クリレスHD Research Memo(6):2017年2月期は消費低迷等の影響で増収ながら減益、会社予想を下回る着地
2. 2017年2月期決算の概要
クリエイト・レストランツ・ホールディングス<3387>の2017年2月期の業績は、売上高が前期比9.9%増の113,525百万円、営業利益が同13.2%減の5,857百万円、経常利益が同13.5%減の6,348百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同0.8%減の3,293百万円と増収ながら減益となった。会社予想に対しては、売上高、各利益ともに下回る着地であった。
SFPダイニングの連結対象月数の正常化(14ヶ月から12ヶ月に戻る)がマイナス要因となったものの、前期に買収したKRフードサービスの連結貢献(約82億円の上乗せ)に加えて、前期出店分(108店舗)の通年寄与及び今期出店分(116店舗)が増収に寄与した。特に、CRカテゴリーが好調なローストビーフ丼専門店などを中心に計画を上回る出店数となったほか、SFPカテゴリーにおいても人気業態「磯丸水産」に加えて、2本目の柱となる「鳥良商店」※の本格出店を開始した。新規出店数は116店舗、退店が54店舗により、2017年2月末店舗数は857店舗となっている。
※SFPダイニングの創業業態である「鳥良」に「磯丸水産」の独自の収益モデル(駅前・繁華街、24時間営業)を移植した新業態であり、今期より本格的な出店を開始した。「磯丸水産」との隣接出店が可能であり、都心一等地での出店拡大を目指している。
ただ、売上高が会社予想を下回ったのは、既存店売上高が前年比95.3%(予想では97.8%)と想定を下回ったことが要因である。郊外及び地方レストランを中心に消費低迷や天候不順等の影響を受けた。また、「磯丸水産」がディナー利用時間帯の変化による客単価の減少や「かごの屋」(専門ブランドカテゴリー)の会員ポイント制度切り替えの周知不足による一時的な顧客離れも影響した。なお、1回目の下方修正(1月13日付け公表)をさらに下回る結果となったのは、年末年始における商況改善の兆しが1月中旬以降で伸び悩んだことや、SFPカテゴリーにおいて、タッチパネル導入に伴う休業期間等の機会ロス、及び新規出店の一部遅れなどによるものである。
一方、利益面では、のれん償却費の増加や一時的な損益の剥落※は想定内であったものの、新規出店数が増えたことに伴う開業経費や人件費率の増加(アルバイト不足、採用関連費の高止まり)など、販管費の増加分を増収により吸収できなかったことから経常減益となり、経常利益率も5.6%(前期は7.1%)に低下した。
※2016年2月期には退店に伴う受取補償金143百万円の計上があった。
財務面では、総資産が現預金の減少等により前期末比1.6%減の71,364百万円に縮小した一方、自己資本は利益剰余金の積み増しにより同11.5%増の19,507百万円に増加したことから、自己資本比率は27.3%(前期末は24.1%)となった。資本効率を示すROEについては利益率の低下等により17.8%(前期は20.3%)に低下したが、依然として2ケタの水準を確保している。
各カテゴリー別の業績は以下の通りである。
(1) CRカテゴリー
CRカテゴリーは、売上高が前期比4.0%増の42,862百万円、カテゴリー利益が同0.7%減の3,710百万円と増収ながら僅かに減益となった。会社予想に対しては、売上高、利益ともに下回った。前期出店分による通年寄与や今期出店分51店舗(計画は28店舗)が増収に寄与した。特に、新規出店については、好調な高付加価値型のフードコート業態(ローストビーフ丼専門店)の引き合いが増えたことから計画を上回る出店数となった。ただ、会社予想を下回ったのは、消費低迷の影響を受け、地方郊外SCを中心に既存店売上高が前年比96.9%(計画は96.9%)と低調に推移したことが要因である。郊外及び地方エリアにおいては客単価の低い業態へ顧客が流れる傾向が見られる一方、都心部では高付加価値業態が好調であるなど、エリアによって状況に違いがあるようだ。一方、利益面では、新規出店数の増加に伴う開業経費増(約42百万円の減益要因)や前期の一時的な損益の剥落(約142百万円)により減益となった。新規出店51店舗、退店24店舗により期末店舗数は421店舗となった。
(2) SFPカテゴリー
SFPカテゴリーは、売上高が前期比0.4%減の35,957百万円、カテゴリー利益が同18.1%減の3,560百万円と減収減益となった。SFPダイニングの連結対象月数の正常化(14ヶ月から12ヶ月に戻る)がマイナス要因となったが、その分を考慮すると実態としては増収減益と言える※。一方、会社予想に対しては、売上高、利益ともに下回った。前期出店分による通年寄与と今期出店分42店舗(計画は41店舗)が増収に寄与した。特に、人気業態「磯丸水産」(34店舗の出店)に加えて、2本目の柱となる「鳥良商店」(業態変更3店舗を含め10店舗の出店)の本格出店を開始した。ただ、会社予想を下回ったのは、消費低迷や天候不順の影響等により既存店売上高が前年比92.4%(計画は94.2%)と低調に推移したことが要因である。また、各店舗へのタッチパネル導入に伴う休業期間や導入直後のオペレーションの乱れ(不慣れ)によるチャンスロスも影響した。ディナー帯の利用が1次利用から2次利用、3次利用へと変化してきたことも客単価の低下につながっているようだ。一方、利益面では、新規出店数の増加による開業経費増や想定外の費用(タッチパネル導入による減価償却費等)により減益となった。新規出店42店舗、退店6店舗により期末店舗数は212店舗となった。
※連結子会社SFPダイニングの2017年2月期決算は、売上高が前年同月期間比13.4%増の35,957百万円、経常利益が同8.8%減の3,560百万円と増収減益であった。
(3)専門ブランドカテゴリー
専門ブランドカテゴリーは、売上高が前期比36.7%増の31,530百万円、カテゴリー利益が同10.7%減の1,316百万円と増収ながら減益となった。期初予想に対しても、売上高、利益ともに下回った。前期に買収したKRフードサービスの連結貢献(約82億円の上乗せ)に加えて、前期出店分の通年寄与や今期出店分19店舗(計画は22店舗)が増収に寄与した。ただ、期初予想を下回ったのは、既存店売上高が前年比96.5%(計画は97.0%)と低調に推移したことが要因である。特に、会員ポイント制度切り替えの周知不足による一時的な顧客離れが影響した。一方、利益面では、新規出店数の増加に伴う開業経費増や会計基準の変更による一時的なコスト増※により減益となった。新規出店19店舗、退店9店舗により期末店舗数は189店舗となった。
※KRフードサービスのポイント引当金の会計基準変更による影響(約61百万円の減益要因)
(4)海外カテゴリー
海外カテゴリーは、売上高が前期比11.8%増の3,167百万円、カテゴリー利益が同70.7%増の280百万円と増収増益となった。期初予想に対しては、売上高はほぼ計画通り、利益では若干上回った。台湾子会社の連結化に加えて、シンガポールが売上高、利益ともに好調に推移した。一方、香港は中国の景気低迷の影響を受けるも想定内。これまで業績の足を引っ張っていた中国(上海)からの全店撤退が8月末で完了したことで大幅な損益改善につながった。新規出店4店舗、退店15店舗(そのうち、上海撤退に伴うものが12店舗)、期末店舗数は35店舗となった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)
<NB>
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