日経平均は5日ぶり反落、気迷いも窺えるが目先調整の範囲内
28日の米株式市場でNYダウは3日ぶりに反落し、147ドル安となった。週間の失業保険申請件数の減少傾向や、新型コロナウイルスの被害が大きかったニューヨーク市も6月初旬に第1段階の活動再開に踏み切る可能性を示唆したことが好材料視され、上昇する場面もあった。しかし、トランプ大統領が中国に関する会見を29日に開くと発表すると、米中関係の悪化懸念から引けにかけて下落に転じた。中国が「香港国家安全法」の制定方針を採択したことを受け、対中制裁を科すとみられている。本日の日経平均もこうした流れを引き継いで108円安からスタートすると、前場には一時21710.80円(205.51円安)まで下落。ただ、香港株が朝安後に下げ渋っていることなどから、日経平均も売り一巡後は底堅く推移した。
個別では、トヨタ自<7203>、東エレク<8035>、三菱UFJ<8306>などが軟調で、キーエンス<6861>やリクルートHD<6098>は2%超の下落。前期が6712億円の最終赤字となった日産自<7201>は7%超下落した。ニコン<7731>も決算が嫌気されて急落し、日産自とともに東証1部下落率上位に顔を出した。下落率トップはアイビーシー<3920>だった。一方、ソフトバンクG<9984>、ファーストリテ<9983>、ソニー<6758>、任天堂<7974>は小じっかり。米市場と同様に、中外薬<4519>や第一三共<4568>など医薬品株の堅調ぶりが目立った。凸版印<7911>は前期の業績上方修正や記念配当実施が好感されて急伸。また、三桜工<6584>や大幸薬品<4574>が東証1部上昇率上位に顔を出した。
セクターでは、鉄鋼、海運業、輸送用機器などが下落率上位。半面、医薬品、食料品、情報・通信業などが上昇率上位だった。東証1部の値下がり銘柄は全体の53%、対して値上がり銘柄は43%となっている。
本日の日経平均は米中対立への懸念から前日の米国株が反落した流れを引き継ぎ、マイナス圏で推移している。前日までの4日間で1500円あまり上昇しており、週末を控え利益確定売りも出やすいところだろう。とはいえ、ここまでの上昇の反動としては小さく、底堅さが窺える。
売買代金上位や業種別騰落率を見ると、日経平均の21000円乗せから戻りを試す動きを見せていたシクリカルバリュー株(景気敏感系の割安株)、あるいは自粛要請緩和への期待から買われていた銘柄を中心に軟調。特に景気の影響が大きい鉄鋼、化学など素材系で下げが目立つ。ハイテク株も米中対立への懸念が重しになっているとなって、医薬品などのディフェンシブ株の一角に資金逃避の動きが見られる。全般に日経平均の調整を受けた前日までの動きのリバーサル(株価の反転)と捉えられるが、ここ数日の東京都の新型コロナ新規感染者数が再び2ケタ台で推移し、福岡県などで感染第2波の兆候が見られることも影響した可能性がある。ここまでの東証1部売買代金はおよそ1兆2000億円とまずまず。
新興市場ではマザーズ指数が大幅反発し、3日ぶりに取引時間中の年初来高値を更新。バイオ製薬や遠隔医療、EC(電子商取引)などの関連銘柄が買われており、やはりコロナ禍中にやや近い動きだ。
前引けの東証株価指数(TOPIX)は0.39%の下落だが、このところの実績からは後場に日銀の上場投資信託(ETF)買いが実施されるかは見通しづらい。NYダウが時間外取引で下落していることも重しだが、中国・上海株や香港株がまずまず落ち着いているのには安心感がある。後場の日経平均はマイナス圏でのもみ合いが続きそうだ。
さて、5月第3週(18~22日)の投資主体別売買動向を見ると、外国人投資家は現物株・株価指数先物を合わせた総合で15週ぶりに買い越しへ転じた。今週に入り日経平均が21000円台を回復した原動力になったと言えるだろう。ただ先物手口を見ると、一昨日まで外資系証券のTOPIX先物買い越しが見られたものの、前日は日経平均が500円近く上昇した割にそれら外資系証券が買い越し上位から姿を消した(野村證券や三菱UFJモルガン・スタンレー証券による日経平均先物の買い越しが大きかった)。海外投資家はオプションなどで一段の株高リスクに備えつつも、まだ気迷いがあるように窺える。
また、本日の個別株動向を見ても、日本製鉄<5401>が5%超下落するなどシクリカルバリュー株の調整がやや大きめ。先行きにまだ不透明感を残すことから、一本調子に戻りを試す展開とまではなりづらいようだ。とはいえ、いずれの動きも目先調整の範囲内にとどまっていると言え、まだまだ経済再開への期待と需給による押し上げ相場が続くとみられる。
(小林大純)
<AK>
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