の削減や有給休暇の取得促進、「プレミアムフライデー+One」(毎月最終金曜日の15時退社に加え、続く土日のノー休出デー)の推進、定時退社の推進などを掲げている。さらに、働きやすい環境への推進施策として、在宅勤務・短縮勤務、キャリアアドバイザー制度(入社3年目までの社員をサポート)、全社TV会議接続によるコミュニケーションの円滑化、ポジティブプロジェクト(ポジティブな思考や発言の推奨)、社内表彰制度(全社貢献プロジェクトや営業要員、若手社員などを表彰)などを実施している。
多様な働き方の選択肢を提示し、従業員のモチベーションを喚起することで離職者の削減・定着化を進める同社の方針が表れている。これらの施策によって、同社の離職率はIT業界で一般的と言われている10%を大きく下回っているとのことである。
(2) 事業基盤の強化
事業別に以下の施策を掲げている。
a) ソフトウェア開発事業
「ワンランク上のプロジェクト管理の実践」がテーマで、車載、AI(人工知能)、など成長分野を中心に、プロジェクト管理者教育のレベルアップや、トラブル案件の防止・原価管理の徹底、既存技術の高度化による高収益化、新たな領域(先進技術)への取り組み、などを行うとしている。また、今まで培った通信技術を活かし、5G技術といった高度な通信技術が必要となる自動運転などの成長分野について積極的に受注拡大を図っていくとしている。
b) サービス事業
システムインテグレーションサービスでは、「ワンストップサービスの確立」というテーマで、ICT事業本部で営業要員を擁してネットワーク/サーバの構築・運営・保守・評価検証や自社プロダクトの導入から運用・保守までを一貫してワンストップで対応するなど、顧客対応力を強化している。また、自社プロダクトでは、「競争力強化」というテーマで、「Cyber Smart」シリーズ(Cyber CTI、Cyber IP-PBX、Cyber Phone)の同業他社製品との差別化・競争力強化を図る。
(3) 技術力の向上
ここでは、技術者中心の人財育成の施策を掲げている。新入社員教育の高度化(研修期間の延長やカリキュラムの最適化)や、高度スキル転換技術者などのスペシャリスト人財(専門特化技術者)の増強を実施している。
(4) セキュリティ強化
同社では、レポート末尾記載のとおり、かねてより情報セキュリティについては厳格に管理している。しかし、車載装置や半導体生産装置・医療装置など先端技術の案件が増加するのに伴い、ソフトウェア開発の現場や関係オフィスではより高度なセキュリティ環境が要求されることとなっている。そこで、開発現場の高セキュリティ化施策として、クリーンルームの増設、セキュリティログ監視強化、システムによる記憶媒体の利用制限強化などを実施している。また、外部からの脅威をブロックするサイバーセキュリティ対策強化の施策として、高機能ファイアウォールの厳格運用、メールフィルタリング強化、エンドポイントセキュリティ強化などを実施している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 山田秀樹)
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