スターティアH Research Memo(4):国内3事業会社・海外1事業会社の成長を通じてグループ全体の成長を目指す
1. 持株会社への移行と新たな事業体制の構築
スターティアホールディングス<3393>は2018年4月1日より持株会社体制へ移行した。その狙い、目的について同社は、「IT業界における時代の変化に乗り遅れることなく、最新の技術を見据え、迅速な意思決定並びに経営を推進していくため」としている
それを実践すべく、同社は事業構造の改革を行い、国内事業会社3社とアジア事業統括会社1社の中核4社で事業を展開する体制へと転換した。具体的には、同社自身はスターティアホールディングス株式会社に社名変更し、完全持株会社としてグループ全体を統括することに専念する。その下にITインフラ関連事業を担当するスターティア(事業会社として新たに設立)、デジタルマーケティング関連事業を担当するスターティアラボ、クラウドストレージ事業とRPA事業を担当するスターティアレイズ(新規に設立)、海外事業を担当するStartia Asia (シンガポール法人として新規設立)の4社及びそのグループ企業という構図だ。この体制変更に伴い、今後はこれら4つの主要事業会社を軸に、それぞれが収益拡大を目指すことでグループ全体の成長を追求していくことになる。
「カスタマー1st」の更なる充実と、“ビジ助”を核とするストック収入の増大で成長を目指す
2. スターティア
スターティア(事業会社としての新会社)はITインフラ関連事業を担うことになる。後述するスターティアレイズの設立に伴い、クラウドストレージサービス事業(商材としては“セキュアSAMBA”)がこれまでのITインフラ関連事業から分離することになるが、主力の商材はこれまでどおり、MFPの販売及びそれに付随するカウンターサービスや、スターティア光、ネットワーク機器、ビジネスホンの販売などであり、収益構造は基本的に従来から変更はないとみられる。
それゆえ、スターティアの成長戦略もこれまでの施策を引き継いだものとなるとみられる。すなわち、「カスタマー1st」の徹底による顧客満足度の向上と、それをサポートとして“重ね売り”の拡大、すなわち顧客1社当たりのLTV(ライフタイムバリュー)の極大化だ。
もう1つの成長戦略は、収益の安定化を目指したストック収入拡大の取り組みだ。これについては同社が2018年1月に導入した新商材“ビジ助”が核になると考えられる。ビジ助はITインフラ関連事業とデジタルマーケティング関連事業のセグメントの垣根をまたいで、同社の幅広い商品を包括的に低価格で利用できる点が最大のセールスポイントとなっている。顧客からは利便性が高まり、同社からは2つのセグメントのシナジー実現というメリットがある。
2019年3月期以降は、情報システム拡充による営業力の強化とも合わせ、「カスタマー1st」の徹底とビジ助の拡販に取り組み、収益拡大を目指す方針だ。
COCOARとBow Nowを核に、それぞれの機能性の高さを生かして積極的に拡販を推進
3. スターティアラボ
スターティアラボはこれまでどおり、デジタルマーケティング関連事業の事業主体として成長を目指すことになる。今回の持株会社体制への移行に関連して、Webプロモーション事業を新設子会社のMtameに切り出すが、スターティアラボ・グループとして考えれば従来と大きく変わるところはないと言える。
デジタルマーケティング関連事業は、顧客層がそれまでのアーリーアダプタ層(新製品に対して導入意欲の強い層)からマジョリティ層(新製品に対する導入意欲が平均的)へと切り替わる過程で販売が伸び悩み、2016年3月期から業績の低迷期に入った。こうした状況を打破すべく、同社は販売戦略を大きく転換し、各種ソフトウェアの提供方式をクラウド主体へと切り替えた。併せて各ソフトウェアをグルーピングし、ソフトウェア製品群を「Cloud Circus」(クラウドサーカス)としてブランディングし、パッケージとしてクラウドで提供する仕組みも導入した。
さらに同社は、2018年3月期からフリーミアムの導入に踏み切った。フリーミアムとは基本的な機能は無料で提供し、一定量を超えた部分や特別な機能については、従量制や追加料金の形で課金するビジネスモデルのことを言う。オンラインゲームのF2P(フリー・トウ・プレイ)に近いモデルと言える。このフリーミアムは、スマホ用ランディングページサイト制作用ソフトの「クリカ」を皮切りに、アプリ制作ソフト“App Goose”(アップグース)、Bow Nowと順次提供商品を拡大しながら現在に至っている。
前述のように2018年3月期決算においてデジタルマーケティング関連事業の業績は増収・利益黒字転換を果たした。利益の水準は過去のピークに比べるとまだ低水準であるが、顧客層が切り替わったなかで黒字化を実現した意義は大きいと弊社では考えている。また、フリーミアムという新たな営業モデルを導入し、Bow Nowが「フリーミアム⇒有料会員化」の流れを実証して収益拡大に貢献したことも同様に意義深い。
現在までのところ、デジタルマーケティング関連事業は電子ブックのActiBookと合わせて3つの核となる商材を手中にしたことになる。今後特に期待が大きいのはCOCOARとBow Nowだ。COCOARについては、ARとキャラクターとリアルゲームの取り組みを強化し、COCOARのアクティブユーザー数を増加させることで収益拡大につなげる計画だ。Bow Nowについては、フリーミアム戦略を継続して有料顧客数の拡大に努める一方、コストパフォーマンスの高さを糸口に、中小企業への拡販を積極化させる方針だ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
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