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平和不動産 Research Memo(8):「賃貸事業」と「不動産ソリューション事業」が収益の柱


■会社概要

(1)沿革

平和不動産<8803>は、1947年に日本証券取引所(全国11ヶ所、半官半民の営団組織)が解散するに当たり、新たな証券取引所及び証券業者等に施設を賃貸することを目的として、その財産を現物出資して設立された。その後、オフィスビルの開発及び取得により賃貸資産を増やすとともに、アセットマネジメントや住宅開発などに事業の幅を広げながら業容を拡大してきた。現在、5社の連結子会社を持つ。

(2)事業概要

同社の事業は、「賃貸事業」と「不動産ソリューション事業」が2本柱であり、売上高の93.4%、営業利益のほとんどがこれらの2事業から生み出される(2017年3月期第2四半期)。

「賃貸事業」は、東京・大阪・名古屋・福岡・札幌・仙台など主要都市を中心に、証券取引所ビル、オフィスビル、商業施設、住宅などの所有不動産(資産額:約2,120億円、2017年3月期第2四半期)を賃貸する事業である。特に、日本の証券業界の中心である日本橋兜町(東京)、北浜(大阪)、栄(名古屋)地区に所有不動産が多い。賃貸事業は同社の中核事業であり、売上高構成比は59.7%(2017年3月期第2四半期)、営業利益の88.5%(同、利益調整前)を稼いでいる。

「不動産ソリューション事業」は、1)マネジメントフィー、2)開発不動産収益等、3)仲介手数料、4)住宅開発の4つの形態に分類される。1)のマネジメントフィーは、平和不動産リート投資法人(連結外)から受託した資産を運用する平和不動産アセットマネジメント(株)(連結子会社)の事業が中心であり、受託資産の拡大がフィーの増加につながる。2)の開発不動産収益等は、主にリートを出口とする不動産物件の売上高である。毎年売上高としては上下に振れる傾向にあるが、取得後短期間でリートに売却するケースが多いため、営業利益については売上高ほどの変動はない。3)の仲介手数料は、不動産取引全般に関わる仲介手数料である。4)の住宅開発は、首都圏を中心に展開するマンション分譲事業であり、短い事業サイクルが特徴である。不動産ソリューション事業は売上高の33.7%(2017年3月期第2四半期)、営業利益の25.1%(同、利益調整前)を占める。

(3)賃貸事業の市場環境と同社のビジネスモデル

賃貸ビル事業の市場環境は改善傾向にある。東京都心5区(中央区、千代田区、港区、新宿区、渋谷区)のオフィスビルの空室率は9.0%(2012年3月)から4.3%(2016年3月)に回復している。※賃料相場に関しても、上昇に転じている。同社の所有物件に関しては、空室率は6.4%(2016年9月、首都圏)になるが、再開発のための貸し止め物件の影響を除くと、0.8%(2016年9月、首都圏)となり、市場を大きく上回る実績である。これは一棟貸しが多い同社の特長を反映している。

※三鬼商事オフィスデータより。

賃貸事業はオフィスビル単体で考えるだけでなく、街全体を開発することにより付加価値を上げていく側面がある。同社は大都市の金融街に多くの物件を所有するため、このような“面開発”で強みを発揮する。名古屋(栄地区)での事例では、証券取引所に隣接する地区において2004年から約10年に渡り再開発を行っており、街並みが整備され、延床面積も3.5倍(11,300平方メートル→39,700平方メートル)に増え、賃料収入も大幅にアップした。今後の日本橋兜町・茅場町再開発も、“面開発”による街づくりの手腕が生きる分野だ。

(4)不動産ソリューション事業のビジネスモデル

平和不動産リート投資法人を含めたグループ全体としてのバリューチェーンの構築が基本戦略である。同社は平和不動産リート投資法人のスポンサー企業として物件を取得し、空室率改善などのバリューアップをした上で物件供給を行う。その後の運営管理においては、主に連結子会社である平和不動産アセットマネジメントがアセットマネジメント業務を行い、マネジメントフィーを得る。リートへ良質の物件を供給することで資産価値は向上し、リートからの受託資産が増えるとともに安定的なマネジメントフィーも増えるという有機的な成長が収益を生む構造だ。連結の対象外ではあるが、平和不動産リート投資法人は、東京都区部を中心にオフィス及びレジデンスに投資を行い、近年の業績は順調である。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田 秀夫)



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