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エレマテック Research Memo(4):“グローバルに高付加価値ビジネスを提供し続ける電子材料商社”が目指す姿


■中長期の成長戦略と進捗状況

1. 中長期戦略『elematec ×(エレマテック・クロス)』の概要
エレマテック<2715>は期間固定式の中期経営計画は策定していないが、中長期戦略に関する取り組みについての基本方針を策定し、それに基づいて経営を進めている。2018年3月期からはスローガンを『elematec ×(エレマテック・クロス)』に改めた。これは従来のスローガンである『elematec +(エレマテック・プラス)』に比してシナジー追求を一段と加速させることや、“×”が“駆ける”にも通じることでスピード感を強調する意図が込められている。

同社が『elematec ×』を通じて目指す将来像は、“グローバルに高付加価値ビジネスを提供し続ける電子材料商社”だ。それに向けての具体的な取り組みのテーマとして、1)真のグローバル化、2)付加価値創造、3)経営基盤の強化、の3点を掲げている。

業績計画については、同社は毎年、期初において当該年度と2年後の業績予想を公表している。いわゆるローリング中期経営計画と似たスタイルだ。2019年3月期の開始に当たっては、当期業績予想とともに2021年3月期の業績予想を公表した。中期予想では、2021年3月期においては売上高2,500億円、経常利益80億円を達成し、過去最高益の更新を目指すとしている。


真のグローバル化、付加価値創造、経営基盤の強化、の3つの取り組みが、それぞれ着実に進捗
2. 中長期戦略の進捗状況
(1) 『真のグローバル化』の取り組みと進捗
このテーマの具体的な目標は、グローバルダイレクトアカウント化の推進だ。これまでの同社の海外取引は、日系のデバイスメーカーや電子部品メーカーに電子材料等の部材を供給し、そこで作られた部材が海外のアセンブラーや最終製品メーカーに販売されるという流れが主体であった。すなわち海外企業と直接取引は限定的であった。グローバルダイレクトアカウント化とは、海外のアセンブラーや最終製品メーカーに自社アカウントを開設し、直接取引を行おうということだ。

同社が真のグローバル化に取り組む背景には、同社の直接の顧客である日系エレクトロニクスメーカーの相対的な地位の低下がある。スマートフォンを例に取っても、世界的市場では言うまでもなく、国内市場においてさえ、十分な存在感をもって事業を展開しているところはない状況だ。また、AutomotiveやBroad Marketの分野でも顧客は世界中に存在しており、Digital Electronics同様、グローバルダイレクトアカウント化はこれらの分野においても避けて通れない。こうした危機感が真のグローバル化に取り組む大きな動機付けになっている。

これまでの進捗としては、欧州のTier1メーカーとの間で自動車向け商材の取引を開始したことがある。現状は一部の製品にとどまっているが、取引額が着実に増加してきているもようだ。また、体制整備の観点から海外拠点の設置や現地スタッフの育成強化にも注力している。最近の具体例としては、米ヒューストンの事務所開設がある。こうした地道な取り組みや欧州での成功事例が新たな顧客との取引に波及・拡大していくものと期待される。

(2) 『付加価値創造』の取り組みと進捗
付加価値は顧客と自社の双方にメリットをもたらして初めて付加価値たり得る。それゆえ付加価値創造は事業拡大にもつながると期待される。付加価値創造を具体的に表現する一つとして同社は、モジュール化の取り組みを挙げている。

付加価値創造のプロセスは、顧客のニーズを的確に把握することからスタートする。顧客のエレクトロニクス、メカトロニクス、外装、デザインなど多岐にわたる様々なニーズに対して、同社は国内外7,200社の仕入先の中から最適な商材を探索し、あるいはニーズに見合う製品を企画・設計・試作を行い、顧客のニーズに合ったソリューションを提案していくという流れだ。

同社の提案(製品)が採用されれば、同社はモジュール化された製品を納入することになり、素材・パーツとして販売するよりも高い収益性を期待できる。一連のプロセスの最初の部分に当たる顧客ニーズの把握は、顧客自身の開発段階から入り込む、いわゆるスペック・インという形で入り込むことが重要になってくる。この点、これまでもスペック・イン商材は数多く取り扱っているが、これをもっと増やしていくことが重要になると考えられる。

これまでの進捗状況としては、企画・設計・開発に直接携わる技術グループにおける人員強化がある。これにより、顧客ニーズの把握力や試作機能が拡充された。また、AutomotiveやBroad Marketにおけるスペック・イン活動も着実に拡大しつつあるようだ。これらの分野はDigital Electronicsに比べてスペック・イン活動とフィットしやすいため、今後、実取引へ進展していくことが期待される。

(3) 『経営基盤の強化』の取り組みと進捗
先の2つが収益の成長を目指す取り組みであるのに対して、経営基盤の強化という取り組みは、自身の体制強化の取り組みだ。しかしながら、例えば真のグローバル化で掲げるグローバルダイレクトアカウント化を実現していく上では、自社の信頼性や信用度をきちんとしておく必要があることは言うまでもない。また、商社ビジネスは本質的に、カウンターパーティ・リスクを初めとして大小のリスクは避けられない。したがって、同社が掲げる『経営基盤の強化』というテーマは、アスリートにとっての体幹トレーニングのように、目立たないが成長戦略の一角を担う重要な取り組みと言えるだろう。

同社は2017年3月期において中国での建材事業に関連して約30億円の特別損失を計上した。同社はこれを契機に、リスクマネジメント機能や海外拠点のガバナンスの強化に、人員増も含めて大きな投資を行った。前述のように商社ビジネスは常にリスクをはらんでいるため、これらの点に関して“完全”や“ゴール”はない。しかし前期の苦い経験を生かして中長期戦略に不可欠な体制を整備したことで、経営基盤の強化もまた順調に進捗していると評価できるだろう。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)



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