コラム【ポートフォリオのススメ】新興国投資について(マネックス証券 塚本 憲弘)
日本株も戦後間もない時期は新興国でした。日経平均株価はその源流となる株価指数が1949年5月評価で176.21円とされたそうですので、先進国になる過程を経て現在の株価33,000円までで見ると187倍になりました。日本だけでなく他の成長国でも長期データを見ると同様の成功事例が指摘できます。
短い視点に話を戻すと過去20年では年平均で先進国株は9%、新興国株は10%のリターンでしたが、標準偏差は先進国株で17%、新興国株で26%です。これは、新興国株は平均で年10%のリターンが期待されるものの、概ね±26%の振れを伴うことを意味しています。
代表的な指数であるMSCI新興国株指数は2000年代初頭に大きく上昇しました。当時は経済成長の発展が期待される新興国をBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)と称した時期です。ただその後は2008年の金融危機を経てレンジ内のもみ合いが続いています。
成長余地はあるものの株価の振れが大きく、また株価上昇には分かり易い材料が必要です。先進国に比べて政治・社会変動といったカントリーリスクもあり投資タイミングが難しいですが、成長は中長期の時間をかけて達成されるものであり、その点で長期投資を前提にした積み立てに適しているでしょう。
なお、新興国株式には様々な投資手段があります。興味のある国を選択することも、広くリスク分散投資することも可能です。先ほどのMSCI新興国株指数では5末時点で24か国に投資をしていますが、中国(29%)・台湾(16%)・インド(14%)・韓国(13%)と偏りがあり、中身は適宜確認が必要です。
新興国債券はどうでしょうか。過去20年のリターンは先進国債券が年平均3%、新興国債券(ドル建て)が6%、標準偏差はそれぞれ6.5%と10%です。新興国債券の方がリターンは良いですが、やはり振れを伴っていますね。
新興国では資金ニーズも高く、リスクもあることから金利が高くなる傾向があり、先進国よりも利回り面で魅力的ですが、注意が必要な点もあります。
債券は株式に比べて企業の弁済順位が高いことから相対的に投資のリスクが低いですが、債券の利回りの高さはリスクの裏返しでもあります。米国債は質の高さが認識されていますが、信用度の高い国から低い国にかけて、また社債であれば優良企業から投機的な企業にかけて利回りが上がります。そして景気悪化局面では高リスク(ニアリーイコール高利回り)債券は、求められる利回りが更に上がることで価格が下落します。
よってそのような局面では、債券でも米国債など質の高い債券は質への逃避での買いによる分散効果が期待されますが、新興国やハイイールド(投機的企業)債は株式同様に売りが優勢となります。
中長期の運用では、人口動態や成長が伸び悩む先進国資産のみで必要なリターンを確保できるか難しい可能性があります。金融緩和等の支援材料も永続的ではないでしょう。一方で新興国経済は高い経済成長・人口動態の伸びが見込まれますし、情報技術の発展は新興国に飛躍的な成長をもたらす期待もあります。
新興国投資は、経済成長が時間をかけて達成されるという前提のなかで、日々の振れに左右されず中長期運用を意識した分散投資対象の一部分として注目されます。
マネックス証券 インベストメント・ストラテジーズ 塚本 憲弘
(出所:6/19配信のマネックス証券「メールマガジン新潮流」より、抜粋)
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