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ワコム Research Memo(4):通期業績予想を再度下方修正するも同社製品のベース需要は底堅い


■2017年3月期通期見通し

前述のように、ワコム<6727>は第1四半期時点(8月)に続き、11月の第2四半期決算に際しても通期の業績予想を再度下方修正した。新予想は、売上高70,300百万円(前期比9.4%減)、営業損失500百万円(前年同期は3,664百万円の利益)、経常損失650百万円(前年同期は3,776百万円の利益)、親会社株主に帰属する当期純損失1,500百万円(前年同期は2,309百万円の利益)となっている。

第1四半期時点(8月)の下方修正は、主として円高の影響による下方修正だった。第2四半期時点(11月)の下方修正は、主としてブランド製品事業の新製品開発遅れとテクノロジーソリューション事業の業績見通し引き下げによるものだ。テクノロジーソリューション事業での具体的内容は、前述したようにサムスン電子のGalaxy Note 7向けペン・センサーコンポーネントの売上高の実質的消滅だ。

ブランド製品事業は、新製品の開発遅れが見られるものの、クリエイティブユーザー向けの同社製品の競争力やベース需要は底堅く、そこに新製品を投入することで販売台数増による増収を見込んでいる。特に第2四半期に大きく販売を落とした高価格・高機能製品のモバイルにおいて巻き返しを狙っている。

同社の通期業積見通しが達成されるかは、まだ予断を許さないが、足元の対ユーロでの為替レートが同社の前提よりも円安で推移している点はポジティブ材料と言えるだろう。テクノロジーソリューション事業の下期の業績は、Galaxy Note 7向けの売上高を実質的にゼロにまで引き下げており、この点ではこれ以上の下振れリスクは小さいとみている。したがって業績予想達成のカギとなるのは、ブランド製品事業におけるクリエイティブビジネスの各種新製品の開発進捗と販売動向になると弊社では考えている。

心強いポイントとしては、第2四半期の不振の原因だったモバイルに関し、同社はトップクリエイター/ヘビーユーザー層向け市場では専用機の強みを生かして100%近いシェアをキープするという方針において、まったく揺らいでいないことが挙げられる。前述のように、今回の新製品では3D対応とカラーマネジメントの強化を図り、一段と“プロ好み”の製品になったとみられ、これが買い替え需要やステップアップ需要を刺激すると期待される。他方、ミドルユーザー層向けは、市場自体の拡大とともに、一定程度はAppleやMicrosoftなどのライバル勢にシェアを奪われることを想定し、それを織り込んだ収益計画となっているとみられる。したがって、他社との競合による業績下振れよりも、トップクリエイター層の買い替えが順調に進むことこそが、重要なポイントとなる。この部分は同社の自助努力で対応可能な領域であり、タイミングのずれは起こり得ても、最終的には計画どおりの売上げを達成できるものと弊社ではみている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)



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