ディーエムソリュ Research Memo(4):2018年3月期は広告収入減と先行費用のため一時的に減益未達
1. 2018年3月期の業績動向
ディーエムソリューションズ<6549>の2018年3月期の業績は、売上高10,438百万円(前期比14.3%増)、営業利益171百万円(同34.9%減)、経常利益167百万円(同36.8%減)、当期純利益110百万円(同35.4%減)となった。2017年6月20日公表の業績予想に対して売上高で178百万円の超過達成、営業利益で106百万円、経常利益で103百万円、当期純利益で52百万円の未達となった。ダイレクトメール市場は微減、インターネット広告市場は4年連続で2桁成長で伸びているが、強みを発揮したダイレクトメール事業が収益をけん引したものの、インターネット事業で一部広告収入が減少した上、先行費用が発生したことで利益が未達となった。
ダイレクトメール事業は、売上高9,325百万円(前期比16.9%増)、セグメント利益529百万円(同23.9%増)となった。同社が強みとする、企画制作からデザイン、印刷、封入・封緘作業を一括して手がけるワンストップサービスの提供、郵便やメール便のスケールメリットを生かした提案型営業を積極的に展開、日野フルフィルメントセンター開設を背景に宅配便など小口貨物の取扱い強化も進めた。この結果、新規顧客の開拓と同時に既存顧客からの受注も堅調に増加、取引先数は441社増の3,542社となった。
インターネット事業は、売上高1,113百万円(前期比3.4%減)、セグメント利益92百万円(同41.3%減)となった。同社得意のSEOとコンテンツマーケティングを合わせ、コンサルティング型マーケティングサービスを強化した。しかし、これまで培ったSEOと、WEBサイトのコンテンツ制作のノウハウを生かしたバーティカルメディアサービスにおいて、長雨の影響等もあり主要メディアである「ウォーターサーバー比較」サイトの広告収入が減少した。加えて、同時期に各種の先行投資を行ったこともあり、利益が減益未達となった。
やや保守的な印象の強い2019年3月期会社予想
2. 2019年3月期の業績見通し
2019年3月期業績見通しについて、同社は売上高11,253百万円(前期比7.8%増)、営業利益150百万円(前期比12.1%減)、経常利益150百万円(前期比10.3%減)、当期純利益102百万円(前期比6.7%減)を見込んでいる。同社予想はインターネット事業に関しては2018年3月期後半と同様の、最悪の状況を考慮しての予想と思われ、後述する新宿サテライトオフィスの効果や矢継ぎ早の新サービス投入による改善を織り込んでおらず、やや保守的な印象が強い。
同社は、2018年3月期に引き続き、ダイレクトメール市場の微減とインターネット広告市場の伸長を外部環境の前提にしている。また、インターネット広告市場では、新たな技術やサービスの開発が活発化する一方、検索エンジンのアルゴリズム更新の影響も想定している。このような環境下で、ダイレクトメール事業では、2018年3月期に開設した日野フルフィルメントセンターでのフルフィルメントサービスや、八王子第3ロジスティクスセンターで投資した発送設備より、顧客数や売上が順調に増えていくと想定している。インターネット事業においても、新サービスやメディアの展開に注力し、減益未達であった2017年3月期から持ち直すものの、会社全体としては新たな拠点や設備投資など先行投資に伴う費用負担増を理由に減益予算とした。
しかし、新宿サテライトオフィスの効果は抜群で、応募者数が顕著に増加、そこでの採用者が既にバーティカルメディアサービスなどでパワーを発揮している。また、(株)小学館との提携により運用を行っているサイトが順調に利益をあげる等、新しい施策の成果も着実に出ている。このほかにも、インターネット事業へのてこ入れがいくつか行われている。一例として、広告主と広告媒体をシステム的に連携するASPサービスの、完全成果報酬型広告配信プラットフォーム「D-AP.net」をリリースした。同社基盤の得意先約4,000社に対し、効果的広告配信やダイレクトメール事業との連携へのニーズを掘り起こす方針である。さらに、SNSを通じた成果報酬型インフルエンサーマーケティング「buzzil」をスタートした。業界では珍しい、商品購入など利用実績による課金制度となっている。
一般に3月決算企業の予算策定は2月頃作成される。同社はその頃ちょうど最悪期にあったため、回復を織り込むようなモチベーションにはなかったと考えられる。織り込んだ場合は「楽観的」と批判された可能性もあるからだ。しかし、2019年3月期に入り、バーティカルメディアサービスの状況も改善傾向を示しており、新サービスも動き出した。このようにインターネット事業に回復感が生じていることから、最悪期は脱したと考えられる。
DMとネット広告の融合で中長期的に新たな領域やサービスを創出へ
3. 中長期成長イメージ
設立以来同社は、利益面での紆余曲折はあったが売上げは順調に増加、業容を拡大してきたと言えるだろう。中長期的に、4,000億円と言われるダイレクトメール市場は微減を続けることが予測されているが、広告物が現実に手元に届くというダイレクトメール特有の高い開封率とそれに伴う高い広告効果が期待できるかぎり、市場規模の極端な減少は想像しづらいだろう。また、同社が注力している宅配便等の小型貨物の市場はネット通販市場の拡大に伴い、引き続き拡大を継続すると考えられる。1兆5,000億円と言われるインターネット広告市場については、4年連続で2桁成長となっており、今後も同レベルの成長は期待できるだろうが、新たなサービスが続々開発されては消え、新しい技術を次々取り入れなければ生き残れない厳しい環境も継続すると考えられる。
同社のダイレクトメール事業は、中小案件のシェアを拡大するとともに宅配便等の小型貨物のフルフィルメントも期待できるため、安定的に拡大することが予想される。その一方、機械化により大型案件のシェア、ドメイン拡大で地方でのシェアの拡大も図っていくと考えられる。インターネット事業は、新宿サテライトオフィスに集まる人材をベースに事業としての安定化が図られ、これに「D-AP.net」や「buzzil」など新サービスがオンされる。バーティカルメディアでは比較サイトの横展開が図られ、成長率が引き上げられる可能性があることも念頭に置きたい。さらに、ダイレクトメール事業とインターネット事業を融合することで、新たな事業領域や新たなソリューションサービスを産み出していく可能性もあると考える。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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