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強まる国際社会での対立:新たな二極化世界における露中米の三角関係(2)【中国問題グローバル研究所】


【中国問題グローバル研究所】は、中国の国際関係や経済などの現状、今後の動向について研究するグローバルシンクタンク。中国研究の第一人者である筑波大学名誉教授の遠藤 誉所長を中心として、トランプ政権の ”Committee on the Present Danger: China” の創設メンバーであるアーサー・ウォルドロン教授、北京郵電大学の孫 啓明教授、アナリストのフレイザー・ハウイー氏などが研究員として在籍している。関係各国から研究員を募り、中国問題を調査分析してひとつのプラットフォームを形成。考察をオンライン上のホームページ「中国問題グローバル研究所」(※1)にて配信している。


◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページでも配信しているテムール・ウマロフの考察「強まる国際社会での対立:新たな二極化世界における露中米の三角関係(2)【中国問題グローバル研究所】(1)」の続きとなる。

西側に対する結束したアプローチ
ロシアと中国を結び付けるもう一つの要因は、米国の長期的な意図に対するそれぞれの疑念である。米国は、中国とロシアをともに地政学的競争相手と公式にみなし(※2)ており、両国が米国に内政干渉していると非難している。

米国とロシアの関係はこれまで安定して良好だったことがない。ソ連の崩壊後、ロシアは地政学的に西側諸国の一員になろうとしていたが、うまくいかなかった。ロシアは、現在の政治体制とその超大国的野心のおかげで、米国主導の民主主義国クラブに仲間入りするのはほぼ不可能になっている。

一方で、中国も遅かれ早かれ民主主義国クラブに加わることを米国は期待していた。米国政府の発想は、中国では新たな経済的自由に続いて政治的自由が生まれ、そして中国の経済成長は西側諸国と同じ基盤の上に築かれなければならないというものだった。しかし、そのようなことは起こらず、今我々の目に映る中国は西側の統治モデルに従うつもりがないだけでなく、独自の統治モデルを作り出している。

中国とロシアは、世界的な民主化の流れに自分たちが逆行していることをともに認識しているため、特別な絆が生まれている。そして西側からの圧力は、両国が関係を強化するもっともな理由となる。

両国関係についての公式の説明はここ数年の間で変化している。ロシアと中国は互いに 「同盟」 という言葉を使うことを最近まで長い間避けていた。しかし、2019年10月、ロシアのプーチン大統領はヴァルダイ国際討論クラブで、中露関係を初めて次のような特別な言葉で表現した(※3)。「これは多面的な戦略的パートナーシップという意味での同盟関係である」。

一方、中国はこうした言葉遣いは引き続き避け、「包括的なパートナーシップと戦略的相互作用」というような表現を好んだ。しかし、このほど発表された共同声明では、両国関係が単なる時代遅れの同盟ではなく、それ以上のものであることを強調している。「中露関係は冷戦時代に形成されたような軍事政治同盟ではなく、そうした国家間の相互作用の形態を超越している。それは便宜主義的なものではなく、イデオロギーにとらわれず、パートナーの利益を包括的に考慮し、相互の内政に干渉せず、自立し、第三国に向けられたものではない、新しいタイプの国際関係を示すものである。」

これらは単なる言葉ではなく、実際に発現している。ロシアと中国は両国関係がイデオロギーに支配されないとしており、これによって関係がより実利的なものになっている。ロシア外交政策に精通しているドミトリー・トレーニン氏は、現在の中ロ関係の原則について次のように述べている。「決して対立はしないが、常に一緒にいる必要はない」。つまり、ロシアと中国は国際関係でいくつか共通の利益を共有してはいるものの、ハイレベルのパートナーシップがあるからといって特定の方法で行動する義務は負わないことを意味している。

こうした実利主義の実例は多い。例えば、中国は、ウクライナやクリミアに対するロシアの政策を支持も批判もしていない。中国政府は2014年以降、クリミアの地位について沈黙を続けており、中国企業はクリミアに代表団の派遣(※4)を続けている。一方、ロシアは南シナ海での中国の領有権争いに巻き込まれるのを望んでいない。ベトナムは、ロシアが主導する自由貿易圏であるユーラシア経済連合に旧ソ連以外で初めて参加した国であり、中国かベトナムかの選択をロシアは避けたいのだ。同様に、ロシアはインドを武器と軍事機械の最大の輸出国の一つとして重視(※5)しており、中国とインドとの国境紛争には加担していない。

