日経平均は大幅反発、それでも米金融引き締め懸念などは残る
週明け6日の米株式市場でNYダウは大幅に反発し、646ドル高となった。上げ幅は今年最大。国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長が新型コロナウイルス変異株
「オミクロン型」について「重症化の度合いはそれほど高くないようだ」などと発言し、懸念が和らぐとともに景気敏感株などに買いが入った。また、先週末に大きく売られた中国テック株も中国人民銀行(中央銀行)の預金準備率引き下げなどを好感して急反発した。本日の東京市場ではこうした流れを引き継いで投資家心理が改善し、日経平均は211円高からスタート。朝方伸び悩む場面もあったが、前場中ごろから上げ幅を一段と広げ、一時28339.24円(411.87円高)まで上昇した、
個別では、売買代金トップのソフトバンクG<9984>が7%超の上昇。投資先の中国テック株と同様、前日の大幅下落から一転して急反発している。その他売買代金上位もレーザーテック<6920>、川崎船<9107>、商船三井<9104>、郵船<9101>、東エレク<8035>など全般堅調。丸紅<8002>やCTC<4739>は一部証券会社の投資判断引き上げを受けて買われ、目標株価引き上げ観測の日電波<6779>は急伸。また、前期業績の上方修正などを発表した日本ハウスHD<1873>は東証1部上昇率トップとなっている。一方、日立<6501>やソフトバンク<9434>は小安い。株式の売出し実施を発表したアイホン<6718>や福井コンピ<9790>、投資判断引き下げ観測の日水<1332>は急落し、東証1部下落率上位に顔を出している。
セクターでは、空運業、海運業、陸運業などが上昇率上位で、その他も全般堅調。
下落したのは水産・農林業のみだった。東証1部の値上がり銘柄は全体の90%、対して値下がり銘柄は7%となっている。
新型コロナ「オミクロン型」に対する警戒感が和らぎ、海外株とともに日経平均も大幅反発する展開となっている。日足チャートを見ると、28000円手前に位置する5日移動平均線を寄り付きで上回り、戻りを試す格好。中国テック株につれて急反発したソフトバンクGが1銘柄で日経平均を約84円押し上げているが、東証1部全体としてもおよそ9割の銘柄が値上がりしている。業種別騰落率では、景気敏感セクターやコロナ禍の影響を受けやすい空運業・陸運業の上昇が目立つ。もっともここまでの東証1部売買代金は1兆3000億円弱で、1日を通じても前日並みの2兆円台半ば程度となりそうだ。
新興市場でもマザーズ指数が+2.54%と大幅反発。ただ、前日に-3.80%と大幅な下落を強いられており、本日も5日移動平均線水準までの戻りにとどまっているのを見ると、自律反発の域を出ない印象を受ける。メルカリ<4385>などの主力IT株も堅調とはいえ、物色の矛先が向いているのはやはりサイエンスアーツ<4412>やGRCS<9250>
といった好需給の直近IPO(新規株式公開)銘柄だ。
マザーズ指数は直近高値(11月17日取引時間中の1189.00pt)から安値(12月6日取引時間中の1003.97pt)まで-15.56%となり、個別では2割以上の大幅下落となった銘柄も多い。追加証拠金(追い証)の発生と前後して損失覚悟の売りを迫られた向きは少なくないと考えられる。また、今週から12月後半のIPOのブックビルディング(需要申告)が本格化してきたことから、これに備えるための換金売りが出てくることも想定される。当面は新興株の需給好転は期待しづらいだろう。
さて、米国では景気敏感株を中心に大きく反発し、ハイテク株も引けにかけて買い戻された。「恐怖指数」とされる米株の変動性指数(VIX)は27.18(-3.49)に低下し、米金利は長期の年限を中心に上昇した。一見するとリスクオンに傾いてきた印象だが、株価・金利ともまだ波乱を抜け出たとは言いづらい。実際、VIXはなお節目の20を上回っている。
そもそも市場では、新型コロナ「オミクロン型」よりも米連邦準備理事会(FRB)の金融引き締め観測の方が懸念材料と受け止める向きが多い。米金融大手モルガン・スタンレーは「株式のリスクはオミクロン株より米金融当局」などと指摘。また、人気ニュースレターで知られた著名投資家のデニス・ガートマン氏は米金融引き締め開始を念頭に、「弱気相場は避けられない」などと述べたという。来週14~15日には米連邦公開市場委員会(FOMC)が控えており、積極的に買い持ち高を積み上げづらい状況に変わりはない。
また、日本では日経平均が28000円割れから底堅さを見せており、株価指標面での値ごろ感などから押し目買い需要が強いと指摘されている。ただ、日々の先物手口を見ると、今週末10日の特別清算指数算出(メジャーSQ)を前にロールオーバー(限月乗り換え)の売買が中心。売りにも買いにも傾きづらいことが前述の底堅さにつながっている可能性もあるだろう。個人や外国人といった純投資家主体のマザーズ指数の方が投資家心理を映しているのかもしれない。
さて、アジア市場では香港ハンセン指数が堅調もみ合いとなる一方、上海総合指数は朝高後にマイナス転換。為替相場は1ドル=113.50円近辺で円安一服となっている。
日経平均も一段の上値追いの動きは限られ、堅調もみ合いの展開となりそうだ。
(小林大純)
<AK>
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