日経平均は3日ぶり反落、やはり「堅調な米経済」と「先行き不安」で綱引き
14日の米株式市場でNYダウは反落し、113ドル安となった。朝方300ドル超上昇する場面もあったが、ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁が5月の0.5pt利上げについて
「妥当な選択肢だ」と述べるなど、利上げペースの加速を示唆。金利が幅広い年限で上昇するとともに、ハイテク株を中心に売りが出た。ナスダック総合指数は-2.14%、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は-2.92%だった。本日の日経平均はこうした流れを引き継いで239円安からスタート。朝方に一時26784.92円(387.08円安)まで下落したが、その後ファーストリテ<9983>の大幅上昇や為替相場の円安進行を支えにプラスへ転じる場面もあった。しかし、一段の上値を追う動きは限られ、前引けにかけて再び軟化した。
個別では、レーザーテック<6920>と東エレク<8035>が揃って4%超の下落。台湾積体電路製造(TSMC)が好決算や高水準の設備投資計画の維持を示したが、米金利上昇による半導体株安の流れを引き継いだ。その他売買代金上位ではソフトバンクG<9984>、郵船<9101>、ソニーG<6758>が軟調。ベイカレント<6532>は決算発表による材料出尽くし感もあって9%超の下落。また、サーバーワークス<4434>などが東証プライム市場の下落率上位に顔を出している。一方、前述のファーストリテは7%超の上昇。上期決算を好感した買いが入っている。トヨタ自<7203>は円安進行を受けてしっかり。決算発表銘柄ではディップ<2379>やクリレスHD<3387>も急伸し、Gunosy<6047>
がストップ高を付けている。
セクターでは、精密機器、電気機器、金属製品などが下落率上位で、その他も全般軟調。一方、電気・ガス業、輸送用機器、銀行業など4業種が上昇した。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の80%、対して値上がり銘柄は16%となっている。
本日の日経平均は米株安の流れを引き継ぎ、朝方に一時400円近い下落。その後下げ渋るも、一時プラスに転じたところで戻り一服となった。日足チャートを見ると、27000円割れ局面での底堅さも感じるが、27200円台に位置する75日移動平均線が上値を抑える格好。個別・業種別では、米金利上昇やそれに伴う円安進行を受けて関連銘柄に買いが入っているが、半導体関連などのグロース(成長)株の軟調ぶりが目立つ。東証プライム市場の下落率上位には中小型グロース株が多く顔を出している。前引けの日経平均が-0.65%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は-0.87%。ここまでの東証プライム市場の売買代金は1兆1000億円あまりで、今晩の米市場が聖金曜日で休場とあって、前日以上に低調だ。
新興株ではマザーズ指数が-2.86%と大幅続落。前日は日経平均の堅調ぶりとは対照的にさえない展開だったが、本日は米金利上昇・ハイテク株安を受けて一段と軟調だ。日足チャートでは、750pt台に位置する25日移動平均線水準で煮詰まり感も。メルカリ<4385>などの主力IT株は全般軟調で、ウォンテッドリー<3991>などの好決算銘柄に買いが向かっている。
さて、14日の米10年物国債利回りは2.82%(+0.12pt)、金融政策の影響を受けやすい2年物も2.45%(+0.10pt)に上昇した。米原油先物相場(ウエスト・テキサス・インターミディエート、WTI5月物)は1バレル=106.95ドル(+2.70ドル)と3日続伸。一時107.64ドルと2週間ぶりの高値を付けたという。戦略備蓄の放出を受けて調整していたが、足元で需給ひっ迫の長期化を見越して反騰してきている。期待インフレ率の指標とされる米10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)も2.89%(+0.09pt)と3日ぶりに大きく上昇した。
この日発表された米経済指標では、3月小売売上高が前月比0.5%増と市場予想(0.6%増)を下回る一方、2月分が上方修正された。また、4月のミシガン大学消費者態度指数(速報値)が市場予想に反し上昇するなど、全般に米経済の底堅さを感じさせる内容だった。3月の消費者物価指数(CPI)を受けてインフレのピークアウトに期待する声も出ていただけに、先行きへの強気な見方を後押しするだろう。
しかし、米著名投資家のジェフリー・ガンドラック氏や米ペンシルベニア大ウォートン校のジェレミー・シーゲル教授らはインフレの高止まりを予想。ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁が積極利上げ姿勢を示した。供給制約によるインフレ長期化と急速な金融引き締めが米経済のリセッション(景気後退)をもたらすとの声もなお多く聞かれる。
実際、米消費者心理の改善はガソリン小売価格が下落に転じた影響が大きいとみられているが、原油先物相場の反騰の兆しを見ると先行き警戒せざるを得ないだろう。
また、米連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)が発表した4月8~14日週の30年固定の住宅ローン金利は、10年以上ぶりに5%に達した。ローン支払額の急増も消費に冷や水を浴びせかねない。
結局のところ米連邦準備理事会(FRB)が景気をソフトランディング(軟着陸)に導けるかどうか、株式相場が通例のサイクルどおり「業績相場」に移行できるかどうかといった議論に早々に決着はつきそうになく、「『先行きの見方』は分かれたまま
(前日の当欄タイトル)」である。株式相場はイベント睨みの投資家による売買で短期的に上下に振れつつも、大方の投資家は先行きを見定めるまで様子見と思われ、方向感は出にくいだろう。これを裏付けるように、4月第1週(4日~8日)の投資主体別売買動向で外国人投資家は日経平均先物を2219億円買い越す(順張り的な短期筋による散発的な買いが入ったとの観測がある)一方、TOPIX先物については742億円の売り越しにとどまった。これらを念頭に置いたうえで相場に取り組んでいきたい。
(小林大純)
<AK>
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