互いから学ぶ
中国とロシアの関係のもう一つの重要な面は、両国がさまざまな問題について互いから積極的に学んでいることである。国内政策では、NGOを統制するロシアのノウハウに中国は関心を払っており、逆にロシアは中国がインターネットの全面的な統制に成功していることに注目している。

外交分野では、主権および内政干渉の制限を中心に据えた国際秩序を形成したいという欲求を両国は共有している。このことは、サイバー空間における規範やインターネットの統制など、グローバル・ガバナンスのさまざまな分野の議論に表れている。

中国とロシアは、国際秩序を変えたいという欲求も共有している。現在の秩序は、20世紀半ばにソビエト連邦や中国の積極的な関与なしに米国とその他の西側諸国が作ったものだ、というのがロシアや中国の指導者の考えである。そして今、ロシアにとって、とりわけ中国にとっては、ほぼ1世紀前に西側民主主義が考え出したルールに基づいて国際社会全体が存続しているのはフェアではないと映っている。

ロシアと中国は、国際舞台で同じような行動を取ることがある。趙立堅氏のような「戦狼」と呼ばれる中国外交官の激しい口調は、ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官を思い起こさせる。彼女は少なくとも過去6年間にわたり、数多の外交スキャンダル(※6)の中心に登場した。

中国メディアはまた、「ロシア・トゥデイ」や 「スプートニク」 などのロシアのメディア企業がどのように運営され、特定の話題を世界に広めているかについても注目(※7)している。中国とロシアのアプローチの類似点は、デジタルの領域にも見られる。中国の当局者たちは、ロシア政府のオンライン・トロールや偽情報キャンペーンなどデジタル・プロパガンダのツールを丹念に研究(※8)している。

中国とロシアの間には、より古典的な協力形態もある。例えば、国連安全保障理事会の常任理事国である両国は、投票や議題設定の際に互いに支持し合っている。ただ、これはすべて別個に行われており、両国の行動は直観的に生まれているものであって、調整されてはいない。

西側との対立に関することになると、中国とロシアは結束し、両国間の問題は脇に置く。しかし、両国関係にはいくつかの誤解が存在する。ある分野では、中国はロシアにとって比類のない経済パートナーになりつつある。加えて、拡大する中国の勢力は中央アジア諸国への影響力を高めている。この地域はロシアが自らの 「裏庭」 と見なしているが、特にパンデミック中は投資に充てる十分な資金がロシアにはない。中国がこの地域への支援の主要な資金源となり、現地のエリート層が中国資金への依存度を高めていることもあって、中央アジアの微妙なバランスは中国側に傾いていており、これはモスクワとの摩擦につながりかねない。

ロシアと中国は、現下の国際環境によって、双方の国や社会が心穏やかでいられるよりもかなり速いスピードで接近している。両国関係には依然として高いレベルの相互不信が存在し、ロシア側に多くの選択肢がない中で、状況はさらに複雑なものになるだろう。


写真:代表撮影/新華社/アフロ

(※1)https://grici.or.jp/
(※2)
https://www.whitehouse.gov/briefing-room/speeches-remarks/2021/02/04/remarks-by-president-biden-on-americas-place-in-the-world/
(※3)http://en.kremlin.ru/events/president/news/61719
(※4)
https://web.archive.org/web/20210324205441/https:/mtur.rk.gov.ru/ru/article/show/2128
(※5)https://carnegie.ru/commentary/84960
(※6)https://thebell.io/en/serbia-unfriends-zakharova-in-basic-instinct-facebook-row/
(※7)https://twitter.com/RyanFedasiuk/status/1366102118172622858
(※8)
https://carnegie.ru/2021/06/03/comrades-in-tweets-contours-and-limits-of-china-russia-cooperation-on-digital-propaganda-pub-84673

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