nms Research Memo(2):上場時と比べ事業内容が大きく変貌。持株会社制度へ移行しグループシナジーを追求
1. 会社概要
1985年に人材サービスを基盤に創業したnmsホールディングス<2162>は、2007年にJASDAQに上場した。その後2010年7月に、EMS事業を行う(株)志摩電子工業を、2011年7月に、(株)テーケィアール(以下、TKR)を買収した。電源事業では、2013年10月に(株)日立メディアエレクトロニクスの一部事業を、2014年10月にパナソニック<6752>から一般電源事業を譲受した。
その結果、売上高は上場年度の2008年3月期の16,963百万円から2017年3月期は54,581百万円と大きく拡大した。2017年3月期の売上高構成比は、EMS事業が51.8%、電源装置・部品のPS事業が22.7%、そして祖業の製造派遣や請負などのHS事業が25.5%であった。
2. 経営体制の変革
これまでM&Aにより「neo EMS」を実現していく経営リソースを獲得したものの、その効果を最大化させていくための各社を連携させたグループシナジー創出に課題があった。2017年4月に、本体からHS事業を分離し、新しく設立した子会社に移管、当該子会社は「日本マニュファクチャリングサービス」に社名変更し、当社はnmsホールディングスとして、グループ経営に集中する体制とした。従来の子会社を含め、その上に持株会社を置くことで、同社は、グループ事業統括及び経営管理等に専念する。
3. グループシナジーの追求
今後は、グループ企業間で事業・サービスの融合や、顧客への営業活動をグループ横断的に行っていく体制を再構築してグループシナジーを追求する。特に、人材サービスとEMS事業ノウハウの融合によるサービスの海外展開や、製造業の上流工程である設計から関わるPS事業でのグループ内EMSリソースの活用など、グループパワーを最大限に発揮したサービスを提供し差別化を図る。
従来は、同一顧客にグループ各社が個別にアプローチしていたため、顧客によって利用するサービスのウエイトに大きなばらつきがあった。今後は、顧客情報の共有化を図り、顧客ニーズに応じて同社グループサービスの利用を多角的に提案することで、顧客の利便性を高めると同時に同社グループの事業機会を最大化する。新体制になり、グループ企業トップが定期的に集まり、グループシナジーを創出するため個別案件などに踏み込んだ議論をしており、具体的な成果に結びつきそうだ。また、新体制による利益体質の強化、成長への構造改革が進むことも期待される。
4. EMS事業の再編
経営資源の最適配分による生産体制の構築を推進するため、EMS事業の再編に取り組んだ。2016年1月に、(株)東北ティーケィアールが、(株)岩手TKRと(株)茨城TKRを合併し、(株)テーケィアールマニュファクチャリングジャパンに社名変更した。テーケィアールマニュファクチャリングジャパンは構造改革の一環として国内の生産拠点を統合管理する。2016年3月期は、TKRグループの構造改革による固定資産の減損処理を行い、それに関わる特別損失241百万円が発生した。2016年12月に、志摩電子(深セン)有限公司を解散し、TKRグループの中宝華南電子(東莞)有限公司に集約した。2017年3月期に、子会社清算損180百万円を計上した。
5. 事業戦略
(1) チャイナ・プラスワン
中国は、かつて『世界の工場』であったが、カントリー・リスクや人件費の高騰もあり、企業の生産拠点戦略は『チャイナ・プラスワン』に移行しており、インドネシア、タイ、ベトナム、カンボジアなどに進出する企業が増えている。同社グループは、総力を挙げて、スムーズな海外生産移管、新規工場開設ニーズに応えるとともに、生産移管に伴う国内生産の安定に向けたノウハウを提供している。HS事業が有する人員採用及び派遣・製造請負ノウハウ及び海外ネットワーク、EMS事業が有する、これまで培った低コストでの工場運営のノウハウを融合させたサービスを提供する。また、マレーシアに拠点を持つグループ内EMS企業(TKR)は、多国籍教育の経験を有しており、こういったノウハウも横展開可能だ。2016年には、HS事業がベトナムに進出した。現地法人及び製造受託を行う工場を設立し、人材サービスとEMSノウハウによる製造受託を展開している。2016年6月から量産体制に入っており、受託開始時期300名だった生産人員規模を、2017年末をめどに1,300名への増員することを計画している。2018年3月期から、ベトナム子会社は連結対象になる見込みだ。
(2) 人材リソースの多様化
人材リソースが不足しているのは、生産年齢人口の減少が続く日本と失業率が1%程度と低いタイになる。nms (Thailand)Co., Ltd.はカンボジア政府と組み、カンボジアの人材をタイ市場に供給している。タイでの派遣終了後に、カンボジアに戻り、同社グループの工場もしくは新規に誘致する工場で働くことになり、人材が還流する仕組みとなる。タイ拠点在籍人員の20%超がカンボジア人材となっており、今後も規模拡大を計画している。タイ拠点では派遣先における労務管理も行っており、人材の定着率も高いレベルを継続している。
また、顧客ニーズが高いのは、アナログ技術者だ。デジタル化が進み技術が高度化する中、製品品質の基盤となるのがアナログ技術である。団塊の世代の引退や技術者の高齢化で、アナログ技術者の絶対数が不足している。グループ内にて教育・研修を行い、技術者派遣を行うなどの取り組みも行っている。
(3) 「省人化・省力化」を軸とした生産受託の拡大
日系企業のグローバル生産が拡がる中、機動的な生産拠点戦略が重要となっているが、人材リソース・EMSノウハウによる製造受託に加え、「省人化・省力化」に資する設備機器開発をEMS事業において行っている。これによりメーカーは、生産変動リスクに対応することができ、中国においてHS事業とEMS事業の協働を行っている。
また、タイにおいては、物流企業との提携による「ロジスティクスソリューション」も提供している。安定した人材供給と高い定着率で、工場内部材・部品管理や、生産管理、製造・検査・梱包・出荷など、モノづくりの入口と出口を請け負い、現地に進出する製造業の効率の良い生産体制構築に貢献している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
<NB>
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