明光ネット Research Memo(4):豊富な手元キャッシュと実質無借金経営が続いており財務内容は健全
2. 事業セグメント別動向
(1) 明光義塾直営事業
明光ネットワークジャパン<4668>の明光義塾直営事業の売上高は前年同期比5.8%減の6,446百万円、セグメント利益は同54.8%減の265百万円となった。生徒数減少による売上減に加えて、広告宣伝費やICTコンテンツの拡充などの戦略的先行投資の増加が減益要因となった。
このうち、同社直営事業の売上高は同7.3%減の4,445百万円、営業利益は同48.5%減の324百万円となり、子会社の(株)MAXISエデュケーション(以下、MAXIS)の売上高は同2.5%減の2,000百万円、営業利益は同18.5%減の53百万円となった(のれん償却費は107百万円)。各種指標を見ると、同社直営教室における当第3四半期末の教室数は前年同期末1教室増の234教室、在籍生徒数は同6.1%減の13,936人、教室当たり生徒数は同6.5%減の59.6人となり、MAXISは教室数が前年同期末比2教室減の93教室、在籍生徒数が同4.0%減の5,618人、教室当たり生徒数が同1.9%減の60.4人となった。いずれも前年割れが続いているが、生徒当たり売上単価の前年同期比伸び率で見ると、当第3四半期は同社直営事業が1.1%増と6四半期ぶりにプラスに転じたほか、MAXISも2.8%増と3四半期連続でプラスとなるなど改善傾向が見えている。
(2) 明光義塾フランチャイズ事業
明光義塾フランチャイズ事業の売上高は前年同期比5.7%減の3,829百万円、セグメント利益は同40.5%減の1,115百万円となった。前述したとおり、2018年春より新学習指導法となる「MEIKO式コーチング」や「明光eポ」及び小中学生向け英語コンテンツを本格導入するに当たって研修会等を実施したほか、生徒募集活動施策の一環として直営教室との合同でのカウンセリングトレーニング等を実施した。ただ、これら取り組みの効果が顕在化するのはまだ先で、生徒数の減少に伴うロイヤルティ売上高の減少、並びに広告宣伝費等の戦略的先行投資費用の増加が減益要因となった。
各種指標を見ると、当第3四半期末における教室数は前年同期比42教室減の1,705教室、平均在籍生徒数は同6.5%減の83,091人、1教室当たり平均生徒数が同4.2%減の48.7人といずれも減少した。生徒数の減少により不採算となっている教室のスクラップ&ビルドを進めており、教室数についてはしばらく減少が続くものと見られる。ただ、当第3四半期における生徒当たり売上単価については、前年同期比2.9%増と10四半期ぶりにプラスに転じるなど明るい兆しも見え始めている。
(3) 予備校事業
連結子会社の(株)東京医進学院による予備校事業は、売上高が前年同期比25.0%減の313百万円、セグメント損失が36百万円(前年同期は42百万円の営業利益)となった。医科系予備校についても生徒獲得競争が激化するなかで、2018年春の新規入学者数が前年を下回り、当第3四半期末の在籍生徒数が前年同期比24.0%減の79名と減少したことが収益悪化要因となった。
(4) その他事業
その他事業の売上高は前年同期比10.4%増の2,984百万円、セグメント利益は同38.8%増の211百万円となった。増収増益に貢献した事業としてはキッズ事業や日本語学校事業等の事業が挙げられ、2ケタ増収と順調に拡大している。
日本語学校事業の業績は、売上高で前年同期比約1割増の981百万円、営業利益で約2割増の63百万円となった。当第3四半期末の在籍生徒数は「早稲田EDU日本語学校」(1校)で前年同期末比0.8%減の515人(定員数710人)、「JCLI日本語学校」(3校)で同3.3%減の906人(定員数1,380人)、合計で同2.4%減の1,421人となった。子会社化以降、初めて減少に転じたことになるが、これは3月の卒業生徒数が例年よりも多かったことが要因。日本語学校では1月、4月、7月、10月と年4回の入学月があるのに対して卒業月は3月のみとなっており、7月の入学申請者数については好調に推移していることから、期末時点では増加に転じる可能性が高いと弊社では見ている。なお、「JCLI日本語学校」については、2018年10月に校舎移転を予定している。
