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CANBAS Research Memo(5):わかりやすい「経営理念と使命」で事業経営をマネジメント


■今後の見通し

1. 経営理念と事業方針
キャンバス<4575>は、「より良い抗がん剤を一日も早く患者さんにお届けする」を事業目標に、「フェアであること」、「科学的・倫理的・経済的に正しい道を最短の距離・時間で進むこと」を企業理念とし、健全なコーポレート・ガバナンス及びコンプライアンスを推進している。

また、同社の創薬事業は、「細胞周期に関する基礎研究の成果をもとに、正常細胞に影響が少ない抗がん剤の開発」を目指している。正常細胞に影響が少ない抗がん剤を創出することが企業価値・株主価値の向上を導き、その結果、さらに良い抗がん剤の開発が可能と考えている。

2. 中長期経営戦略
がん細胞の細胞周期(細胞分裂に至る過程)が正常細胞と異なることに着目する独特の創薬アプローチを生かした抗がん剤の基礎研究、臨床開発及び臨床試験に取り組んでいる。特定領域に絞り込んだ創薬を独自の創薬基盤技術をもとに実施することで技術とプロダクトの両方を自社で創出するのが「創薬企業」であり、創薬プラットフォームを持たず開発途上の化合物を外部から導入して一定の開発ののち製薬企業へ導出する企業とは大きく異なるビジネスモデルを志向している。

この付加価値の高いビジネスモデルを完成させ、企業価値の最大化を図るための、経営戦略は次のとおり。

(1) 独自の創薬アプローチを活かした研究開発に特化集中
(2) 細胞表現型薬剤スクリーニング法により創出した複数の医薬品候補化合物によって、複数同時の開発パイプラインを構築
(3) 抗がん剤の開発経験が豊富で開発戦略に合致するCRO等の外部専門機関、科学顧問団を活用
(4) 権利を最大限確保するため、財務体力に応じた適切な戦略提携を製薬企業等との間で行うことで価値連鎖を補完

上記の経営戦略を適切に実行することにより、抗がん剤候補化合物(CBP501など)の開発を速やかに進め、いち早く上市して企業価値を高めるとともに、開発リスク分散を図る。

3. 中長期経営戦略推進のための重要経営課題
(1) CBP501の臨床試験推進と提携パートナーの獲得
(2) CBS9106(Stemlineへライセンス導出済み)の臨床試験の推進
(3) 創薬エンジンの改良・充実と新規化合物パイプライン獲得
(4) 開発戦略推進のための資金調達

開発プロジェクトの進展及び開発ポートフォリオの拡充に伴い増加する資金需要に対応するため、さらには抗がん剤の開発体制の強化のため、プロジェクトごとに製薬企業との戦略提携を目指すとともに、必要に応じて適切な時期に第三者割当増資や新株発行等による効率的資金調達を推進する。

4. 開発パイプライン
CBP501は昨年4月臨床第1b相試験(用量漸増相)を開始し、予定通り進捗している。拡大相の対象がん腫も「すい臓がん」、「直腸がん大腸がん」に決定し(10月11日発表)、早ければ2018年内には拡大相の組み入れ開始を予定している。また、Stemlineへライセンス導出したCBS9106も、固形がんを対象とした臨床第1相試験が進行しており、10月に開催された世界的に著名な欧州臨床腫瘍学会の年次会議(ESMO2018)へ途中経過報告され、順調に推移している。

創業以来、CBP501の最適化や臨床試験で取り組んだことにより、色々なノウハウが蓄積された。そのノウハウを活用して、開発されたのが、CBP-Aシリーズ、CBP-Bシリーズである。CBP-AはCBP501の発展型で、CBP-Bとともにペプチド型の免疫系抗がん剤候補である。

IDO/TDO阻害剤は、免疫系抗がん剤候補として有望な標的分子であるIDO/TDOをターゲットとする化合物である。静岡県立大教授が以前から研究していたテーマで同社もこのテーマは興味を持っており、2016年6月から共同研究を推進している。免疫チェックポイント抗体(PD-1、PD-L1など)と同じ「免疫系抗がん剤」のカテゴリーに属し、低分子化合物免疫系抗がん剤(低コスト品)候補としても注目されている。

また、2017年6月富士フイルム<4901>とペプチドなど中分子医薬品分野での免疫系抗がん剤の共同研究契約を締結した。現在は対象を絞り研究に取り組んでおり、「最適化」フェーズへ移行も間近い。

5. 組織と人材
同社は各種の基礎研究、CBP501臨床試験並びに5つの開発パイプラインに取り組んでいるが、組織構成は13名の少数精鋭による創薬バイオベンチャー体制を取っている。企業経営では、エグゼクティブボード(取締役7名(うち監査等委員4名))のほか、外部に前述の科学顧問2名、ライセンシング関連の外部アドバイザーなど、外部エキスパート人材を有効活用しているのがベンチャー企業らしい。また、研究開発の現場で特筆すべきは、米国FDA下での臨床試験をなんと2名で対応している。こういう状況を知ると、“13名全員がキーマンであり、ヒーロー”であるという経営トップの言葉に重みを感じる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)



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