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コラム【新潮流2.0】:習い癖(マネックス証券チーフ・ストラテジスト広木隆)


◆我が家の最寄駅は大改修工事をおこなっている。東西の連絡通路を北側にもうひとつ新設するのに伴い北口に新しい改札口ができる。我が家にはぐっと近く、駅のホームまで到達する時間が5分は短縮されるだろう。喜ばしい限りなのだがひとつ問題がある。改札のどのゲートを通ったらいいか、最初はわからないことだ。

◆今の改札は、一番右側のゲートを通ることにしている。そこを通ると、その日はたいてい、物事がうまく運ぶ。素敵な出会いや新しい機会にも恵まれる。ところが、ひとの流れに邪魔されて仕方なく別のゲートを通ってしまうと、ついてなかったり失敗したりすることが多い。過去の経験の積み重ねが行動様式を決め、それが習慣になっていく。みなさんも、そんなことってないですか?

◆習慣を変えるのは難しい。だが個人投資家にはぜひとも変えてもらいたい「習い癖」がある。それは株価が上がるとすぐに売ってしまうことだ。確かにバブル崩壊後の右肩下がりの相場では上がったところを売っておくのが正解だった。だが日経平均がバブル崩壊後の戻り高値を大きく上抜いたことに象徴されるように相場は新しいステージに入っている。これまでうまくいっていた手法が今後も続く保証はない。

◆どの改札ゲートを通っても、その日に起きることと因果関係などない。上で述べたことは、「そこを通ると、物事がうまく運んだ(ように感じる)」「別のゲートを通ると、ついてなかったりすることが多い(ように感じる)」というだけのことだ。ひとはランダムな事象にむりやり因果関係を当てはめてしまう。そうだとわかっているから、僕は一番右の改札ゲートを通り続ける。そこを通っても、ついてない日もダメな日もあるのだと確認するために。運・不運はランダムに訪れるのだということを身をもって知るために。

マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆
(出所:11/15配信のマネックス証券「メールマガジン新潮流」より抜粋)




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