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「オワコン」を知らしめたブレグジット【フィスコ・コラム】


3月29日にイギリスが欧州連合(EU)を離脱できるのか、なお紆余曲折が予想されます。しかし、ここまでのブレグジットをめぐる混迷は、イギリスがすでに「終わった国」であることを改めて、そして幅広く認識させたのではないでしょうか。

メイ首相が議会に提示した離脱合意案は1月29日、一部修正を前提に賛成多数で可決されました。ただ、可決と言っても法的拘束力はなく基本方針にとどまり、正式な離脱案は2月13日までに示される見通しです。英領北アイルランドとアイルランドの両国に横たわる国境問題に関するメイ政権の方針が不透明なこともあり、離脱まで残り2カ月を切った現在もEUを離脱できるかどうかはわからない状況です。

今後の展開として離脱延期、2回目の国民投票、合意なき離脱などのシナリオに変わりはありません。離脱のタイミングを先送りしたところで、二分された国論をつなぎ合わせる解決策は考えられず、合意のない離脱には読み切れない恐怖が待ち構えています。国民投票再実施なら3回目、4回目と永遠に続く可能性もあります。あとは景気減速が鮮明なEUを恫喝して譲歩を迫るしか道はなくなったと思われます。

そもそも、2016年6月のEU離脱に関する国民投票の意義が不明です。キャメロン前首相は2015年5月の総選挙に向け、政権を維持できれば国民投票を行うと公約。その時保守党が圧勝し、連立相手の自民党は敗北して政権を離脱したことでストッパー役が消えたのは誤算でした。EUのトゥスク大統領が「ばかげた国民投票」をやめるようキャメロン氏に警告していたことがテレビのドキュメンタリー番組で明らかにされています。


キャメロン氏は「残留派」の勝利を見込んで有権者が望みもしない不毛な投票に突き進んでいったとみられていますが、それが事実なら政治家としては相当に未熟です。そして、「この国民にしてこの政治家あり」とも言われます。イギリスが落ち着いた大人の国との世評は、実は幻想だったのかもしれません。EU側から「イギリスは何をしたいのか」と駄々をこねる子どもに問いかけるような対応が印象的です。

サッチャー政権時代のウィンブルドン現象やポンド危機でもイギリスは無残な姿を世界にさらしましたが、当時はフォークランド紛争の勝利などで、かつての帝国時代の体面を保ちました。しかし、今回の国民投票後の迷走ぶりでは、並みの国に成り下がった事実を取り繕う材料が見当たりません。国連常任理事国をはじめ実力以上に大きく評価された地位にとどまることができるのは、単なる既得権でしかないでしょう。

日本人にはなじみが薄いものの、イギリス連邦に所属する国・地域から約70チームが参加する「コモンウェルス・ゲームズ」というオリンピックに似た競技大会が4年ごとに開かれています。帝国主義時代における植民地支配の名残りともいえ、大国意識を満たすイベントです。しかし、イギリスが視線の先を過去から未来に変えない限り、ポンドは長期的な低迷から抜け出すのは難しそうです。

※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。




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