ハウスドゥ Research Memo(4):高収益のフランチャイズ事業が稼ぎ頭(2)
2. ハウス・リースバック事業
(1) ハウス・リースバックの仕組み
ハウス・リースバックは、持ち主が自宅を売却後も住み続けられる、新しい不動産活用の提案である。同社が住宅を買い取り、売主とリース(賃貸)契約を結ぶことで、売主は現金を得られると同時に、愛着のある自宅、地域に住み続けることができる。「ハウス・リースバック」の商標登録は、2013年に出願し、2015年7月に取得した。2016年は、ハウス・リースバックについて1年間で5,000件以上の問い合わせがきており、同事業で圧倒的ナンバーワンの座を獲得することを狙う。
ハウス・リースバックは、資金需要のある顧客ニーズを捉えており、金融機関が提供するリバースモーゲージの制限の多さや利用しにくさを克服していることもあって潜在需要が大きい。資金の使途、年齢、収入、対象者、対象物件に制限がないうえ、住居の賃貸契約に保証人も不要である。同社は、不動産の査定や不動産売買、金融サービスのノウハウを持っていることから、ハウス・リースバックに必要な機能を自社の経営リソースでカバーできるのが強みになる。
ハウス・リースバックに対する代表的なニーズに以下のようなものがある、「長期ローンの返済が苦しいが、売却すると住む家がなくなってしまう」「子どもの学区が変わってしまうと困るので、引っ越しができない」「ペットと今の暮らしを続けたい」「引っ越しはできないが、老後の資金を準備しておきたい」「他人に知られないように家を売却して、資金調達をしたい」「リバースモーゲージは条件に合わない」など。ハウス・リースバックには、それらの問題を解決するメリットがある。すなわち、「売却代金を一括して受け取れる」「引越しや仮住まいを用意する必要がない」「リース契約に連帯保証人が不要」「固定資産税がかからない」「人に知られることなくスムーズに手続きが可能」「将来的に再度購入することが可能」などである。
(2) ハウス・リースバック事業の収益
ハウス・リースバック事業は、買取時の事務手数料、毎月の家賃収入、売却時のキャピタルゲインと3種類の収益機会がある。物件は、ほとんどを顧客から直接取得し、仕入額の約3%が買取時の事務手数料となる。取得翌月からは毎月家賃としてインカムゲインが、年間で仕入額の約8~10%がリターンとして入る。売却時には、諸費用及び手数料別途で仕入額の15%程度でキャピタルゲインが発生する。当初想定した以上の価格で売れれば、超過分を顧客に戻すことにしている。
サービス開始3年目となる2016年6月期における物件取得数は、前期の56件から222件へ、累積保有件数は同68件から274件に急ピッチで増加させた。また、前期はゼロであった売却件数は11件となった。ハウス・リースバック事業の売上高は、前期の103百万円から764百万円へ急成長した。2016年6月期の売上高構成は、賃料収入が269百万円、手数料収入が86百万円、売却売上高が409百万円であった。賃料収入と手数料収入はほぼ粗利に近い。売却売上高の粗利率は27.2%であった。データでは、累計保有件数100件に対して毎月約1件が売却件数となっている。
(3) ハウス・リースバック事業の対象地域及び対象者
ハウス・リースバック事業のターゲットとするのは三大都市圏となる。ハウス・リースバックの対象となる物件は、リース契約終了後に売却するため、不動産市場で流動性がある物件になる。戸建住宅だけでなく、区分所有のマンションも対象となる。2016年6月期末の実績では、戸建てが4分の3、マンションが4分の1であった。地域別では、三大都市圏周辺が物件数ベースで9割以上を占める。2016年6月末では、物件単価が高い首都圏の構成比が件数ベースで44.9%、金額では56.7%であった。
総務省の「住宅・土地統計調査」(2013年)によると、持ち家比率は総数の61.7%と3大都市圏以外の66.3%に対し、関東大都市圏が56.2%、中京大都市圏が61.3%、近畿大都市圏が59.5%と低くなる。ただし、関東大都市圏の持ち家数は908万戸と巨大で、中京の221万戸、近畿の491万戸を合わせた3大都市圏の合計は1,621万戸となり、3大都市圏以外の1,594万戸を上回る。
日本の住宅はストックが増え続けている一方、空き家率も上昇しており、資産が有効に活用されていない。日本の総住宅数は、2013年に6,063万戸に達した。10年前と比べ、674万戸、12.5%増加した。この間、空き家率は、1.3ポイント増の13.5%に上昇した。空き家率は、最も高い山梨県が17.2%、東京都でも10.9%と10軒に1軒は空き家である。
