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【フィスコ・コラム】総選挙前のニュージーランドではリベラル旋風が吹き荒れる


凋落ぎみだった野党が新党首の登場で旋風を巻き起こし、あっという間に政権交代——ドラマの題材になりそうな、そんなストーリーが今、ニュージーランドで展開されています。シナリオ通りとなった場合、NZドルにはどのような影響があるでしょうか。


来る9月23日投開票のニュージーランド総選挙に向け、支持率が伸び悩んでいた労働党は、8月1日にアンドリュー・リトル党首が引責辞任し、新党首にジャシンダ・アーダーン副党首が選出されました。37歳の党首は労働党史上最年少、女性党首としてはヘレン・クラーク氏(元首相)以来2人目となります。その効果により、労働党の支持率は55歳のビル・イングリッシュ首相率いる与党・国民党を上回りました。また、労働党への献金が殺到するなど、いわばブームになっているようです。


中道左派系の労働党は2008年の総選挙で、ジョン・キー氏率いる国民党に敗れて下野。2011年、2013年、2014年と3回の総選挙でさらに議席を失い、党首もその都度交代する冬の時代が続きます。他方、与党の国民党は、高支持率を誇ったキー首相が昨年12月、「家庭の事情」を理由に電撃的に辞任した後も、現在のイングリッシュ政権が消去法的に支持されていましたが、アーダーン氏の党首就任で形勢は逆転。労働党は9年ぶりの与党返り咲きを狙います。


アーダーン氏は学生時代に労働党に入党し、2001年に卒業後は党幹部の事務所に研究生として勤務。その後イギリスに渡り、ブレア政権の政策スタッフとして経験を重ねます。帰国後の2008年に初出馬で当選を果たし、2011年には早くも「影の内閣」の閣僚に起用されるなど、リベラル派の論客として頭角を現しました。当選3回はいずれも小選挙区で敗れ、その後比例で復活するパターンでしたが、今年2月に行われた選挙区の補選で勝利し、党副党首に就任。初出馬から10年も経たずに首相を目指す立場に上り詰めました。


社会民主主義者を自認し、総選挙では子供の貧困救済などを主張するアーダーン氏は、イギリス労働党のコービン党首を想起させます。ニュージーランドでは1980年代の公共部門の民営化は、労働党政権下で進められたのですが、一般的には「大きな政府」になりがちなリベラル派の政策は「小さな政府」を是とする金融市場からはあまり歓迎されません。今年6月に行われたイギリスの総選挙でも、典型的な左派政策を主張した労働党が与党・保守党を追い上げた際、ポンドが売られました。


主要国の中では行き過ぎた新自由主義にブレーキをかける動きが見て取れるものの、新自由主義を政策の柱とする与党からリベラル政党が政権を奪還するには至っていないのが実情です。世界で初めて婦人参政権を採り入れたニュージーランドが、他国に先駆けて新自由主義路線からの軌道修正に成功できるか、といった点も大いに注目されます。NZドルは、中銀が過去最低水準の政策金利を維持する方針で足元は売られやすい地合いですが、リベラル政権でも安定的であればNZドルへの影響は小幅にとどまるでしょう。

(吉池 威)




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