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日経平均は5日ぶり大幅反発、「あや戻し」か「収束期待」か


 日経平均は5日ぶり大幅反発。950.32円高の25667.85円(出来高概算7億4000万株)
で前場の取引を終えている。

 9日の米株式市場でNYダウは5日ぶりに大幅反発し、653ドル高となった。アラブ首長国連邦(UAE)が石油輸出国機構(OPEC)加盟国に増産を促していると伝わり、NY原油先物相場(ウエスト・テキサス・インターミディエート、WTI4月物)が1バレル=108.70ドル(-15.00ドル)と急反落。スタグフレーション(景気悪化と物価高の併存)への懸念が和らいだほか、ウクライナのゼレンスキー大統領がロシアの要求する中立化などの点で「ある程度妥協する準備がある」と発言したことも安心感につながった。
本日の日経平均はこうした流れを引き継いで390円高からスタートすると、前日までの4日続落で1800円あまり下落していたこともあって上げ幅を拡大。前場中ごろを過ぎると25697.23円(979.70円高)まで上昇する場面もあった。

 個別では、レーザーテック<6920>が5%超上昇し、ソニーG<6758>は7%近い上昇。
前日の米市場ではハイテク株比率の高いナスダック総合指数が+3.59%となり、東京市場でも値がさグロース(成長)株を中心に大きく上昇している。その他売買代金上位も郵船<9101>、ソフトバンクG<9984>、商船三井<9104>、川崎船<9107>、トヨタ自<7203>など全般堅調。トヨタ自は豊田章男社長が4月以降の生産計画の見直しに言及したと伝わっているが、ネガティブ視する向きは限られるようだ。昭電工<4004>は政策保有株の売却方針が報じられて急伸。また、ギフティ<4449>などが東証1部上昇率上位に顔を出している。一方、原油価格の急反落を受けてINPEX<1605>が軟調。コスモエネHD<5021>は筆頭株主の株式売出しも嫌気されて急落し、Bガレジ<3180>は決算を受けてストップ安を付けている。

 セクターでは、ガラス・土石製品、輸送用機器、その他金融業などが上昇率上位で、その他も全般堅調。下落したのは鉱業のみだった。東証1部の値上がり銘柄は全体の97%、対して値下がり銘柄は3%となっている。

 本日の日経平均はウクライナ危機や商品高への懸念が和らいだことを背景に急反発し、900円を超える上昇で前場を折り返した。前日までの下落幅の半値戻しを達成。日足チャートでは25200円台に位置している5日移動平均線を一気に上抜けてきたことで、復調に期待する投資家が少なからずいるだろう。鉱業などを除き全面高の展開だが、前日の米ナスダック総合指数の上げ幅が大きかっただけに、グロース株の上昇が目立つ。米アマゾン・ドット・コムが株式分割や自社株買いを発表して時間外取引で急伸しており、今晩の米市場でのハイテク株高を先取りする動きもありそうだ。前引けの日経平均が+3.84%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は+3.58%。ここまでの東証1部売買代金は1兆6000億円あまりと前日並みだが、7~8日ほどは多くない印象だ。

 新興市場ではマザーズ指数が+3.97%と7日ぶり大幅反発。メルカリ<4385>などの主力IT株を中心に全般堅調だ。ただ、上げ幅を広げる展開となっている日経平均に対し、マザーズ指数のここまでの高値は9時36分に付けた704.59ptとなっている。売買代金が大きく膨らんでいるわけではないところを見ると、700ptを上回る場面では上値追いに慎重な個人投資家が多いのかもしれない。

 そもそも中小型グロース株は投資家心理の改善による影響こそ大きいだろうが、前日の米市場では10年物国債利回りが1.95%(+0.10pt)に上昇する一方、期待インフレ率の指標とされる10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は2.69%(-0.06pt)
に低下。結果的に名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利は上昇しており、グロース株にとって好環境とまでは言いづらいか。

 さて、日米株とも反発の値幅の大きさが目を引く。ただ、それが直ちに「投資家心理の改善度合い」を示すかどうかについては慎重に見極める必要があるだろう。ウクライナ危機や商品市況の高騰で経済・金融市場の先行き不透明感が強まっていることで、日経平均オプション取引では明日SQ(特別清算指数)算出日を迎える3月物、次の4月物とも権利行使価格24000~25000円のプット(売る権利)の建玉がかなり多い。SQ前のリバウンドとあってこうしたプットの建玉解消の動きが出ている可能性があるほか、最近の市場動向を見ていると、カウンターパートとなっている金融機関によるヘッジ目的の株価指数先物の売買が相場に与える影響も大きくなっている印象を受ける。

 また、ロシアとウクライナの外交交渉による事態収束などといった「一定の楽観があるのは間違いない(米メディアの為替市場関係者のコメント)」だろう。東京株式市場でも、4日申込み時点の信用買い残高の合計(東名2市場、制度・一般合計)が3兆
3522億円(+1142億円)と7週ぶりに増加した。昨年12月から減少する週の方が多いものの、相場下落時などに大きく増加するため、残高の水準はさほど大きく低下していない。

 もっとも、スイス金融大手クレディ・スイスが原油の一段の値上がりと株価下落のリスクについて警鐘を鳴らすなど、先行きに慎重な市場関係者は依然として多いようだ。米債券市場の動きに現れているように、そもそもインフレ抑制に向けた各国中央銀行の金融引き締めが株式にとって逆風であることに変わりないといった見方もある。一部で聞かれるとおり「あや戻し」に過ぎないか、危機収束を視野に戻りを試すか慎重に見極めたいところだ。差し当たり本日は欧州中央銀行(ECB)定例理事会や米2月消費者物価指数(CPI)の発表が控えており、金融政策の方向性が注目されそうだ。
(小林大純)
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