国立社会保障・人口問題研究所の2012年1月推計によると、2020年の労働人口(15~64歳)は2010年比で762万人減の7,341万人へ、65歳以上の高齢者は687万人増の3,612万人と推計されている。全国の高齢者のいる世帯数の割合は、1983年の25.0%から2013年に40.0%へ上昇した。高齢者のいる世帯では、核家族化が進んだため、高齢者単身が26.5%、夫婦のみが28.0%を占める。2013年の総務省の「住宅・土地統計調査」によると、60~64歳の年齢階級の持ち家比率は77.6%、65~74歳が79.8%、75歳以上が80.9%であった。
ハウス・リースバック事業における保有物件(2016年6月現在:274件)の活用者の年齢別構成は、50~60歳未満が23.4%、60~70歳未満が33.2%、70歳以上が29.6%を占めており、ターゲットとする年齢階級の顧客を獲得している。2016年2月からは、70歳代以上の単身顧客向けに、同社のコールセンターが家族に代わって毎日電話をかける「安心コール」サービスを無償で開始した。
同社のハウス・リースバック事業は、資産をキャッシュ化し、老後の生活を豊かに過ごすことに貢献する。ハウス・リースバック活用の理由の1位は、資金調達で57.2%を占めた。負担軽減(17.8%)、債務整理(13.9%)と続く。
顧客によっては、一時的な資金ニーズはあるものの、自宅を売却して借り直すほどの金額を必要としていない人もいる。そういう顧客には、同社は、AI(人工知能)を利用した査定とフィンテックによる不動産担保融資を提供する。
3. 不動産売買事業
首都圏の不動産市況には、いくつかの指標に過熱感が現れている。同事業の運営では、過度な引き締めはしないものの、注意深く遂行する。物件仕入を厳選し、直営店仲介事業とのコラボレーションを強化し、在庫回転率を重視する。前中期経営計画では2018年6月期まで不動産売買事業の売上高を80億円超としていたが、新中期経営計画では2019年6月期の売上高を50億円未満、利益を325百万円とした。不動産市場の変容に早めに備えることにした。
4. 不動産流通事業
政府は、2010年度に閣議決定された新成長戦略で21世紀の日本の復活に向けた国家戦略プロジェクトの1つとして、2020年までに中古住宅流通市場・リフォーム市場の規模を20兆円(うちリフォーム市場は12兆円)まで倍増する目標を掲げた。内需の要である住宅投資の活性化のための住宅政策を、新築重視からストック重視へ転換した。同社は、直営店による不動産売買仲介や買取の不動産流通業にリフォームを組み合わせたり、契約機会をリフォーム・住宅ローン・火災保険などの関連ビジネスにつなげることで収益の維持・増大を図る。
5. 住宅・リフォーム事業
国土交通省は、既存住宅・リフォーム市場の活性化に向けた取り組みを重点課題としている。日本の全住宅流通量に占める既存住宅の流通シェアは、欧米諸国に比べると6分の1程度でしかない。住宅ストックが世帯数を上回り、空き家が増加するなか、長期優良住宅の建築とリフォームにより長期間住み続けるという方針にシフトした。2013年度に発表された日本再興戦略では、都市再構築戦略として透明性・客観性の高い不動産市場を実現するため、各種の不動産情報やその提供体制の整備、国際基準を踏まえた不動産の評価基準の整備等を行う方針を打ち出した。フロー拡大からストック充実に向けて質の高い多様な住宅ストックの形成を図るため、既存住宅のインスペクション(検査)や長期優良住宅化のための基準等の整備、既存住宅の建物評価にかかる指針策定等を行うとの方向を示した。
同社は、2016年6月期に新築住宅を757百万円販売したが、2018年6月期と2019年6月期はゼロとしている。前中期経営計画では、2018年6月期まで10億円程度の年商を維持する予定でいた。新中期経営計画ではリフォーム事業に絞り込むことになるが、中古住宅とリフォームを一緒に提案したり、自然素材を使ったリフォームなどで差別化を図る。不動産売買事業、不動産流通事業及びハウス・リースバック事業とも連携し、ホームインスペクションや耐震補強工事の取り扱いを強化する。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
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