
金利が上がると、新しく発行される債券の魅力は高まる
債券は、国や企業などが投資家から資金を借りるために発行する有価証券です。一般に市場金利が上昇すれば、新しく発行される債券も、それまでより高い利率や利回りで発行される傾向があります。
実際、2026年9月1日に行われた10年利付国債の入札では、平均落札価格から計算した利回りは2.995%でした。また、同月募集の個人向け国債は、変動10年の初回適用利率が年1.95%、固定5年が年2.24%、固定3年が年1.96%でした(いずれも税引前)。
超低金利だった時期と比べれば、元本の安全性を重視しながら利息を受け取りたい人にとって、国債は投資対象として選択肢に入れやすい環境になっています。
なお、2026年10月募集の個人向け国債の利率は10月7日に発表予定です。債券の金利は変化するため、購入するときには最新の募集条件を確認する必要があります。
「金利上昇≠保有している債券も値上がり」
注意したいのは、「すでに市場で取引されている債券(既発債)」です。債券価格と市場金利は、基本的に逆方向に動くことを確認しておきましょう。
例えば、額面100万円で毎年1万円の利息を受け取れる債券があるとします。その後、市場金利が上がり、新しく発行される債券から年間3万円の利息を受け取れるようになれば、年間1万円しか受け取れない既存債券の魅力は相対的に低下します。
そのため、市場で売却する場合には価格が下がる方向に働きます。反対に市場金利が低下すると、相対的に高い利息を受け取れる既存債券の魅力が増し、価格は上昇する方向に動きます。
なお、実際の債券利回りは利息だけでなく、購入価格と償還価格との差や償還までの期間なども考慮して計算されます。
個人向け国債と債券ファンドは同じではない
物価上昇が続く中、「運用の必要性」を感じて投資を始める人が特に注意したいのが、個人向け国債と債券ファンドの違いです。
個人向け国債は国が発行し、額面100円につき100円で償還されます。発行から1年経過すれば原則として中途換金も可能です。中途換金時には直前2回分の各利子相当額が差し引かれますが、国が買い取る仕組みで元本割れのリスクはありません。
これに対して、債券ファンドは複数の債券などを組み入れた投資信託です。投資信託に組み込まれた債券の価格が下落すれば、ファンドの基準価額も下落する可能性があります。海外債券を組み入れる商品では、為替ヘッジをしていなければ為替変動の影響も受けます。
「債券という名前がつけば元本保証」と考えるのではなく、何に投資する商品なのかを確認することが必要です。
金利上昇時こそ「何のためのお金か」で選ぶ
金利上昇によって、株式以外の選択肢が以前より魅力を増しているのは確かです。しかし、金利が上昇しているという理由だけで債券へ資金を移せばよいわけではありません。近い将来使う生活資金まで価格変動のある商品に投資するのは避け、まず必要な預貯金を確保することが基本です。
そのうえで、安全性を重視する資金なら個人向け国債、長期的な資産形成を目的とする資金なら株式や債券を含めた分散投資など、目的に応じて選択肢を考えることが必要です。金利上昇局面だからこそ、「株か債券か」の二者択一ではなく、自分の資産全体を見直すことが大切です。
出典
日本銀行 金融市場調節方針の変更について 2026年9月18日
財務省 現在募集中の個人向け国債・新窓販国債
金融庁 資産形成の基本
執筆者 : 柴沼直美
CFP(R)認定者
