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ラクオリア創薬 Research Memo(8):新規化合物「P2X7受容体拮抗薬」のライセンスアウトを発表


■共同研究プログラムの進捗状況

ラクオリア創薬<4579>は創薬ベンチャーとして、独自のオープン・イノベーションから革新的な新薬の種を産み出すことを経営目標としており、製薬企業との共同研究はその重要なピースといえる。同社は旭化成ファーマや中国のXuan Zhu Pharma(シャンツー・ファーマ)などと共同研究を行ってきているが、そのうち、旭化成ファーマとの共同研究において、2018年3月に大きな進捗があった。

同社は2018年3月26日付リリースで、両社が共同研究で開発を進めていた新規P2X7受容体拮抗薬に関してライセンス契約を締結したことを発表した。両社は2013年11月に共同研究をスタートさせ、疼痛領域を対象として特定のイオンチャネルを標的に開発候補化合物の創出に取り組んできた。今回、その成果として神経障害性疼痛治療薬候補であるP2X7受容体拮抗薬RQ-00466479(RQ-479)/AKP-23494954を取得することに成功した。RQ-479は前臨床開発段階に移行するが、今回のライセンスアウトによって今後は旭化成ファーマが前臨床開発及びその後の臨床開発に取り組み、医薬品としての上市を目指すこととなる。

同社への業績インパクトとしては、今回のライセンス契約より同社は旭化成ファーマから契約一時金を得る。また、旭化成ファーマにおける今後の開発の進展に伴いマイルストンを獲得するほか、医薬品として上市された後はロイヤルティを得ることになる。ただし、途中で開発中止となるリスクがあるほか、順調に進展したとしても医薬品として上市されるまでには10年程度の時間を要する点には留意する必要がある。

弊社では今回のP2X7受容体拮抗薬について、同社への投資を考える上でも大いに注目すべきプログラムだと考えている。その第1の理由は、P2X7受容体拮抗薬が対象とする神経障害性疼痛の市場の大きさだ。疼痛(痛み)にはケガや炎症による痛みや心因性の痛みなどいくつか種類があるが、神経障害性疼痛は神経が刺激されて起こるものだ。その原因は神経の圧迫(脊柱管狭窄症やヘルニアなど)、ウイルス感染、がん、糖尿病、ケガの後遺症など広範囲に及んでいる。それゆえ、日米欧の世界市場において、神経障害性疼痛の患者数は4,200万人(2016年)と推計されている。これを対象とする医薬品の市場も膨大で、市場規模は66~79億ドルとされる。現在、神経障害性疼痛にしてはプレガバリン(商品名「リリカ」でファイザーが販売)やデュロキセチン(商品名「サインバルタ」で塩野義製薬とイーライリリーが販売)等があるが、患者に対して必ずしも十分な満足度を提供できていないとみられる。副作用の影響で投与量を増やせず、結果的に疼痛を十分に解消できないケースも多いためだ。P2X7受容体拮抗薬はこれら既存薬とは異なる全く新しい作用機序で鎮痛効果を発揮することから、既存薬が持つ副作用を回避できる可能性があること、また既存薬に不応答の患者にも有効性を示すことが期待され、第一選択薬として、または既存薬との併用薬として、難治性の神経障害性疼痛の革新的な新薬となることが期待される。

弊社が注目する2つ目の理由は、P2X7受容体拮抗薬は、同社と旭化成ファーマの共同研究の成果であって、他社からの導入品ではないことだ。すなわち、同社にとってP2X7受容体拮抗薬は極めて利益率の高いプログラムであると言える。

さらに、P2X7受容体という物質の持つ可能性にも注目している。これまでの研究から、P2X7受容体は神経障害性疼痛以外にもアルツハイマー病やパーキンソン病、多発性硬化症、骨粗しょう症など様々な病態に関与していることが知られている。旭化成ファーマはまずは神経障害性疼痛治療薬の開発に注力するとみられるが、将来的に適応症拡大の可能性があると弊社ではみている。両社の契約の詳細は不明であるが、一般的な例に照らせば適応症拡大は同社の収入にも反映されることが期待される。

上述の旭化成ファーマとの共同研究成果のほかに同社は、2018年3月26日付リリースにおいて、EAファーマからマイルストンの受領が確定したことを発表した。同社とEAファーマは2012年10月に消化器領域における特定のイオンチャネルを対象とした共同研究契約を締結し、創薬研究を推進してきた。この契約は2017年4月末で満了したが、EAファーマはその後も研究開発を継続する一方、同社は権利を引き続き保有していた。同社とEAファーマの関係は、実質的には上記の同社と旭化成ファーマの関係と同じものであり、今後EAファーマの開発が進捗すれば更なるマイルストンが期待できるとみられる。

同社の事業ドメインである創薬分野においては、創薬技術の多様化や医療ニーズの高い疾患への注力といったパラダイムシフトが起きている。そうした中にあって、同社のような創薬ベンチャーの存在と、同社が推進するオープン・イノベーションという枠組みは今後もさらに重要性を増してくると期待される。イオンチャネル創薬という同社の強みとも相まって、共同研究からの創薬は、中長期的に、同社の事業の大きな柱となるものと弊社ではみている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)


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