日経平均は3日続落、日銀短観悪化も、じり高で下げ幅縮める、日銀ETF買いの思惑は引き続き
で前場の取引を終えた。前日の米国市場では、各金融機関のエコノミストが、4-6月期の国内総生産(GDP)が30%前後のマイナス成長に落ち込むとの悲観的見通しを相次いで示したことから売りが先行。その後、3月シカゴ購買部協会景気指数や消費者信頼感指数が悪化したものの予想を上回ったほか、米国政府が新型ウイルスに対する第4弾の支援策を検討しているとの報道が好感され、前日終値を挟んでもみ合う展開となった。ただ、月末・四半期末に絡んだポジション調整の影響もあり、結局、引けにかけて下落に転じた。
こうした背景に加えて、寄り付き直前に発表された日銀短観の内容も想定通りとはいえ悪いものであったことから、本日の日経平均は朝方から300円近く下げて始まった。ただ、その後は日銀によるETF買いの思惑なども支えに前引けまでじりじりと下げ幅を縮小していった。
セクターでは、海運を筆頭にその他製品、鉄鋼、石油、輸送などがプラス推移となっている一方、空運が大きく下げており、そのほか、水産、サービス、陸運、医薬などがマイナスとなっている。東証1部の売買代金上位では、任天堂<7974>、トヨタ<7203>、富士フイルム<4901>、三菱UFJ<8306>、キーエンス<6861>が上昇。ブイキューブ<3681>は17%高と連日の大幅高を演じている。一方、ソニー<6758>、ファーストリテ<9983>、リクルートHD<6098>、NTTドコモ<9437>などは下落となっている。
新年度に入ったこの先の日経平均は、1000円超高を2日続けた3月25日以降の動きを見る限り、18500円~19500円レンジでの値固めをしていきそうである。本日寄り付き直前に発表された3月の全国企業短期経済観測調査(短観)では、大企業製造業の業況判断指数(DI)がマイナス8(最近)となった。マイナスに沈むのは7年ぶりだ。なお、先行きについてはマイナス11と悪化の見通しである。非製造業についても、「最近」がプラス8となった一方、「先行き」についてはマイナス1とマイナス転換の見通しとなっており、コロナショック以前までは相対的に底堅いとされていたサービス業についてもいよいよ業績悪化が濃厚となってきたようだ。
3月末に一気に19500円処まで回復してきた日経平均は、上げ一服感が漂うなか、前日の米株安や上述の悪化した日銀短観の発表を受けて、寄り付き直後には300円安となったが、その後は意外にも底型さを裏付けるような展開をみせた。先日、米国の新規失業保険申請件数が328万件と事前予想をはるかに上回る悪い内容であったにも関わらず、米主要株価指数がほとんど反応を見せずに、政策期待などから上昇したことをみても、市場は相当に悪材料を織り込んでいるのかもしれない。
ただ、やはり楽観視は禁物であろう。まず、3月末の日経平均の大幅高は自律反発の域を出ないともいえるほか、日銀によるETF買いを受けた短期筋のショートカバーや、配当の再投資、公的年金によるリバランス買いなど、需給要因によるところが相当に大きい。
しかし、新年度の4月に入って、こうした需給要因による下支えの面は薄れてくるだろう。また、国内での新型コロナウイルス感染者数の急拡大を受けたロックダウン
(都市封鎖)への警戒感も依然として拭えていない。年度末の評価損を避けるためにこれまではロックダウンの宣言をなるべくしたくないという思惑があったとも考えられるため、逆説的に考えれば、新年度に入ってある意味やや出しやすくなったともいえる(言わずもがな、出したくないことは不変だが)。
こうした背景から、日米ともに一日当たりの値幅にやや落ち着きが見られはじめ、これまで様子見をしていたがそろそろ安心して押し目買いをしてもよいのではないかと考えている投資家がいれば、ここではあえて注意を促したい。上述したように、ロックダウンの懸念や期末の需給要因による下支えの部分的剥落などから、この先は上値が重い一方で、下げ余地の方が大きいといえるからだ。
ただ、最近の動きをみる限り、前引け時点で0.5%程度までに下げ幅を縮小してきたとはいえ、一時1.8%超下げた本日のTOPIXの動きをみるところ、恐らく後場は日銀のETF買いが入ってくるだろうと思われる。そのため、後場は前場寄り付き直後からみせた底堅さを引き継ぐ展開が想定されよう。こうした底堅さが意識される場面では、業績良好な中小型株に注目したい。
本日は全体がやや軟調ななか、マザーズ指数については2%高で前場を終えている。
昨年末のIPO銘柄であるメドレー<4480>がストップ高を付けて上昇基調を続けているところからも、個人投資家の物色意欲が窺える。ここ数日の5日線に沿った緩やかな上昇基調をみても、マザーズ指数の相対的な強さが確認できる。短期的には、東証1部の大型株が手がいにくい中、改めてマザーズ指数を中心とした中小型株への選別色をつよめてもよい場面なのかもしれない。
(仲村幸浩)
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