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三井化学 Research Memo(8):主力のPPコンパウンドは着実な能力増強でグローバルトップを狙う


■中長期成長戦略における事業セグメント別動向

1. モビリティ事業
モビリティ事業は、2026年3月期において営業利益700億円を目標としている。2017年3月期を起点に2026年3月期までの9年間の営業利益のCAGR(年平均成長率)は6.2%となる。具体的な施策として、“需要拡大に対応したタイムリーな能力増強”や“グローバル顧客に密着した地産地消型の能力増強”などが掲げられている。2018年3月期からこれらの具体的施策が同時並行的にスタートしているが、その中で特に弊社が重要と考える取り組みは以下の項目だ。

(1) PPコンパウンドの能力増強
PPコンパウンドはモビリティ事業の売上高の半分近くを占める最重要製品であり、グローバルトップのポジションを狙う製品でもある。三井化学<4183>は2018年3月期において、アメリカ、メキシコ、インドでのデボトルネックによる能力増強を行い、グローバルで年産105万トン体制が確立する見通しだ(2017年7月稼働開始)。前述の基本戦略を忠実に実行していると言えるだろう。

さらに、同社は欧州での能力増強も計画している。現状、欧州では年産2万トンのコンパウンド生産能力を有している。世界の地域別自動車生産台数における欧州のシェアに照らすと、同社のPPコンパウンドの欧州での能力が他地域に比べて相対的に少ない状態となっている。同社によれば、今般欧州自動車メーカーへの増販にめどが立ったことから、新生産拠点の建設を検討中ということだ。現状では2020年3月期の稼働で年産3万トン規模の工場という案が有力視されている。これに要する投資規模は、直接の生産設備にインフラ設備等を加えて総額30億円~40億円程度と弊社では推測している。これもまた、基本戦略の中の“グローバル顧客に密着した地産地消型の能力増強”に沿った投資と言える。

同社は、中期的には2021年3月期時点でグローバル年産115万トン体制の構築を目指しているが、欧州での3万トンに加えて、北米やアジアで継続的にデボトルネックを行い、2021年3月期のグローバル年産115万トン体制の確立を目指す方針だ。

(2) モビリティデベロップメントセンター
同社は基本戦略の中で掲げる“顧客と協働する開発の場を提供”の具体的なアクションとして、モビリティデベロップメントセンターを日・米・欧の3極に設置し、ソリューション提案営業を強化する方針を打ち出した。

具体的には金型の製作、商品の試作、テスト、メンテナンスなどのサービス提供を通じて、マルチマテリアル化、商品力向上ニーズ、軽量化ニーズなどの取り込みを行っていく方針だ。こうしたソリューション提案自体は従来から同社が想定・計画していたもので、同社が2014年9月に金型メーカーの共和工業(株)を子会社化したのも、まさにこの視点からだ。モビリティデベロップメントセンターの設置で、ソリューション提案がいよいよ本格化することが期待される。成長戦略の一端を担うと目されるガラス繊維強化ポリプロピレン“モストロンL”や金属樹脂一体成型部材のポリメタック®の拡販にも重要な貢献を果たすと弊社では期待している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)


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