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ユニリタ Research Memo(6):顧客のデジタル変革の実現を共創するパートナーを目指す


■成長戦略

1. 第2次中期経営計画の進捗(レビュー)
ユニリタ<3800>は、2016年3月期から3ヶ年の「第2次中期経営計画」を推進している。企業のIT部門に求められる役割が企業価値向上のために直接貢献することころへシフトしていくなかで、「パッケージソフトウェアメーカーとしての製品開発力並びにサービス力の強化」「お客様の経営課題解決に必要とされるITスキルの強化」「新・企業文化創り」の3つを基本方針に掲げ、事業構造変革に取り組んできた。特に、環境変化により「メインフレーム」が縮小傾向をたどるなかで、攻めの分野である「データ活用」及び守りの分野である「システム運用」における自社製品販売(及びそれに付随するサービス)が同社の成長をけん引する想定であり、新規・成長事業分野に注力する方針を掲げている。

2015年4月のビーコンITとの経営統合により、それまでの守りの領域(システム運用)に加えて、攻めの領域(データ活用)の両方を持つことができたところは大きな成果と言える。また、パートナー政策の強化による自社製品販売や今後の成長に向けたIT技術の入れ替え、専門性及び機動力の追求を目指す子会社戦略にも一定の成果を残したと評価できる。

ただ、前述したとおり、最終年度である2018年3月期の業績予想に基づけば、目標数値(売上高10,000百万円、経常利益2,400百万円)には到達できない見通しとなった。1)既存製品において、製品販売に付随する技術支援サービスの伸び悩みや、帳票系大型マイグレーション案件の低迷(一服感)があったこと、2)成長を期待するIT領域においても、新規参入者との競争や顧客のIT投資のスモールスタート化が予想以上となり、需要はあるものの業績貢献が想定には至らなかったこと、3)計画の中に組み込んだ新たなIT資源を補完するためのM&Aが実現できなかったことなどが未達要因として挙げられる。

2. 今後の方向性
同社は、事業構造変革を加速させるための世代交代として、代表取締役の異動を伴う経営体制の変更を行った。新体制では、「UNIRITA Smart Formation Service」を軸に、顧客のデジタル変革のスムーズな実現を支援する方向性を打ち出している。特に、クラウド利用の加速による競合プレイヤーの増加や顧客との関係性が変化(競争力の源泉となるIT領域は内製化する一方、システム運用などの汎用性の高いIT領域はアウトソーシングする動き、IT予算は情報システム部門から事業部門へシフト等)する中で、デジタル変革の実現に向けて、上流(コンサル)から基盤構築、機能実装、運用及び分析に至るまで、グループ一体となった支援を行う方針を掲げている。また、顧客が持つビジネスの専門性や蓄積されたデータを有効活用するために、同社グループが持つソフトウェアの開発技術やシステム運用ノウハウの専門性、デジタルプラットフォーム技術等を掛け合わせることにより、顧客のデジタル変革の実現を共創するパートナーを目指す。さらには、豊富な手元流動性を生かしたM&A(新たなIT資源の補完など)にも引き続き積極的に取り組む方針である。

3. 今期の経営方針・重点施策
(1) 顧客基盤を拡大するための販売戦力の統合と強化
営業と技術サポート機能を統合するとともに、ITソリューション営業本部を新設し、顧客のソリューション提案力を強化する。また、顧客の階層(デジタル変革の実現に向けたフェーズ)に合わせたアプローチ手法を確立し、仕掛けて提案する営業体制づくりを行う。

(2) アライアインスによるソリューション提供力強化
前述した「LIVE UNIVERSE」(企業向けeラーニング・ナレッジシステム)のように、業種業界に強みを持つパートナー企業との協業によるソリューション開発(協業モデル)を推進する。また、アイネットとの資本業務提携を生かし、クラウドマーケットへの対応力強化を図る。

(3) 新たな価値を創造する製品・サービスの開発と提供
差別化が難しくなってきた既存製品については、新たな付加価値として、順次AI(人工知能)を実装したソリューションづくりを推進する。また、デジタルサービス本部を新設するなど、デジタルビジネスへ対応するクラウドサービスの強化を図るとともに、「LIVE UNIVERRSE」や「乗降センサー」(ユニ・トランド)などに見られるように、顧客の課題を直接的に解決する(業務に近づく)ソリューションモデル(アプリケーション)の開発を推進する。

(4) グループシナジーの発揮
コンサル子会社によるIT上流工程アプローチから製品販売へ結び付け、後工程をカスタマーサービスでカバーする、あるいは子会社IoTサービスに対してAI機能やクラウドプラットフォームを組み合わせるなど、グループ各社の連携によるエコシステムを推進する。特に、グループ力強化の視点からは、同社と子会社との機能分担として、専門性が高くマーケットに対し機動力を持つ子会社群が企画した製品を、同社が持つ開発力(及び資金力)を生かし製品化させ、子会社の事業スピードを上げていく戦略を描いている。

弊社では、これまで取り組んできた事業構造変革(攻めと守りが一体となった事業体制の構築や新規・成長事業分野へのITスキルの入れ替えなど)をさらに進化させ、よりソリューション提供(直接的な課題解決や新しいビジネスの創造)を重視した方向性を打ち出してきたところに注目している。すなわち、製品を単独で売る(パッケージ販売)だけでなく、グループ各社が連携し、顧客やパートナー企業、アライアンス先と一体となって新しい価値を創造することにより、顧客(特に、予算を持っている事業部門)に対する訴求力や競争優位性を高めるとともに、事業としての発展性や展開力にも可能性が広がるものと期待ができる。特に、同社の場合、従来からのシステム運用で積み上げてきた豊富な顧客基盤(接点)を有する一方、専門性や機動力に優れた子会社を含め、攻めと守りの両面において幅広い製品(サービス)を提供できる体制を確立してきたことから、その掛け合わせにより様々なソリューションを生み出すポテンシャルは高いと考えられる。新体制のもと、今後の成長加速に向けて、どのようなソリューションをどのような形で生み出していくのか、その進捗をフォローしていきたい。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)



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