タナベ経営 Research Memo(5):19/3期も増収増益基調が続く見通し
1. 2019年3月期の業績見通し
タナベ経営<9644>の2019年3月期の業績見通しは、売上高で前期比2.3%増の9,000百万円、営業利益で同3.6%増の970百万円、経常利益で同2.6%増の990百万円、当期純利益で同0.7%増の680百万円と増収増益基調が続く見通し。引き続き国内の景気回復基調が続くなかで、「ドメイン(事業戦略)×ファンクション(組織戦略)×リージョン(地域戦略)」という観点での「コンサルティング&コングロマリット(C&C)戦略」(コンサルティングのプラットフォーム化)を推進し、多様なコンサルティングニーズを取り込みながら、安定成長を目指していく。
経営コンサルティング事業、SP(セールスプロモーション)コンサルティング事業ともに、付加価値の高いチームコンサルティング契約の伸びを見込んでおり、売上総利益率は前期比1.1ポイント上昇の46.4%となる見通し。一方、販管費については新人事制度及び賃金制度の導入、並びにコンサルタント人員の増加(前期末比33名増加の251名)による人件費増や人材採用費・募集費等の増加を主因として前期比5.0%増加し、販管費率も同0.9ポイントの上昇を見込んでいる。営業利益率は売上総利益率の向上により、前期比0.2ポイント上昇の10.8%となる見通しだ。
なお、上期計画で営業利益が前年同期比22.7%減と減益計画となっているが、これは人材採用・募集費が上期に集中するほか、東京本社を中心に労働環境の改善を目的としたオフィスのリニューアル投資等の費用増を見込んでいることが要因となっている。
2.事業セグメント別見通し
(1) 経営コンサルティング事業
2019年3月期の売上高は前期比2.5%増の5,150百万円、セグメント利益は同1.4%増の1,355百万円となる見通し。「経営コンサルティング」の付加価値向上と契約数増加により増収増益を見込んでいる。営業利益率が若干低下するのはコンサルタントの増員による人件費増を見込んでいることが主因。2019年3月期末のコンサルタント人員(経営コンサルタント、人材開発コンサルタント)は、前期末比26名増の186名を計画している(新卒で採用したコンサルタント候補16名含む)。当期より取り組んでいく事業戦略は以下のとおり。
a) ドメイン・ファンクションコンサルティング
ドメイン(事業領域・業種別)・ファンクション(組織・経営テーマ別)コンサルティングでは、全国10拠点に事業所を展開し、多様なコンサルティングサービスを均質に提供できるというほかにはない強みを生かして、地域企業のコンサルティングニーズの取り込みに注力していく。「戦略ドメイン&ファンクション研究会」では、スクラップ&ビルドも進めながら現在の25テーマから2019年3月期中に30テーマまで拡充していく計画となっている。既に「アパレル、採用、生産性カイカク、100年経営、アカデミー(人材開発)、ステージアップ、プロモーション」等のテーマは確定しており、研究会の拡充によって見込み顧客を集客し、チームコンサルティング契約につなげていく戦略である。また、今後も新規研究会の創造を推進すると共に、これら各研究会から専門コンサルティングチームを組成して大阪本社・東京本社へ設置することにより、全国津々浦々の顧客へ専門性の高い価値を提供できる体制の構築を目指している。
b) 人材開発コンサルティング
人材開発コンサルティングでは、「ファーストコールカンパニー(FCC)」を志す企業向けの学びのプラットフォームとして、「FCCアカデミー(企業内大学)」コンセプトを推進する。教育体系の構築や教育コンテンツの開発、社内講師プロデュース等により企業内大学設立を支援する「コンサルティング」、デジタル機器を使って場所と時間を選ばない学習環境を提供する「クラウド」、セミナーやオーダーメイド研修を提供する「リアル」の3つのサービスを提供することで、企業の人材開発ニーズに対して、ワンストップでトータル支援していく。人材開発に関するサービスでは、様々な企業がeラーニングやタレントマネジメントシステムを提供しているが、いずれも一部のサービスのみであり、企業の人材開発にトータルで対応できる企業は少なく、同社の強みとなっている。
クラウドサービスそのものは、年間利用料で約数千円/IDと廉価な設定のため収益への貢献度は小さいものの、前段階となる「コンサルティング」や導入後の「リアル」のコンサルティングサービスも含めれば売上規模も大きくなるため、今後の収益貢献期待は大きい。2018年3月期末で導入社数は約50社と順調に増加しており、2020年までに100社への導入を同社では目指している。現在、導入している企業は中堅企業が多くなっているが、今後は大企業へも推進していく方針である。また、業種別では建設や食品、ヘルスケア関連企業(調剤薬局等)で導入が進んでいる。約50社の導入事例に関しては、2019年3月期に新設する研究会のプログラムに取り込んでいく予定となっており、将来的には業種別で導入企業同士が繋がるオープンプラットフォームの構築も検討している。
c) アライアンスコンサルティング
アライアンスコンサルティングでは、全国の金融機関約100先とのアライアンスを通じて、従来の金融機関向けコンサルティングに加えて、アライアンス先の顧客約7,000社(主に中小企業)を対象とした「ステージアップコンサルティング」、アライアンス先と協働する「M&Aコンサルティング」のメニューを新たに体系化し、注力していく方針となっている。
「ステージアップコンサルティング」では、売上高1億円、3億円、5億円、10億円といった各ステージの壁を超えていくために必要なコンサルティングを提供していく。また、見込み顧客を抽出するための取り組みとして、自社Webサイト上で簡易診断サービスも2018年4月より開始している。具体的には、組織人事診断やブランドサーベイ、Web診断など企業が自社の状況を把握するための簡易な診断サービスを行い、同結果からコンサルティングニーズを吸い上げ、コンサルティング提案に結び付けていく。これまでは、主に中堅企業向けにコンサルティングを提供してきた同社であるが、スタートアップ・中小企業向けにも裾野を広げ、コンサルティングメニューを強化していく方針である。
「M&Aコンサルティング」では、成長のためのM&Aを指向している企業(買い手)に対して、アライアンス先とも連携しながら候補案件を紹介していく。従来も個別では実施していたがニーズが旺盛なこともあり、「M&Aアライアンス」を組織化し、サービスメニューを明確化して提供していくことになる。対象は中堅企業となり、2019年3月期は年間で数件程度の成約を目指している。
(2) SP(セールスプロモーション)コンサルティング事業
2019年3月期の売上高は前期比2.0%増の3,850百万円、セグメント利益は同3.6%増の210百万円となる見通し。「セールスプロモーション・Webプロモーションコンサルティング」や「SPデザイン」の提案を強化し、付加価値向上と契約数の増加により増収増益を目指していく。コンサルタント人員については2019年3月期末で前期末比7名増の65名を計画している。なお、ダイアリーの売上については前期比横ばい水準で見込んでいる。
当期より取り組む事業戦略としては、ドメイン(業種)・ファンクション(プロモーションテーマ)という観点で専門性を高めていくと同時に、業務プロセスの見直しによりチームSPコンサルティングを推進できる組織を構築していく。また、最適なWebプロモーションの推進やSPデザインの大型受注獲得にも注力し、顧客の販売促進をワンストップでトータル支援していく。また、営業エリアを従来の主要4拠点(大阪本社、東京本社、中部本部、九州本部)から全国の支社へも広げていく計画となっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<TN>
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