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日本の食糧自給率の落し穴


3月31日、国際連合食糧農業機関(FAO)、世界保健機関(WHO)、世界貿易機関(WTO)は「Mitigating impacts of COVID-19 on food trade and markets」という共同プレスリリースを公表した。その中では、世界中の人々が食料安全保障と生計を国際貿易に依存しているため、各国のパンデミック対策制定による食料供給への潜在的影響や食料安全保障への意図しない結果を最小限に抑える必要があると述べている。食品の貿易制限というシナリオが実現した場合、食品のサプライチェーンを混乱させ、最も脆弱で食糧供給が不安定な国に特に顕著な結果をもたらすことが警戒されている。

3月24日からベトナム、4月5日からカンボジアがコメの輸出を禁止し、卵の輸出を1週間禁止していたタイが当該措置を1ヵ月延長することを決めたこと、3月20日からロシアが全種類の穀物輸出を10日間制限する措置を取ったこと、カザフスタンが小麦粉やソバ、砂糖、野菜などの輸出を中断したことなどを各種報道で知ることができる。
日本の農林水産物の輸入は、米国、カナダ、豪州、中国、ブラジル、アルゼンチン等に多く依存している。果たして、我が国における食料の安定供給は期待できるのであろうか。食料自給率の観点からみてみると、日本には大きな「落し穴」があることがわかる。

農水省が発表した「食料自給率の推移(H30)」には、「主食用穀物自給率は59%だが、飼料用を含んだ場合の自給率は28%」と記述されている。また、食肉、鶏卵、乳製品などは、国内で生産された食材であっても、飼料等の供給を海外依存しているため、輸入が絶たれた場合、生産ができない品目が出てくる可能性がある。極端な例が鶏卵である。鶏卵の国内生産比率は96%であるが、飼料の輸入を考慮すると自給率は12%に一気に降下する。鶏卵を生産するために、牧草や麦わらなどの粗飼料の27%、穀物やエコフィード(パンくずや豆腐粕)などの濃厚飼料86%を海外からの輸入に頼っているためである。これらの主な輸入先は、米国、カナダ、ブラジル、アルゼンチン、豪州である。

次に自給率の低い食材は食用油糧である(自給率は13%)。油糧種子の輸入は「特定国に集中する大豆と菜種、多くの供給国に分散するごま」という構図になっている。
大豆や菜種は他国に供給できる余力を持つ国が限られている。大豆の搾油量については、米国とブラジルの2ヵ国にほとんど依存しており、菜種油については、ほぼカナダ、わずかに豪州からの輸入となっている。ごま油については、ブルキナファソ、ナイジェリア、タンザニア等多数の国から輸入している。

2018年の我が国のカロリーベース自給率は37%であり、畜産に仕向けられる飼料の自給率は25%にとどまっている。海外先進国の自給率は米国130%、フランス127%、ドイツ95%、英国65%などであり、我が国は最低の水準となっている。米、野菜、海藻類以外は大きく海外からの輸入に頼っている。戦前の日本は、米や野菜を中心にした食事であったが、欧米化が進み、輸入だよりの小麦粉を使ったパンや輸入飼料を使った畜産物や油脂類を多く使用した食事に変化してきた事が大きな原因と言われている。
なお、内閣府世論調査(H26年1月)では、「国際的な食品需給に不安定要素が存在する中、国内生産による食料供給能力の低さを危惧している(83%)」との結果が得られた。農水省は、「食料・農業・農村基本計画」(17年3月策定)において食料自給率目標を『2027年度カロリーベース45%』と設定している。

「食料消費」と「農業生産」両面からの「早急な食糧自給率の向上」と食料供給国との「良好な国際関係の維持」が国家の生存に必須の要件になっている。冒頭のプレスリリースでは、「食料関連の貿易措置、食料生産、消費、在庫のレベル、および食料価格に関する情報が、リアルタイムですべての人に提供される必要がある」と言及されており、日本でも早急な対応を求めたいところである。


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