1. 会社概要
テクマトリックス<3762>は、ニチメン(株)(現 双日<2768>)の営業部門の戦略子会社として設立されたニチメンデータシステム(株)が前身である。このため、技術・ビジネスの両面で優れた製品・サービスを発掘する“目利き力”及び“マーケティング力”、レベルの高い“ビジネスオペレーション力”といった商社で培われたノウハウを受け継ぎ、事業展開を進めていることが最大の強みであり特徴となっている。
連結対象子会社としては、医療分野において遠隔画像診断のインフラサービスを提供する(同)医知悟(いちご)、ネットワークやサーバの運用・監視及びネットワークエンジニアの派遣、IT製品の輸入・販売・サポートを行うクロス・ヘッド(株)、その子会社となる沖縄クロス・ヘッド(株)、システム開発やIT技術者の教育サービス等を手掛ける(株)カサレアルの4社に加えて、2018年4月に医療情報クラウドサービス「NOBORI」を提供する医療システム事業部を(株)NOBORIに分社化している。(株)NOBORIに関しては三井物産が33.34%を出資しており、開発面や営業面で連携を図りながら医療分野での事業を拡大していく戦略となっている。
2. 沿革
同社の創業は1984年8月で、ニチメン(現 双日)の営業部門の戦略子会社として発足した。1990年10月に受託開発事業に本格参入し、某大手都銀より為替ディーリングシステムを受注、金融分野での事業開拓の第一歩を踏み出す。1996年12月には業務パッケージ事業にも参入し、自社開発品となるCRMパッケージ「FastHelp」の販売を開始したほか、1998年10月には自社開発品のDICOM※対応医用画像サーバ「Secured DICOM Server(現SDS Image Server)」の販売を開始するなど、アプリケーション・サービス事業にも領域を拡大していった。
※Digital Imaging and COmmunications in Medicineの略で、CTやMRI、CRなどで撮影した医用画像のフォーマットと、それらを扱う医用画像機器間の通信プロトコルを定義した世界標準規格。
また、2005年2月にはJASDAQ市場に株式を上場し、現在は東証第1部指定。上場で調達した資金を使ってM&Aを推進、事業基盤の拡充を図っている。具体的には、2007年8月に医療分野の子会社として医知悟を設立したほか、2008年1月にクロス・ヘッドを連結子会社化、2009年8月にカサレアルを完全子会社化、2014年3月にはクロス・ヘッド、沖縄クロス・ヘッドを完全子会社化している。また、CRM分野での海外展開強化を目的に、2018年4月にタイのバンコクに駐在員事務所を設立している。
3. 事業内容
同社の事業は、ネットワーク及びセキュリティシステムの構築、保守、運用・監視サービスを展開する情報基盤事業と、医療分野やCRM分野等の業界及び業務特化型ソリューションサービスを展開するアプリケーション・サービス事業の2つのセグメントで構成される。直近3年間の事業構成比では、情報基盤事業が売上高で66~67%、営業利益で80%以上を占めている。また、営業利益率では情報基盤事業が8~9%台であるのに対して、アプリケーション・サービス事業が5%以下と低くなっている。これはアプリケーション事業で展開するクラウドサービス等の投資負担が重いことが主因で、償却前営業利益率で見れば両事業とも2018年3月期は12%台とほぼ同水準となっている。今後はクラウドサービス事業の成長とともにアプリケーション・サービス事業の収益性がさらに向上し、中期経営計画の最終年度となる2021年3月期には営業利益率で10.0%と情報基盤事業(9.5%)を上回る見通しとなっている。各事業の内容は以下のとおり。
(1) 情報基盤事業
情報基盤事業では、ネットワーク及びセキュリティ分野において独自の目利き力を生かし、北米を中心にニッチながらも高い技術力、競争力、成長力を持つ製品を見極め、単なる製品販売にとどまらずシステム構築から保守サポート、運用・監視サービスに至るまでワンストップ・ソリューションでサービスを提供している。
主に、仮想化ソリューション※1、次世代ネットワーク、セキュリティ、ストレージ等の分野を対象としており、主要取扱製品にはF5 Networks
※1 コンピュータシステムを構成する資源(サーバ、ストレージ、ソフトウェア等)に関する技術。複数から構成されるものを論理的に1つのもののように見せかけて利用したり、逆に1つのものを論理的に複数に見せかけて利用できる技術。
※2 Webサイトへのアクセス集中による反応の低下やシステムダウンを防止するため、多数のアクセス(負荷)が収集した場合に適切に複数のサーバに振り分ける(分散する)装置。
また、同社では先進的な技術を持つ製品や成長力があると判断した製品は、積極的に取扱商品としてラインアップしている。2017年2月に代理店契約を結んだCylance Inc.の次世代アンチウイルス製品「CylancePROTECT®」もその1つで、AI技術を活用することで未知のマルウェア※でも高確率で検出することを可能にした製品で、ここ最近のIT業界で最も急成長した製品の1つとして知られている。
※マルウェア対策ソフトで検出されないよう意図して開発された新種や亜種のマルウェア。マルウェアとは無害を装ってパソコンに感染するコンピュータウイルスの総称。
販売先の売上構成比は、民間企業向けが約7割、官公庁・地方公共団体向けが約3割となっている。民間企業の中には通信事業者やデータセンター事業者等のITサービス企業も含まれている。ネットワーク及びセキュリティ関連製品は、情報セキュリティへの関心が高まるなか市場が年々拡大しており参入企業も多いが、同社は高い技術力に加えて、24時間365日の保守サポート体制、有人による運用・監視サービスなど、ワンストップで高品質なサービスを提供できる総合力を強みとして民需、官需問わず、幅広い顧客層において実績を積み上げている。
連結子会社のクロス・ヘッド及び沖縄クロス・ヘッドは、ネットワークやサーバの運用・監視のほか、ネットワークエンジニアの派遣、セキュリティ製品やストレージ製品の販売等を行っているほか、ここ最近ではクラウドサービスの導入支援サービスにも注力している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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