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ダイナムジャパンHD Research Memo(7):ローコストと経営体力を生かし店舗拡大による成長が加速する可能性も


■中長期の成長戦略

4. ダイナムジャパンホールディングス<06889/HK>の取り組み
2018年2月の新規則の施行によって予想されるこれまでにない環境変化に対し、同社は1)コスト削減への取り組み、2)営業収入増加への取り組み、3)成長戦略の実行、の3つの点で取り組む方針だ。

(1) コスト削減への取り組み
同社はチェーンストア理論に基づくローコストオペレーションを深耕・進化させてきた結果、同業他社に比べて費用構造はかなり効率化されている。しかし今後も利益を確保し続けるためには一段のコスト効率化が不可欠だ。今回の環境変化に対しては、機械費の削減に向けた取り組みをさらに進める方針だ。パチンコホール業界では定期的に新台を導入して店舗のフレッシュさを維持し、集客につなげている。しかし、1台約40万円(パチンコの場合)とも言われる機械費は大きな負担となっている。

この点について同社は、プライベートブランド(PB)機の本格導入で対応する方針だ。同社は現在約21万台の機械を保有している。これに対して今後3ヶ年で28,000台のPB機導入を計画している。店舗数及び保有台数の更なる増加があるため、大まかに言って約10%をPB機で更新する計画とみられる。PB機導入による価格メリットを10万円と仮定すれば、28,000台の導入で28億円の削減につながる。これは現在の年間営業利益の約15%に相当する。

PB機の導入には一定の時間を要するため、同社は3年間という期間を設けている。この間は新規則の施行に伴う環境変化をもろに受けてしまうかというと、そうではない。今回の規制では、前述したように現有機種について認定を取得することで、向こう3年間はそのまま使用できる。すなわち規制適用の先送りが可能となる。同社は現有約21万台のうち約60%の12万台については認定を取得して新規則の影響を回避しつつ、新台入れ替えの費用を抑制し、この間にPB機の拡充を図る方針だ。

なお、同社が投入するPB機の射幸性については、大当たり確率が1/100~1/200の低射幸性の機種となるもようで、“射幸性に頼らない営業”の取り組みも継続されることになる。

(2) 営業収入増加への取り組み
営業収入増加への取り組みは、同社の成長戦略の軸の1つである既存店売上高の成長と重なるものであり、同社がこれまでも注力してきたことだ。前回のレポートで言及した個店マネジメントの強化はその1つだ。これは店舗ごとの特性(地域性、顧客層など)を生かした店づくりや販促活動による集客を目指す取り組みだ。これは店舗によっては大きな成功を遂げるところも出てきており、同社ではベストプラクティス(成功事例)を共有することで、成功店舗の増大を図っている。

今回新たに打ち出されたものとして、顧客データ分析の技術向上と活用がある。同社は会員カードを発行して約400万人の顧客情報を保有するほか、パチンコ機の出玉数や稼働率など様々な定量データを集計している。同社ではこうした膨大なデータの活用をさらに推し進めるべくデータ分析ソフトの開発を進め、集客効率の向上を図る方針だ。

(3) 成長戦略の実行
同社の成長戦略は既存店売上高の成長と店舗数の成長の2つの軸で構成されている。既存店売上高の成長については前述したとおりだ。一方、店舗数の成長についても、同社は再び積極化させる方針だ。

同社はこれまで、独自開発した標準店舗モデルによる自社出店を基本としてきた。新規出店は前期5店舗、当期見込みも6店舗に留まっているが、その理由は、収益性や効率性の点で同社の社内基準にかなう物件がほとんどなかったことが大きい。しかし今後の出店では、標準店舗による自社出店に加えて閉鎖店舗への居抜き出店やM&Aの活用を明確に打ち出した。

こうした出店政策変更の背景には、事業環境の厳しさの増大がある。新規則の施行後は業界全体で店舗閉鎖が増加し、同社の基準に適う店舗の売却も大きく増えてくると予想している。強いバランスシートや上場企業としての資金調達力を生かして、同社の基準にかなう店舗については自社出店にこだわらず、積極的に確保していこうというスタンスの積極化が出店政策の変更につながった。

また、前述の営業収入増加の取り組みの中の店舗ごとの地域性に沿った営業とも一部重なるが、『人にフォーカス』や『地域との共生』を目指した営業も、これからさらに注力していく方針だ。取り組み自体は全店舗で行われているが、今第2四半期はそのうち15店舗において、顕著な実績が上がったとして社内表彰を受けた。題名から読み取れるように、顧客一人ひとりの「人」にフォーカスし、居心地の改善、低貸玉・低射幸性営業の追求など、店舗ごとに来店動機の醸成をまったく異なるアプローチで取り組んでいる点が興味深い。

しかしより重要なことは、今回成功事例として挙げられた取り組み内容がいずれも、同社がパチンコを日常の娯楽にすることを目指して貫いてきた 施策と同じ線上にあるものだということだ。要は同社の考え方・アプローチが正しかったということの証左であり、『人にフォーカス』プロジェクトは同社の成長戦略として、十分効果が期待できるということだ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)


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