早稲田アカデミー個別進学館事業の売上高は前年同期比4%増の365百万円、営業損失は21百万円(前年同期は14百万円の損失)となった。生徒数の増加により増収となったが、直営校を1校新設したことによる固定費増が減益要因となった。当第3四半期末の校舎数は前年同期比3校増の35校となり、内訳は同社直営校(MAXIS含む)が1校増の12校、FC校が2校増の12校、早稲田アカデミー直営校は横ばいの11校となっている。また、在籍生徒数は全校舎で同7.8%増の2,211人と着実に増加している。難関中学・高校への合格者数の増加により、個別指導進学塾としての認知度が向上してきたことが要因と見られる。
キッズ事業の売上高は前年同期比3割増の205百万円となり、営業損失も4百万円と赤字縮小傾向が続いた。直営の学童保育事業となる「明光キッズ」は7スクールと前年同期末比横ばいだったが、旺盛な需要を背景に各スクールで生徒数が増加傾向にある。そのほか、学童クラブは同横ばいの1施設、運営受託施設数は同4施設増加の11施設となり、在籍スクール生は合計で同14.5%増の969人となった。運営受託施設としては2018年4月以降、私立浦和ルーテル学院小学校(埼玉県さいたま市)の学校内学童保育の運営受託、学校法人前島学園さきとり幼稚園(神奈川県平塚市)での「さきとりキッズスクール」運営受託、日本総合住生活(株)との連携によるアフタースクール「J Smile Kids」の運営を開始しており、運営受託事業の拡大が収益拡大に貢献している。同社では今後も直営の学童保育事業だけでなく、運営受託事業も拡大していく方針となっている。
明光サッカー事業の売上高は前年同期比6%減の104百万円、営業利益は1百万円(前年同期は4百万円の損失)となった。当第3四半期末のスクール数は前年同期末比1スクール減の13スクール(うち、直営12スクール)、生徒数は同11.9%減の850人となった。既存校における収益力強化を目的に、スクールの運営体制の見直しを行った。具体的には、世界を目指すための本格的な技術の習得を目的としたスクールと、実践的なスキルを習得しながらサッカーが上手くなる楽しさを提供するスクールというように、各スクールで指導方針を明確に分けて運営を行うようにした。
その他の連結子会社の動向について見ると、古藤事務所では大学入試問題ソリューション業務が順調に拡大しており、ユーデックでは入試問題ソリューション業務、学内予備校、進学模試等のサービス業務が好調に推移した。また、晃洋書房も新刊発行や再販点数が想定を大きく上回って推移しており、増収増益となっている。
3. 財務状況と経営指標
明光ネットワークジャパン<4668>の2018年8月期第3四半期末の財務状況を見ると、総資産は前期末比811百万円減少の18,502百万円となった。主な増減要因を見ると、流動資産では現預金が2,096百万円減少した。ケイラインの株式取得費用として600百万円を支出したほか、配当金の支払いが減少要因となっている。一方、固定資産ではのれんが前期末比304百万円増加したほか、保有有価証券の時価上昇等により投資有価証券が927百万円増加した。
負債合計は前期末比545百万円減少の4,352百万円となった。流動負債では未払法人税等が874百万円、未払費用が268百万円減少した一方で、前受金が270百万円増加した。また、固定負債では繰延税金負債が271百万円増加した。純資産合計は前期末比266百万円減少の14,150百万円となった。その他有価証券評価差額金が542百万円増加した一方で、利益剰余金が815百万円減少した。
経営指標を見ると、負債の減少により自己資本比率が前期末の74.5%から76.3%に上昇したほか、有利子負債比率も0.5%と実質無借金経営を維持しており、財務内容は健全な状態が続いていると判断される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<TN>
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