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日経平均は続落、メジャーSQ通過で「米CPI・FOMC睨み」


 日経平均は続落。115.63円安の28609.84円(出来高概算6億3000万株)で前場の取引を終えている。

 9日の米株式市場でNYダウは6セント安とほぼ横ばいで終了した。英国が行動規制の強化に踏み切るなど、世界的に新型コロナウイルス変異株「オミクロン型」への懸念が根強く、売りが出た。その後、週間の失業保険申請件数が52年ぶり低水準を記録し、労働市場の強い回復を受けて上昇に転じたが、翌日の11月消費者物価指数(CPI)
の発表を前にハイテク株が下落して相場の重しとなった。本日の東京市場ではこうした米ハイテク株安の流れを引き継いだほか、先物・オプション12月物の特別清算指数
(SQ)算出に絡んだ売買もあり、日経平均は182円安からスタート。米CPI発表を前に利益確定売りに押される銘柄が多く、前場中ごろに一時28483.63円(241.84円安)まで下落したが、一段と売り込もうとする動きは限られ軟調もみ合いとなった。

 なお、日経平均先物・オプション12月物のSQ値は概算で28523.30円となっている。

 個別では、リクルートHD<6098>が4%の下落。凸版印<7911>による同社株の売出し観測が報じられている。子会社による「GoToトラベル」補助金の不正受給の疑いを公表したH.I.S.<9603>は9%超の下落。その他売買代金上位ではレーザーテック<6920>が軟調で、ソフトバンクG<9984>、東エレク<8035>、ソニーG<6758>、トヨタ自<
7203>は小安い。また、決算発表のグッドコムA<3475>やラクスル<4384>、それにH.I.S.などが東証1部下落率上位に顔を出している。一方、川崎船<9107>、任天堂<7974>、キーエンス<6861>などが堅調で、前日売られた日立<6501>は2%超の上昇。凸版印は投資有価証券売却益の計上を発表して買われ、業績上方修正のアクセル<6730>や印企業への追加出資を発表したGunosy<6047>が東証1部上昇率上位に顔を出している。

 セクターでは、サービス業、精密機器、空運業などが下落率上位。一方、鉱業、金属製品、その他製品などが上昇率上位だった。東証1部の値下がり銘柄は全体の64%、対して値上がり銘柄は31%となっている。

 メジャーSQを通過した本日の日経平均は軟調な展開となっている。日足チャートを見ると、25日移動平均線や75日移動平均線の位置する29000円を前に失速する一方、5日移動平均線の位置する28500円近辺では底堅さを見せている。売買代金上位ではリクルートHDやH.I.S.が個別要因で売られているほかは、高安まちまちといった印象。業種別騰落率も方向感を見出しづらいが、新型コロナ「オミクロン型」への懸念後退とともに買われていた空運株の失速を見ると、英国の規制強化がやや警戒されている面はありそうだ。ここまでの東証1部売買代金は1兆5000億円あまり。前日は1日を通じ2兆3166億円(8日は3兆633億円)と急失速したが、本日もメジャーSQだったことを考慮すればかなり低調な印象を受ける。

 新興市場でもマザーズ指数が-1.15%と続落。売買代金トップのサイエンスアーツ<4412>が大幅に7日続伸しているのには舌を巻かざるを得ないが、時価総額トップのメルカリ<4385>などは上値の重さが鮮明になってきた。米CPI発表など来週にかけて重要イベントが相次ぐうえ、前日指摘したとおり足元でブックビルディング(需要申告)の期限を迎える12月後半のIPO(新規株式公開)が多いため、換金売りが出やすいところではあるだろう。マザーズ指数は値ごろ感も意識される水準だが、本格的な持ち直しには時間を要するとみておきたい。なお、本日マザーズ市場に新規上場したフレクト<
4414>は前引け時点でなお買い気配が続いている。

 さて、メジャーSQと前後して株価指数先物等の買い戻しに一服感が漂っていたが、ここまでのところ大きく売り込まれるような流れにはなっておらず、日経平均がSQ値をひとまず上回っていることも安心材料とみる向きがあるだろう。もっとも低調な売買代金を見ると、積極的に買い持ち高を積み上げようとする動きも限られるものと考えられる。

 前日の米市場では新型コロナ「オミクロン型」への警戒感から、期待インフレ率の指標とされる10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)が2.47%(-0.05pt)に低下し、これにつれて10年物国債利回りも1.50%(-0.02pt)に低下した。ただ、短期の金利は上昇。株式市場ではハイテク株が反落し、「恐怖指数」とされる米株の変動性指数(VIX)は21.58(+1.68)と、再び節目の20に乗せている。

 これらの動きを見ると、やはり11月CPIでインフレ圧力の高まりが確認されるとともに、来週14~15日の連邦公開市場委員会(FOMC)で金融正常化の加速が示されるとの警戒感が根強いように感じられる。失業保険申請の減少は明るい材料だが、8日に発表された10月の雇用動態調査(JOLTS)で企業の求人は旺盛であることが確認され、労働力不足による雇用ひっ迫がインフレ圧力につながるとの見方がある。パウエル連邦準備理事会(FRB)は直近の議会証言でインフレリスクが高まっているなどと述べ、量的緩和の縮小(テーパリング)と利上げを前倒しする可能性を示唆したことから、金融引き締めへの警戒感も拭いづらい。

 海外市場を見渡しても香港ハンセン指数や時間外取引のNYダウ先物がやや軟調に推移している。後場の日経平均は重要イベントを前に様子見ムードが広がり、戻りの鈍い展開になりそうだ。
(小林大純)
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